ラノベでミステリを描いてた玩具堂先生が東京創元社デビューとは、読者として嬉しい限り。
癖が抑えめでしたが、するする読み進めやすい文章は健在でした。
日常の謎。
語り手や名探偵が高校生なので、青さがあります。ただ、事件の真相に辿り着くと大人、成年が抱えている悩みや想いに触れるので、幅が広く感じました。
日常ってそんな凄い事件は眠ってないよねと思わせるくらい、ちょっと地味な雰囲気ですが、それが良い。
今作の最大の謎は名探偵の正体にあるのだから。
最後に名探偵・芹の背景が明らかになり、締めくくったのは美味い。
これはシリーズ化を願わずにはいられない。
事件の真相はもちろんですが、語り手と名探偵のコンビの距離感や登場人物の背景が良かったです。
高校生の小南通(こなみとおる)は、雨宿りに入った雑居ビルの喫茶店で〝名探偵〟に出会った──。探偵事務所、占いの館、古書店など、ビルに店を構える店子が喫茶店に持ち込む奇妙な謎の数々。日常に退屈していた小南は謎解きに挑むが、正解に辿り着くのは決まって喫茶店店主の娘、三津橋芹(みつはしせり)だった。
会社員の身辺を調べ回る偽探偵の目的、失踪した大学生の行方を日記だけを手がかりに捜す、古書に記された江戸時代の秘剣密室殺人の真相など、トリッキーな難問に挑む高校生コンビの推理と、店子たちのほろ苦い人生模様を描く連作短編集。