衝撃のデビューを飾った竜殺しのブリュンヒルドの前日譚にあたる物語。続編ではなく、世界観をより掘り下げたのは英断でした。
あれだけの作品を書いてしまったら、書くのに迷いが生まれてもおかしくはないな。
ただ、それでも今作を書いて下さってありがたいです。
世界観が素晴らしいですし、登場人物が周りの環境に振り回されて翻弄されるのは、ままならなさを感じつつ、惹かれてしまう。
竜と姫の関係はもちろんだが、姫と従者の関係も魅力的でした。
いつの時代も人と竜の関係はうまくいけないのは自然な流れなのか。
姫に拾われた従者が徐々に心境が変わっていき、行動にも現れていて、彼が報われたかは読み手次第ですが、個人的には報われたと思いました。
前作同様、切なさがある作風で重たく響く余韻が堪りませんでした。
作者の作品は見逃せませんね。
すべてを赦し、ただ一度、憎んだ
人々は彼女をこう呼んだ。時に蔑み、時に畏れながら、あれは「竜の姫」と。
帝国軍の大砲が竜の胸を貫く、そのおよそ700年前―-邪竜に脅かされる小国は、神竜と契約を結び、その庇護の下に繁栄していた。
国で唯一、竜の言葉を解する「竜の巫女」の家に生まれた娘ブリュンヒルドは、母やその母と同じく神竜に仕えた。 竜の神殿を掃き清め、その御言葉を聞き、そして感謝の貢物を捧げる――月に、七人。
第28回電撃小説大賞《銀賞》受賞の本格ファンタジー、第二部堂々開幕!