作者はオリンポスの郵便ポストでデビューしてから作品を積み重ねていき、どの作品も共通して、人の心が揺れるような話を書いていて、今作もそうでした。
文明が滅んだ世界で、旅をする少女・レミと自動人形・リーナが旅の先々で出会う人達と関わっていき、その人が抱えているものにそっと背中を押すような話で、読んでいて心に染みるエピソードばかりでした。
どの話も甲乙つけがたい内容で、あらすじ読んで気になった人にはとにかく読んで確かめてほしいです。
自分の死が近づいていく中、いったい何を残すのか。
死ぬ前に輝いていく覚悟が感じられました。
レミとリーナのそれぞれの心情が辛くて、終盤は心が痛みましたが、最後に明かされた真実にはハッとさせられました。
読んでいて、違和感があった部分が繋がっていくのは良いですね。
おかげで本を閉じた後も作品の暖かさが心に残るようになってました。
そして、レミとリーナのやりとりには確かな信頼関係があり、2人の絆が美しかったです。
(あらすじ)
どうせ終わるこの世界だから。最後の時まで二人でいたい。
記憶を失った自動人形《オートマタ》の少女リーナ。出来損ないの人形技師でトラブルメーカーのレミ。百億歳を過ぎた太陽が燃え尽きようとする凍える世界で二人は出会った。
「ねえ、レミ。私、もうすぐ死んじゃうかもしれないんだ」
「リーナは私が直してあげるから!」
人類の文明が滅んだ世界で、頼る者もいない。それでも壊れかけた人形の死を食い止めるため、二人の少女は東の果てにあるという《楽園》を目指す。
――きっと間に合わない。でも、最後の最後までレミと一緒にいたい。
終わりゆく世界で二人の旅は続く。