タイトルから気になって読みましたが、ミステリとしても、戦後の日本が見えたり、本に関わる人達の苦境があったりと様々な要素が詰まっているので、最初から最後まで気が抜けない。しかし、読み終わった後は非常に胸が熱くなりました。
タイトルの定価がないというのが効いてくる展開でした。
導入が衝撃的。
本に埋もれて死んだ男の謎を追っていくうちに様々な困難に直面して、生活の危機に落ち入りながらもなんとか立て直していくのは良かったです。
本の価値や文化を踏みにじられれのは胸が痛くなりますが、しっかり文化でお返ししていたのは痛快でした!
ミステリとしての、謎の死を遂げた人の真相はなんとも悲しい気持ちになりました。
この時代ならではの背景があるから、仕方ないかもしれないが、なんとも言えません。
最後は古典、様々な書籍の文化の強さというものを実感する締めくくりだったのは力強いメッセージだったので、良かったです。
神田神保町――江戸時代に旗本の屋敷地としてその歴史は始まり、明治期は多くの学校がひしめく文化的な学生街に、そして大正十二年の関東大震災を契機に古書の街として発展してきたこの地は、終戦から一年を経て復興を遂げつつあった。その街の一隅で、ひとりの古書店主が人知れずこの世を去る。男は崩落した古書の山に圧し潰され、あたかも商売道具に殺されたかのような皮肉な最期を迎えた。古くから付き合いがあった男を悼み、同じく古書店主である琴岡庄治は事後処理を引き受けるが――直木賞作家である著者の真骨頂とも言うべき長編ミステリ。