全話シリアスで、ユーモアが少なめだったのは残念ですが、その分重みのある物語になっていました。謎の背景にある、人の願いには切なさが多分に含まれていました。
残酷な現実と向き合っていく、人の姿勢が窺える。
魞沢も控えめな態度でしたが、彼の優しさや配慮が覗けました。あとがき読むと、探偵という記号ではなく、1人の優しい人間として描きたかったと知り、納得がいきました。事件に直面して、ヘラヘラしてられる人は少ないよなと。
魞沢の掘り下げも随所にあり、魅力的な人物になってきたなと。
素晴らしい短編集です。
全国各地を旅する昆虫好きの心優しい青年・エリ沢泉（えりさわせん。「エリ」は「魚」偏に「入」）。彼が解く事件の真相は、いつだって人間の悲しみや愛おしさを秘めていた──。16年前、災害ボランティアの青年が目撃したのは、行方不明の少女の幽霊だったのか？ エリ沢が意外な真相を語る表題作など5編を収録。注目の若手実力派が贈る、第74回日本推理作家協会賞と第21回本格ミステリ大賞を受賞した、連作ミステリ第2弾。著者あとがき（単行本版、文庫版）＝櫻田智也／解説＝法月綸太郎
