羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

17歳のラリー

17歳のラリー (角川文庫)

 

表紙から青春の淡さが感じとって読みましたが、抜群の切れ味でした。

青春の痛さや複雑さが好きな人には間違いなく突き刺さる作品でした。

 

高校3年生という部活の集大成の時にチームの大黒柱である川木から突然別れを告げられるところから始まる。

上の世界を目指すため、海外留学すると言う。

チームの中で抜群の存在感で引っ張っていた存在が急に抜けると言われて動揺しないはずがない。

ペアを組んで劣等感を感じていた。

期待を受け止められなかった。

身近の存在が遠くへ行ってしまう。

片想いが終わってしまう。

羨望から生まれた関係が消える。

様々な感情が渦巻いている短編集でした。

どの話も読んでいて共感しかないです。

読んでいて自分が学生時代の振り返ってしまうような、感覚がありました。

登場人物の揺れ動く感情を剥き出しにして描いているからこそ、読み手の心も揺さぶられました。

最初は受け入れられなかった現実も、川木と接していくことで向き合えるようになっていく変化は美しく思います。

 

登場人物の気持ちに寄り添って読み進めていくと浸れました。

 

川木も旅立とうとした理由や部活を想っている気持ちが確かにあって、それは仲間の存在がかげかえのないものだったからこそ決意出来たというのは素晴らしいです。

 

少年少女の青春群像劇として痛みがありつつ、綺麗な感情に昇華させていく作者の手腕が光りました。

 

タイトルのラリーはテニスだけでなく言葉もラリーを行なっていくのか大事なんだなと。

 

高校三年の春。テニス部を舞台に、17歳の等身大を鮮やかに描く青春群像。

「七月くらいにいなくなるわ」
十七歳の春。海外への留学が決まったという三年生のエース・川木の一言が、平凡な都立高校テニス部にさざ波を立てる。絶対的な才能を持つ彼に対し、抱えていても言い出せなかった仲間達の劣等感、葛藤、嫉妬、恋慕……。そして部を去ることを決めた、川木自身の本音。積み重なった様々な想いは、やがて最後の夏を前に連鎖的に爆発していく。高校三年生の等身大を鮮やかに描き出した青春群像。