羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

覚悟を持つということ 彼女の色に届くまで 文庫

彼女の色に届くまで (角川文庫)


前から気になっていた作品で、文庫化されたので読んでみました。

似鳥先生の詰め込めるものは詰め込んで、細部まで伏線を張り、最後に回収するという様美式が好きです。

(あらすじ)

画家を目指す僕こと緑川礼は謎めいた美少女・千坂桜に出会い、彼女の才能に圧倒される。僕は千坂と絵画をめぐる事件に巻き込まれ、その人生は変化していく――。才能をめぐるほろ苦く切ないアートミステリ!

緑川と千坂の青春であり、絵画という芸術に取り組む人達の隠された気持ちや願いが詰まっている。

そして、ミステリーとしても絵を起点にして繋がっていく合理性があり、読むと納得出来る。

最初から最後まで細部に伏線を張り巡らせて、それを気づかせることなく最後まで読ませて、気づいたら全ては繋がっていたんだと思う作品構成が素晴らしかったです。


緑川と千坂の関係が進んでいくにつれて、不安がありましたが、的中しました。しかし、密に関係性を描写していたからこそ、最後の2人の会話についていくことが出来ました。


緑川と千坂の友人の風戸の筋肉キャラでありつつ、良いキャラしていて好きでした。


また、読み終えてみると、各話に出てきた人物みんな印象に残るのが、良いです。



満足度が高い一冊です。

隠し通してでも 錬金術師の密室

錬金術師の密室 (ハヤカワ文庫JA)


ファンタジー×ミステリー×密室という題材だけでも大好きなやつだと思うのに、探偵役とバディが相性悪くてツンツンし合う関係とか最高過ぎました… 眼福。。

(あらすじ)

アスタルト王国軍務省錬金術対策室室長にして自らも錬金術師のテレサパラケルススと青年軍人エミリアは、水上蒸気都市トリスメギストスへ赴いた。大企業メルクリウス擁する錬金術師フェルディナント三世が不老不死を実現し、その神秘公開式が開かれるというのだ。だが式前夜、三世の死体が三重密室で発見され…


探偵役である、錬金術師のテレサと助手を務める軍人のエミリアが互いに嫌いあっているのに、不思議な事件に巻き込まれて、危機を乗り越えていくうちに嫌いだけど信頼を築き上げてるのは良いですよ。


ファンタジー要素を上手く活用していて、ファンタジーである意味がきちんとなされていて、そこは安心しました。


また、明かされる真実は分かったときは頷けるところと遊び心ありすぎだと思いました。

動機やトリックが愉快で、試されてるな〜



事件を通して、テレサエミリアが隠していること、明かされてはいけない秘密を共有しあい、向かい合う最後は良かったです。



是非、シリーズ化してほしいです!

今を生きるとは 今夜、世界からこの恋が消えても

今夜、世界からこの恋が消えても (メディアワークス文庫)


記憶が残らない少女との恋愛ものって、量産され過ぎていて警戒するジャンルだと思うが、表紙や嘘の関係から始まるということに興味が煽られました。良い意味で裏切ってくれて、今作ならではの良さが詰まってました。

(あらすじ)

一日ごとに記憶を失う君と、二度と戻れない恋をしたーー。 
僕の人生は無色透明だった。日野真織と出会うまでは――。 
クラスメイトに流されるまま、彼女に仕掛けた嘘の告白。しかし彼女は“お互い、本気で好きにならないこと”を条件にその告白を受け入れるという。 
そうして始まった偽りの恋。やがてそれが偽りとは言えなくなったころ――僕は知る。 
「病気なんだ私。前向性健忘って言って、夜眠ると忘れちゃうの。一日にあったこと、全部」 
日ごと記憶を失う彼女と、一日限りの恋を積み重ねていく日々。しかしそれは突然終わりを告げ……。


完全に予想もつかない着地をしているのに、納得してしまう。なぜなら、主人公の透の優しい心と記憶を維持出来なくても毎日を生きている真織の過ごした日々や、周りの人の人生も描かれているから。


ただ、ひたすら読んで確かめてほしい、この作品に宿っている生命というか、訴えを。


登場する、人達がみんなが苦悩しながらも、希望を持って前に進もうとしていて、この作品を読んだら、心を正さないといけないという気分にもなりました。


作者が仕掛けた構成も素晴らしかったが、何よりも透と真織、友人の泉ちゃんの間で起こる、葛藤や好きという気持ちの揺れ動きが丁寧に書かれていたので、作品の流れに乗って行けた要因なのかなと。


使い古されたネタも使う人が使えば違う輝きを見せるんだと驚きました。



作者のこれからの活躍を楽しみにしています。


奪うということは 俺がラブコメ彼女を絶対に奪い取るまで。

俺がラブコメ彼女を絶対に奪い取るまで。 (富士見ファンタジア文庫)


略奪愛に見えるが本当は普通の恋愛で、勘違いを勘違いで上塗りしていき、錯綜していく展開から目が離せない!


(あらすじ)

「俺は人生の主人公じゃない」リア充高校生・成瀬和臣がライバル視するのは、ヤレヤレ系主人公沖津優太。和臣は彼の取り巻きの幼馴染、後輩アイドル、クラス委員長と個性豊かなヒロインたちを攻略することになり!?


無自覚鈍感系モブキャラ・沖津にヒロイン達が想いを寄せているというのはガワの話で、実際は…みたいなところは、これどうやって元の矢印に正していくの?と思いました。

ヒロイン達はわりと分かりやすく気持ちを示しているが主人公の成瀬が先入観と過去の傷を気にしているから、前に進めない。

しかも、成瀬が上手くやらないと、バットエンドにいきそうな拗らせかたをしているので心配になります。

ヒロインの外側というか真ヒロイン的な立ち位置の黒日奈が不気味。だけど、成瀬とは距離が近いのがみそか


主人公とヒロイン達が少しずつ気持ちを前に出していくので気持ち良く読めました。


先が読めないラブコメで、読む手が止まらなかったです。

次巻からが本番だと思うので続きを楽しみにしています。

生きる希望を さよなら異世界、またきて明日 旅する絵筆とバックパック30

さよなら異世界、またきて明日 旅する絵筆とバックパック30 (ファンタジア文庫)


タイトルから面白そうだし、前作が評判になっていたので、読んでみました。

最初は雰囲気や文章に慣れるのに徹してましたが、作品に入れてからはぐいぐい引っ張られるように読み進められました。


(あらすじ)

滅びかけた異世界に迷い込んだケースケは、ハーフエルフの少女・ニトと出会う。彼女の母親が遺した手帳に描かれた“黄金の海原”を探し、二人は辛うじて生き残った人々たちとの出会いと別れを重ねてゆくのだが――。


滅びかけていて、辛い世界で出会ったケースケとニトが徐々に旅をしていくうちに様々な人と出会っていき、ゆっくり関係が変化していくのが、読んでいて良いなと。

また、道中に出会う人達が揃いも揃って、良い人達で辛い事情もあるが、幸せな旅だなと思いました。

出会いは財産だとしみじみとした気持ちになり、人と人の繋がる暖かさを感じました。

日々の小さな事で幸せを感じるというのも大事ですね。胸にジーンときました。

色々想うだろうが、みんなが幸せになってくれればと願うばかりだ。


ケースケとニトが互いを想い合うようになるのが素敵だったし、2人の関係の表し方や築きあげていく過程に希望を感じました。


読み終わってしまうのが寂しくなるくらい、作品に浸ってしまいました。

まだまだ、続いていく、ケースケとニトの旅を追いかけていきたいです!

何の目的で 午後からはワニ日和

午後からはワニ日和 (文春文庫)


動物園を舞台に不思議な事件が巻き起こるミステリー。

珍しい題材なので、物珍しさで読み始めたのですが、一つ一つ話が進んでいくうちに作品の持つ魅力に惹かれていきました。


(あらすじ)

イリエワニ一頭を頂戴しました。怪盗ソロモン」
--凶暴なクロコダイルをどうやって? 
続いて今度はミニブタが盗まれた。平和なはずの動物園で起きた謎の誘拐事件はどうなるの?! 
楓ヶ丘動物園の飼育員である僕こと桃本たちは解決に乗り出す! 
動物によく舐められるキリン飼育員の桃くん(桃本)、猛禽類担当で美人ツンデレ獣医の鴇先生、げっ歯類担当で動物園のアイドル飼育員七森さん、爬虫類担当でミステリ好きの変態・服部君(カルト的人気! )など、動物たちよりもさらに個性豊かなメンバーが活躍する、愉快でキュートな、大人気動物園ミステリー第一弾!


個性豊かな登場人物達で、仕事描写や彼らの掛け合いが非常に賑やかで仕事モノでも面白いと思える。


起きた事件は動物園だからこそ起こる謎で、最初から最後までさっぱりだったので、撒かれた犯人の行動や真実が分かったときは胸にストンと落ちてましたし、膝を叩きたくなるくらい、よく練られていて、素晴らしかったです。

また、犯人の気持ちまで掘り下げていて、なお良かったです。



これからシリーズを追いかけていこうと思います。


やはり似鳥先生の作品は最高だ。


感情の渦に モボモガ

京都アニメーション KAエスマ文庫 モボモガ


表紙や設定を見るに自分好みだと思いました。そしていつか京アニで映像化するのではと思う、エンタメ感もありました。


(あらすじ)

KAエスマ文庫リレー2020 連続刊行第1弾! 『二十世紀電氣目録』の結城弘最新作。 人の時間を盗んだり、その時間を使って過去に戻ったりできる“貸時計”。 そんな都市伝説のような時計を使って、大正時代から女の子がやってきた。 過去に戻るため東奔西走する少女に、振り回される今時無気力少年。 元気溌剌大正娘とものぐさ現代少年のちぐはぐ青春ハートフルラブコメディ。 スマホ、新幹線、そしてミニスカ。未来は異世界だ――。 


大正時代からやってきた少女・景季が時代差を感じつつ、周りに影響を与えていく物語で、非常に羨ましく見えました。

どの時代でも誰かのために動ける人は眩しく見える。動けない自分が嫌になる。

景季が関わっていくうちに光太、虹江、正平、美波が凝り固まっていた考えが解されていき、改心していく心理描写が見事でした。

また、伏線を細かく配置していたおかげで、終盤の怒涛の流れが楽しかったです。ゾウさんとかそうなるのかと笑


タイムリープ、青春、人情、色々詰め込まれていて把握しづらさもあるが、噛み砕いで飲み込めばハマりました。


読み応えがある一冊になっていました。