羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

角川文庫

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 X 怪談一夜草紙の謎

李奈が売れっ子作家みたいな扱いを受けて戸惑っている様子は現実でもあるのかなと想像してしまう。だけど李奈が地に足つけた歩みをしているから揺らぐ心配がないのは非常に安心で、応援したくなります。地道にめげずに小説と向き合っていたから、簡単に天狗…

ベイビー、グッドモーニング

たまに読み返したくなる小説です。 読むのが3度目ですが、それでも作中の言葉や登場人物の揺らぎを噛み締めたくなります。 何度読んでも良いものは良い。 余命間近の人達とフランクな死神の問答や関わり方が魅力的です。ユニクロの服着たり、携帯料金払う死…

盤上に君はもういない

読み終えて、タイトルの意味に胸打たれる。最後に気付かされるのがまた良い。 女性であること、病気であること、様々な困難にあっても棋士として諦めない不屈な女性の愛の物語でした。壁に当たっても目標に向かって足を止めない者達の生き様が見事でした。 …

君を描けば嘘になる

綾崎隼先生の作品は気になってましたが、もっと早くに読めば良かった! 今作が初作品としては文句なしの名作でした。 才能、芸術、一概には説明出来ないものを追求していくと迷ってしまう。それでも、自分の芯に眠る創作意欲を忘れてなければ大丈夫。 ただ、…

後宮の毒華 夏炎の幽妃

シリーズ作品をよく書いてる作家だからか、展開や物語の膨らみ方が上手いなと。スムーズに読める。 蘭が今回は変装になれてきて、落ち着いてきた感がありましたがひやっとする場面があって危うい。変装がバレるのが先か。それとも姉が戻るのか先か。どっちに…

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 IX 人の死なないミステリ

出版の裏側を暴いていく今シリーズ。 今回は人の死で感動を生む作品が業界で流行らせた件については、嫌気がさしてました。売れて、数字が出れば出版社的にはウハウハだろうが小説としての価値はどうなのかというところ。 反対に人の死なないミステリは好き…

昨日星を探した言い訳

河野裕先生の作品で1番好きだ! もう3読目だけど、それでも心に響く言葉がある。 何度読んでも彼と彼女の意地の張り合いに頬が緩む。互いに違う星に住んでいるように、遠回りしながらも徐々に近づいていく距離感に釘づけにされてしまいます。 そんなことかと…

校庭には誰もいない

面白い上に読みやすい。 青春とミステリの配分が上手い。 主人公・葉音の心踊る様子や各話の謎の真相が気になって仕方なかったです。また、真相に至るまでの推理もスムーズで良かったです。 葉音の恋というか、憧れ。青春に対するモチベーションは眩しかった…

少年と少女と正しさを巡る物語 サクラダリセット7

あぁ、終わってしまった。 もっともっと浸っていたいと思う作品でした。 無事大円団を迎えられて凄い。改めて1巻から通して、ここまでたどり着く過程が計算されていたのだと思うと恐ろしい。無駄なく、繋がっていく構成には驚くしかないです。 ケイと浦地さ…

少年と少女と、 サクラダリセット6

素晴らしい構成。最初からパズルを散りばめていて、ここにきてパズルがガチっとハマる快感を味わえて良かった。 サクラダリセットというタイトルの意味が判明する。また、咲良田の始まりも描かれていて、もう高まるしかない。 ケイの正しさと浦地の正しさ、…

片手の楽園 サクラダリセット5

現実では生きられない彼女が夢の中でかりそめの幸せを感じるのは悪いことなのか。 今回は思想の自由を考えることになりました。人の数だけ違う考えがあり、一概には決めつけられない。自分はどちらかと言えば柔軟なケイの考えが良いなーと思いました。 まぁ…

さよならがまだ喉につかえていた サクラダリセット4

相麻が蘇り、物語が動き出すというタイミングでしたが、軽い短編多めでした。春埼の日常のような緩い話が大好きです。安心感がありました。また、優しい話があり、癒されました。 相麻の死が絡んだリセットを悔いるケイとケイの揺れに敏感な春埼の葛藤が絶妙…

育休刑事 (諸事情により育休延長中)

続編が出たということはシリーズ化かな。嬉しい限りです。 蓮くんの成長を追ってるの楽しいです。段階を追って出来る事が増えていくのは親にとって嬉しいですよね。育児の困難は多々あるが、赤ん坊の笑顔を見れば吹き飛ぶのは分かる。 育児を交えながら、密…

機械仕掛けの選択 サクラダリセット3

ソウマがケイとハルキを導いたのが辛すぎる。未来が見えるからこそ、それをなぞるしかなかったのが耐えられなかったのかな。 ケイ、ハルキ、ソウマの3人の過去編。全てはここからといったところから、現在に繋げるのうますぎる。構成が素晴らしすぎる。 ケイ…

魔女と思い出と赤い目をした女の子 サクラダリセット2

ケイとハルキの関係について触れていたが、能力があるなしに関わらずに付き合っていけたら理想だよなと。どちらかといえばハルキが怯えているのをケイが拾っていくのが良い。ただ、ケイもハルキも本心でどう思っているのか話し合っていないのもあれだな。そ…

猫と幽霊と日曜日の革命 サクラダリセット1

好きなシリーズなので、1から読み返そうかなと。 前読んだのが約7年前という驚き。そんな前だったか… 物語の印象として優しい話ではあるんだが、ケイの自己犠牲が残酷。その決断をするのも悲しいし、春埼に見せるのもなぁと。ケイとハルキの関係の歪さはわり…

高校事変 13

新章突入ということで結衣が大学生になってしまったため、結衣から凛香へ繋がれた高校事変。たしかにもう高校生でないなら主人公でいられない。 凛香から見た結衣がかなり大人に見えて、成長して卒業を感じました。 凛香は結衣と比べると危なっかしいしクー…

教室に雨は降らない

前から気になっていたが、ようやく読めました。 小学校を舞台にした日常の謎。制限がかかりそうな設定ですが、上手く謎を作っていて、真相が気になる短編集でした。 子供や親、教師、教室、学校というのは様々な悩みや問題が生まれる場所だなと。 悩む人に寄…

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 VIII 太宰治にグッド・バイ

今回も事件に巻き込まれる李奈。もはやスムーズ過ぎて、驚かない。 太宰治がサブタイトルに入ってる段階で薄々感じていたが、暗い話に。偉大な作家の業を現実に落とし込んだら、こうなるかといった結末。様々な謎が繋がって、明かされる結末にやるせない気持…

後宮の毒華

最近後宮の物語に惹かれていたので、実績ある作家の作品ということで楽しみにしていました。 割とある設定だが、じわじわと伝わってくる主人公・玉蘭の焦燥感と成長に読んでいて、釘付けにされました。 後宮で起こる毒にまつわる事件と遭遇し、成長していく…

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 VII レッド・ヘリング

李奈の作家としての成長を期待していたが、あまりに過激な手段を取ったなと。作家としての生活にダメージを与えるやり方で、本探しに繋がるやり口は驚きました。 ここまで追い詰めるとは思わなくて、若干引きました。 ただ、マンネリを防ぐためには良かった…

大きな音が聞こえるか

以前から気になってはいたが、700P超えがちょっとな…と思っていました。 最近余裕があるから、えいっと読み始めたら面白くて、ずっと作品を読んでいたい気分になりました。 読まず嫌いは良くないですね。反省。 内容としては、0から、いやマイナスから始まる…

AX アックス

殺し屋シリーズ第3巻。1.2.3巻と続けて読み返したが、今巻が個人的に好き過ぎる。主な語り手である兜が妻に怯える父の顔と裏の仕事を淡々とこなす顔、2つの面を持っていたが、父としての顔が濃くて好きだった。 というかもう辞めたいと思っている状況だった…

マリアビートル

再読。映画観てから読み返したら、原作はこんな感じだったかと確認しつつも、楽しめました。個人的には映画の方が良かったな、ここは原作のままが良かったな、と思いましたが映画にまとめるならあれがベストだったのかなと。ただ、言いたいのは映画の果物コ…

グラスホッパー

殺し屋シリーズ一作目。再読。初めて読んだ時はピンと来なかったが、改めて読んでみたら良かったです。 淡々と話が進んでいき、思いもよらぬことが起きたり、そことそこが繋がるのかというパズル的な面白さがありました。 妻の復讐を奪われた鈴木と様々な殺…

明日の僕に風が吹く

単行本の発売時から気になっていたが、頭から抜けていました。 文庫の表紙が気になって、思い出して読みました。 医師になりたいという憧れから行動を起こしたが、失敗してしまい、夢を見れなくなってしまった少年・有人が離島で再生していく。 医師になりた…

JK II

まさかのシリーズ化! 衝撃的な作品だった前巻からどう続くのか気になっていました。 まとまっていたので、どう物語を展開するのかと思いましたが、流石はベテラン作家ですね。 上手い! 最後まで読めば分かるけど、JKという女子高生の意味だけでなはなく、…

育休刑事

似鳥先生はミステリーの作りが上手いなと改めて思いました。しかも、社会問題を含みつつユーモア溢れる会話や作風に仕上げるのは流石です。 今作は男性の育児休業、しかも警察官で取れるのが奇跡のように描かれているが、当たり前になって欲しいという作者…

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 VI 見立て殺人は芥川

刊行ペースが凄い今作。 李奈の成長とミステリーが魅力だが、今回はここ数巻ずっと気にしていた李奈の作家としての成長が見れて嬉しいです。警察から頼りにされているが、本業は探偵ではなく、作家だからな。 事件に巻き込まれてばかりで、作家としての姿の…

ホテルジューシー

真面目で働き者の主人公・ヒロが沖縄で一夏を過ごしていく。 沖縄の緩い雰囲気に戸惑いながらも、馴染んでいこうとする姿勢は良かったです。 働くうちに、自由な同僚に振り回されたり、迷惑な客に出会ったり、見捨てられない人を見つけたり、人の悪い部分を…