凄く良かった。
終末、廃退した空気、淡々と進む展開。非常に好みのシチュエーションで、楽しんで読めました。滅びるのが決まった世界で、死を待つのみの状況で起きる殺人。興味が湧かないわけがない。
事件を追っていった末の結末は苦さがありつつも明るい光がありました。
ただ、難点としては真犯人の動機がいかにもな感じだったのは物足りなかったです。しかし、ミステリとしてぐいぐい引っ張られる魅力がありました。
小春とイサガワの会話や関係性は特殊な状況でも揺るがないもので、物語が進行するうえで安心感がありました。
互いに背負っているものがあったが、最後には荷物を下ろせた感じがあり、良かったです。
滅びるのが決まった世界で生きる営みはどんなものだろうと考えてしまう作品でした。
犯罪が起こるのは、無理がないのかもしれない。
―滅びゆく世界に残された、彼女の歪んだ正義と私の希望
正義の消えた街で、悪意の暴走が始まったー小惑星「テロス」が日本に衝突することが発表され、世界は大混乱に陥った。そんなパニックをよそに、小春は淡々とひとり太宰府で自動車の教習を受け続けている。小さな夢を叶えるために。年末、ある教習車のトランクを開けると、滅多刺しにされた女性の死体を発見する。教官で元刑事のイサガワとともに、地球最後の謎解きを始める――。