タイトル、表紙、帯、あらすじから気になって読みましたが、グサグサ心に槍を突き刺してくる感じがして、貴重な読書体験が出来ました。
自分は数学が好きではない。そんな自分でも数学の理論を追い求めていく主人公・瞭司の孤独で天才的な生き方、考えに引く寄せられていきました。
瞭司の周りの人達も影響を受けて変化していく。
良い感じに青春して、成長していくのかと思いきや、状況は反転していく。
天才であるがゆえに無自覚に自らを苦しめてしまう。
そんな瞭司の元には数学しかなかった。
悲しくて、心が痛みました。
瞭司の死は明かされていても、本当に死んだのか疑ってしまう。そんな気持ちでした。
離れていってしまった周りの人達が瞭司の研究ノートを解析して、伝えていくことで、歴史に、数学の世界に関わる人の中では生き続けていくんだろうなと思いました。
現実と才能というのを綺麗事一切なくして描いていたのが印象深いです。
天才は環境次第で生きるか殺されるか左右されるのだなと。
作者の他作品も読みたいなと思いました。
圧倒的筆致で天才の青春を描いた野性時代フロンティア文学賞受賞作、文庫化
圧倒的「数覚」に恵まれた瞭司の死後、熊沢はその遺書といえる研究ノートを入手するが――冲方丁、辻村深月、森見登美彦絶賛!選考委員の圧倒的評価を勝ち取った、第9回野性時代フロンティア文学賞受賞作!