羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

講談社

ゴリラ裁判の日

タイトルが衝撃的ですが、中身はゴリラが言語を理解しているから起きる悩みや辛さの数々のことを描いていて、本質的には人と同じということ。愛した夫が殺されたローラの苦しさは人に伝わらないのがもどかしい。人から見れば動物の命と子供の命は平等ではな…

此の世の果ての殺人

凄く良かった。 終末、廃退した空気、淡々と進む展開。非常に好みのシチュエーションで、楽しんで読めました。滅びるのが決まった世界で、死を待つのみの状況で起きる殺人。興味が湧かないわけがない。 事件を追っていった末の結末は苦さがありつつも明るい…

思い出リバイバル

心がほぐされるような読後感でした。 思い出というのは美化しがちだけど、冷静に俯瞰して見ると違う感覚になりますね。 今作は思い出を再び見たいと願う、切実な人達に一度だけ過去の思い出の場面に戻すことが出来る映人の元に集まる人を描く短編集です。 最…

あなたへの挑戦状

競作とはどういう意味かも知らずに、阿津川先生と斜線堂先生が書いているというだけで条件反射で読みましたが、問題なかった。むしろ知らないからこそ、256Pまで読み、袋綴じの挑戦状を読むことで、見事に衝撃を喰らうことが出来ました。頬にビンタされた気…

invert II 覗き窓の死角

ドラマ化、コミカライズ化、おめでとう! 絶好調のシリーズなので早くも3冊目。 しばらくは相沢先生、このシリーズ中心かな。 さて、今回は短編1本と表題作の中編1本。前半の短編は紙魚の手帖で収録されていたので読んだことがありましたが、改めて読んでも…

方舟

帯のミステリ作家陣の書評を読んで期待値が上がってましたが、それを頷ける衝撃がありました。終盤まで、このまま推理するだけだと少し味気ないなと思っていたら、まさかの真相に度肝を抜かれました。 作中にトロッコ問題について語られていたのはそういうこ…

汝、星のごとく

凪良先生の作品の中では重たい部類に入る物語でした。 流浪の月が好きならば、間違いなく今作も刺さる。自分がそうだった。 主人公・暁海と恋人の櫂。 互いに家族を捨てられない呪縛に囚われている時に出会い、付き合う。 これ以上ない関係だったが、環境や…

幻告

五十嵐律人先生の勢いが止まらない。 デビューして以降コンスタントに作品を発表していくたびに作品を書く腕が上がっているのが分かる。 今作はお得意のリーガルドラマにタイムリープ要素を入れていて、今まで見たことないような作品に仕上がっていました。…

青い春を数えて

青春の痛みをよく描いた短編集でした。 各話の少女達の葛藤やもがきを追っていくのが楽しかった。息苦しい学生時代でも喉元通り過ぎれば熱さを忘れる。しかし、苦しいひと時を忘れるのは容易ではない。 学生ならではの視野の狭さ、だがそれが良い。 部活、…

スモールワールズ

発売当初から気になってはいたが、手が出なかった。しかし、今作に入っている魔王の帰還という短編が漫画化されていて、読んでみたら面白かったので、今作に手が出せました。 なんだろう、読んでいてモヤモヤしたり、登場人物に感情移入して苦しんだりとわ…

7.5グラムの奇跡

目が普通に機能して、世界が見えるということがどれだけの奇跡か。 この作品を読んで、改めて見えることの有り難さを痛感しました。 主人公・野宮が最初はミスして周りにフォローされてばかりだったが、誠実に目を見て話す彼の人柄が評価されるようになって…

本が紡いだ五つの奇跡

帯に書かれていた、本を愛するすべての人に!という台詞が気になって読みました。 読み終えて、はぁ〜と心に染み渡る連作短編集でした。 登場人物の揺れ動く心情を描くのが抜群に優れていて、読んでいて心に訴えかけられるものがありました。 編集者として結…

異能持ち名探偵大集合の似鳥先生の最新作 推理大戦

発売を知ってから楽しみにしていた作品で、似鳥先生が名探偵を取り扱うって珍しくて興味津々でした。 推理ゲームを行うために日本だけでなくよその国からも名探偵を集めるということで、各国から名探偵を選ぶまでの過程もしっかり描いているのは丁寧で良か…

アイアムマイヒーロー!

晴れ、時々くらげを呼ぶでデビューした作家の新作ということで楽しみにしてました。 ふらふら生きてきた主人公がある日、突然過去に別人となってタイムスリップする。 不思議な現象のおかげで、自分の小さな頃の無邪気さと向き合うことに。 大学生まで生き…

原因において自由な物語

タイトル、表紙から力が入ってる作品だと伺えますが、読み始めたら納得しました。 いじめに関して、取り上げている作品は色々あるが、今作は現実的に向き合っていて好感が持てる。 綺麗事で解決した気にならずに、倫理観を持つことを考えるきっかけを作った…

invert 城塚翡翠倒叙集

前巻のmediumが素晴らしいミステリーだったからこそ、期待値が高かったですがそれでも大胆な仕掛けを行ってきました! 頭の想像力を試すようなトリックで、読み終えた後は自分の至らなさに打ちひしがれました… 相沢先生の手のひらの上で転がされました。 な…

medium 霊媒探偵城塚翡翠

衝撃の一作となった今作の続きが出るということで読み返しました。 一度読んで仕掛けは知っているとはいえ、圧巻の先生への挑戦状ですね。 種と仕掛けを知った上で読み進めていくと、こんなにもヒントが提示されていたのかと驚くばかりです。なぜ一度目で気…

不可逆少年

法廷遊戯で圧巻なデビューをした作者の新作。 今回は法をかいくぐった少女を中心に彼女の関係者達の罪やなぜそうなったのかを突き詰めていく物語。 法にも穴があって、人間も常識人ばかりではない、そんな世の中で苦しむ少年、少女の今後の更生を諦めない主…

揺籠のアディポクル

ジェリーフィッシュは凍らないで有名な市川憂人先生の新作。 1年に1冊ペースが早いのか遅いのか分からないが、どの作品も読み応えがあるのでいつまでも待てます。 今作は無菌病棟で起きた殺人。 その殺人が起こるまではタケルとコノハのじゃれあいに頬が緩…

愛されなくても別に

武田彩乃先生の新作。 愛情を払えない少女・宮田と愛情を受けられなかった女性・江永が互いに傷と向き合い、孤独から抜け出していく物語。 生きていくうえで必要とされている両親からの愛情の無さに飽き飽きとしている2人が相性が良いのは納得だし、出会え…

晴れ、時々くらげを呼ぶ

表紙の美しさやタイトルの奇妙さに惹かれて読みました。主人公の亨が父親の死に際の台詞を理由に無気力に生きていたところにくらげを呼び出そうとする少女の小崎と出会うことで、徐々に変わっていく物語。2人以外にも親友や優等生がいて、様々な人がくらげを…

法廷遊戯

まず、圧倒的な面白さでした。無辜の裁判という学生同士で行う裁判で序盤は軽く見せて、有望な友人の身に起きた事件でがらりと雰囲気を変わりました。主要人物の3人の同級生が弁護士、被告、被害者となり今まで見ていたものはそれぞれ違ったんだなと。亡くな…

言葉が形になるまで さよならが言えるその日まで

表紙の雰囲気が良いことやあらすじから家族の物語だと思い、読みました。読んだ後に家族の形について考えたくなりました。(あらすじ)静岡県沼津市で交通事故が発生、運転していた小学校教諭の森遠謙介が死亡した。一人娘の伊緒が悲嘆にくれる中、驚愕の事実…

青い春を数えて

以前から気になっていたので、読めて良かった。この作者の描く心理描写はたまらないと改めて思う短編集でした。学生生活をしていると嫌でも周りと比べたり、悩みを抱えてしまう。今作は女子高生の様々な感情。臆病、嫉妬、傲慢、個性、不安。どれも大事な悩…

medium 霊媒探偵 城塚翡翠

相沢先生の最新作。発売前から好評で、読むのが楽しみでした。推理作家・香月、霊媒探偵・翡翠 2人が出会い、事件に挑み、解いていく。作者にしては、ヒロインがおとなしめだと思ったら、やっぱりね。と。2人が過ごしてきた日常、謎解きは最終話で炸裂する。…