前巻とはがらりと変わり、スポ根巻。
バスケに一直線で元気溢れる陽が抱える劣等感のは意外でしたが、自身の熱意が周囲に伝わるのは確かな信頼関係がないと無理だ。
それでも諦めずにガムシャラに前に進む陽だが、壁にぶつかる。
その壁は一年前、朔もぶつかった問題と似ていて、朔も野球を辞めた理由が明らかになり、互いにケツを叩ける2人だからこそ、前に進めたんだなと。
朔は本気の姿勢を、陽は励みになる声を。
互いに共鳴していくようでした。
周囲とレベルが離れて、孤立してしまうときの高校生ならではの未熟さを上手く描いていたからこそ、そこから抜け出した際の爽快感がありました。
朔は夏を終わらせるために、陽は熱を伝えるために奔走する姿に読んでるこちらもその気になりました。
部活のすれ違いはあまり起きて欲しくなくて歯痒いけど、どこでも起こり得ること。
上にいるやつを落としても下にいるやつが上にいくわけではない。それを教えてあげないとね。
陽は朔から、朔は陽から力を貰って殻を破っていくのは泥臭いけど、胸に響きました。
周囲の太陽となっていく朔はまさに主人公です。こんなのヒロイン全員落ちるに決まってる。
朔が周囲に与える影響は大きいのは彼自身が頑張って生きてるのが伝わるからだろう。
陽も殻を破って、バスケにハマっていくだろうし、朔との距離感も変わって、乙女になった陽は無敵ですね。素晴らしい。
勢いにまかせたところと詩的に表現する感情が上手く絡み合っていて素晴らしいです。
部活に入っていた人ならば間違いなく刺さるし、それ以外の人にも届く熱量がありました。
(あらすじ)
あの夏の、忘れ物を拾いにいこう。
インハイ予選を終えた7月。陽はチームの新キャプテンになった。
仲間とぶつかり合いながら切磋琢磨し、ともに高みを目指す日々。その姿はやけに眩しく、俺の心を揺さぶった。
そんなとき、野球部のエース、江崎が現れる。
「朔……頼む、野球部に戻ってくれ。どうしても、お前の力が必要なんだ」
――あの暑い夏の日。自分で止めた時計が、もう一度音を立てて動き出した。
これは、挫折と葛藤、そしていまだ胸にうずく“熱”の物語。
あの夏を終わらせて、もう一度、夏を始めるための物語。