単行本発売時から気になっていて、どんなミステリーかと思ったら、少年の成長と大人の後悔が混ざり合って成長と変化を生み出す素晴らしい小説でした。
もちろんミステリーとしても緻密な采配で伏線を伏せたり回収したりしていて、真相を追っていく過程を読み進めていくのが堪らなく楽しくて、1つずつ真相に近づいていくたびに明かされる事に惹きつけられます。
夏休みの終わりは寂しい。やり残したこと、やりたいことを叶えるために小学生達が周りの人達を騙していくと同時に、その子供達が本当にスッキリするために大人も影響を受ける。
小学生達がなぜ、事件を起こしていくのかを追っていくうちにたどり着いた結末は苦い部分もありつつも、スッキリと心変わりしていく登場人物の姿は晴れやかな顔が多くて、最後にタイトル通り、夏を取り戻した彼彼女の締めは愛おしくて仕方がないです。
青春小説、ミステリー小説、作品の持つ要素が上手く絡み合っていて魅力的な作品でした。
作品を読み終えて振り返ってみても、作品の中身をパズルのように散らばせて、集めていくのが上手くて、終盤に化けます。
是非最後まで読んでほしいです。
夏休みを取り戻すため、子供たちは“事件"を起こした。
密室状況から忽然と姿を消す小学生たち。
彼らはどのように、そしてなぜ失踪しているのか
『珈琲店タレーランの事件簿』の俊英による傑作ミステリ、待望の文庫化!団地に住む小学生が失踪しては数日で戻ってくる事件が立て続けに発生している。ついては解明に力を借りたい――そんな匿名の情報提供を受けたゴシップ誌の若手編集者・猿渡は、フリー記者の佐々木とともに城野原団地で取材を開始した。状況から子供たちの意図的な計画であることは明らかだったが、猿渡らがその真意をつかめぬうちに、別の子供が授業中の視聴覚室から姿を消してしまう。子供たちはなぜ順番に失踪しているのか? 俊英による傑作長編、待望の文庫化。