羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

思い出リバイバル

思い出リバイバル

 

心がほぐされるような読後感でした。

思い出というのは美化しがちだけど、冷静に俯瞰して見ると違う感覚になりますね。

今作は思い出を再び見たいと願う、切実な人達に一度だけ過去の思い出の場面に戻すことが出来る映人の元に集まる人を描く短編集です。

最初の1話でがっつり心を掴まれました。また、話ごとにアプローチを変えていて、話の流れに慣らさせない工夫が感じられる構成で素晴らしかったです。

なので、各話に違った想いが込められていて結末まで気になって仕方なかったです。

登場人物が思い出に触れて、生き方を見直していく様子を見守るのは良い読後感になっていました。

 

最後に映人自身の掘り下げで、そうなのかという驚きがあり、最後まで良い読後感でした。仕掛けにも納得します。

 

シンプルな話だけど、思い出を題材にしているならば、これしかないのかなと。

無駄に誇張しない感じが好みでした。

 

ひとつだけ、過去を「再上映」できるとしたら。今だから気付けることがあるーー思い出とは、未来へ一歩踏み出す自分を支えてくれるもの。

思い出をひとつだけ「再上映」してくれる不思議な存在、映人。
過去を変えることはできないが、今の自分の視点でもう一度過去を見直すことができる。
幸せだった頃を取り戻したい人、後悔にけりをつけたい人……映人に再上映を依頼する理由は様々だが、受けるか受けないかは映人なりの基準があったーー。

幸せなものでも、苦しいものでも、自分にとって価値があって大切なものだと心から思えたら、きっと「これから」が変わっていく。

思い出を再体験した依頼人たちは、何を得るのか。
そして、映人の正体と目的とは。