青春の光を見せてくれたこのシリーズも最終巻か。
虫という題材は地味だったのかなぁ。
思春期の子供達の悩みや気持ちの揺らぎを虫の特性と重ねていき、最後に自分の本性と向き合っていくのが好きだったので、もっと読みたかったです。
また、羽汰が様々な問題を抱えている人と関わっていくことで、自分の小ささを自覚して縮こまっていく気持ちはその人にしか分からないものだ。周りが普通に出来ることが出来ないことが続くと踏み出しづらくなるよね。
だが、1人ではない。
焦らず待ってくれる先生や凪や瀬川がいる。また、関わってきた人もいる。
上手く生きられなくても上手く生きようともがくと決意した羽汰の決断は見事でした。
羽汰と凪は互いに似たもの同士だから一緒にいるのではなく、必要だと思っているからそばにいる。ときにはすれ違うが良い関係だと思いました。
変わっていくこと、変わらないこと、自分が後悔しない生き方が大事なんだな。
迷いも受け止めて進んでいく羽汰と凪のこれからが幸せでありますように。
(あらすじ)
醜い自分、気高き自分。その狭間で。
天文部という居場所を見つけ、変わっていく凪。
それを見てもどかしい思いを抱える羽汰は美術部の門を叩く。
だが、自分にとって美術が本当にやりたいことなのか。
自分にできることなんて、この世に一つでもあるのだろうか。
羽汰にはそれが分からない。
かつてなりたかった自分。いつしか失われてしまった自信。今の自分。
もうその距離は、どうしようもなく離れてしまって。
体の色が変わってしまう美術部部長。
とある劇に固執する二人の演劇部員。
そして、どこかへ消えゆく姫宮凪――。
羽汰に憑いたメガネウラは、羽汰の何の想いに引き寄せられたのか。
逃げて、逃げて、逃げたその先に答えなんてものがあるのだろうか。
理想と現実の狭間に揺れる、ヒトと虫の魂がおりなす、とある青春の物語。