次々と作品を生み出していく斜線堂先生の新作は元・天才達を再び舞台にあげようとするリサイクル計画の間にそれぞれが自分自身と向き合っていくというもの。
今までの作者の作品からすると珍しく尖っているところが少なく、真っ直ぐに主題に向き合っている作品だと感じました。
才能を持っている人は特別視されるし羨ましられる。しかしそれは才能を発揮している時のみ。自分の好きなことの能力は枯れていったら周りは離れていくし、何よりも自身がそのことを受け入れられなくて苦しい。そこの心境の掘り下げが抜群に上手いので、読んでいくうちに皆前を向いてくれよと願っていました。
そんな心情の面々がぶつかり合って、感情を吐き出したり、人工知能・レミントンとセッションして自分の未熟さと向き合っていくのは良いきっかけだったのではないか。
再び自分才能を諦めることなく、前に進んでいこうとする天才達に胸を打たれました。
時折りミステリー要素として謎も出されていてそこの辺りも上手かったです。
主人公の綴喜が1番心配でしたが、自分のやりたいこと、目指す場所が見えて爽やかな読後感で良かったです。
読んで確かめてほしいのですが、展開や捻り方も魅力ではあるのですが、個性豊かな天才達が抱えている感情もまた読み応えがありました。
自分の消費期限を受け入れる過酷な小説でしたが成長譚としては見事なものでした。
自分の消費期限は、もう切れているのか──
小学生でデビューし、天才の名をほしいままにしていた小説家・綴喜文彰(つづき・ふみあき)は、ある事件をきっかけに新作を発表出来なくなっていた。孤独と焦りに押し潰されそうになりながら迎えた高校三年生の春、綴喜は『レミントン・プロジェクト』に招待される。それは若き天才を集め交流を図る十一日間のプロジェクトだった。「また傑作を書けるようになる」という言葉に参加を決める綴喜。そして向かった山中の施設には料理人、ヴァイオリニスト、映画監督、日本画家、棋士の、若き五人の天才たちがいた。やがて、参加者たちにプロジェクトの真の目的が明かされる。招かれた全員が世間から見放された元・天才たちであること。このプロジェクトが人工知能「レミントン」とのセッションを通じた自分たちの「リサイクル計画」であることを──。