ジェリーフィッシュは凍らないで有名な市川憂人先生の新作。
1年に1冊ペースが早いのか遅いのか分からないが、どの作品も読み応えがあるのでいつまでも待てます。
今作は無菌病棟で起きた殺人。
その殺人が起こるまではタケルとコノハのじゃれあいに頬が緩んだりしていたおかげで不意を突かれた気持ちになりました。
キャラの魅力を見せてから殺人が起きたので、切なさと同時にいったい誰が犯人かと気持ちが駆り立てられました。
主人公のタケルとコノハが周囲から孤立してから殺人が起きるということで犯人は限られているシチュエーションではあるが、当然簡単には分からせてはくれない。
コノハが死に、タケルが真実を知ろうと動き出してからはあっという間に最後まで読めました。
情報の出し方が巧みで分かりそうで分からないし、途中でコノハの視点などもあり、余計に真実が知りたいと必死に読み進めました。
タケルが必至に辿り着いた真実はただただ切なさがありました。
タケルとコノハの関係は実は綱渡りしていたようだったことや事件が起きるに至った経緯や結末には胸が苦しくなるくらい愛がありました。
また、最後まで読むとあちこちにヒントはあったがヒントと感じさせないのが憎い。
真実を知った上で最後にタケルが起こした行為には美しさを感じました。
半人形―それがコノハの最初の印象だ。隻腕義手の痩せた少女が、タケルのただひとりの同居人だった。医師の柳や看護師の若林とともに、病原体に弱い二人を守るはずだった無菌病棟、通称“クレイドル”。しかし、ある大嵐の日、“クレイドル”は貯水槽に通路を寸断され、外界から隔絶される。不安と焦燥を胸に、二人は眠りに就き、―そして翌日、コノハはメスを胸に突き立てられ、死んでいた。外気にすら触れられない彼女を、誰が殺した?