手話が必要な人達を取り巻く環境がシビアに描かれていたので、読むと知らない知識がどんどん出てくるが、それはろう者を知る上では欠かせないことだと感じて、読んでいきました。
ろう者、聴者、障害のあるなしや障害の種類によって生き方が異なるのが切なくなる。
そして、障害を持つ人の中でも仲間外れがあるなんて… 辛いなぁ。
生きていくうえで線引きをする方よりもされた方が心に残っていくのだろう。
声を出せない、聴けない人達の気持ちを拾うのは知識がないと難しいだろうが、知ろうとしないと始まらない。
主人公・荒井が自分の過去を振り返りながらも、事件の調査をしていく流れが良い。ミステリーとしても伏線回収の方法や調査して得る情報の塩梅が絶妙でした。最初は荒井の態度にムッとするが、最後まで読むと彼が嫌いではいられなくなる。
事件の裏側にあった訴えには心が揺さぶられました。
続編も読みます。
今度は私があなたたちの“言葉"をおぼえる
荒井尚人は生活のため手話通訳士に。あるろう者の法廷通訳を引き受け、過去の事件に対峙することに。弱き人々の声なき声が聴こえてくる、感動の社会派ミステリー。
仕事と結婚に失敗した中年男・荒井尚人。今の恋人にも半ば心を閉ざしているが、やがて唯一つの技能を活かして手話通訳士となる。彼は両親がろう者、兄もろう者という家庭で育ち、ただ一人の聴者(ろう者の両親を持つ聴者の子供を"コーダ"という)として家族の「通訳者」であり続けてきたのだ。ろう者の法廷通訳を務めていたら若いボランティア女性が接近してきた。現在と過去、二つの事件の謎が交錯を始め…。マイノリティーの静かな叫びが胸を打つ。衝撃のラスト!