羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

踏み出す勇気を リバーシブル・ラブー初恋解離ー

リバーシブル・ラブ―初恋解離― (LINE文庫)


作者の前作「僕は僕の書いた小説を知らない」が頭に響いていたので今作も読もうと思いました。

読んだら、頭にガツンと来ました。

将来とかやりたいこととかに悩んでる人には特に刺さると思いました。

主人公・上杉はある時知り合った"葵"に恋をする。ゆっくり近づいていくうちに発覚するのは葵とは違う人格である"末莉"がいることが分かる。

おしとやかな葵と活発的な末莉。

一つの身体に二つの心があり、苦しむ葵に上杉が覚悟を決めて踏み込んでいくというのは

中々出来ることじゃないし、眩しく見えるくらい輝いてました。

また、葵の抑圧された気持ちから生まれた末莉も1人の少女として生きていて、最後まで上杉と葵のために動くというのが優しすぎて好きになりました。


上杉が葵に恋をするのと同時に自分のやりたいことを自覚して、夢に突き進むという二本がこの作品の軸になって回っている。葵と末莉の心情も淡く美しく思えて良かったです。



この作品を読んで勇気をもらいました。



陸王 文庫版

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池井戸潤先生の作品で1番自分の胸に突き刺さるのが陸王ですね。

ドラマは一気見して、最初から最後まで目を離せなかった。

ドラマと原作小説比較したら物語の整合性や物語の波の作り方はドラマのほうが勝るかな。ただ、小説は小説で心理描写に長けてるので、どっちもどっちか。

小説を読んで、ドラマを見てない人はドラマを見てほしい。


この作品はこはぜ屋が理想の陸王を作るまでの悩みや葛藤などと陸王を履く怪我を抱えているランナー茂木の走りたい気持ちが見どころ。この二つだけでも十分だけど、脇を支える人達の成長や気持ちも拾っていて、熱くなる場面が多いです。



読んでいて、辛かったり悔しさが伝わってきますが、それが身を結ぶところは胸が躍ります。


良い作品だなと。

研ぎ澄まされた衝撃作 僕が僕をやめる日

僕が僕をやめる日 (メディアワークス文庫)


電撃文庫からメディアワークス文庫へ。

15才のテロリストで衝撃的なインパクトを残した松村先生の新作。

前作に続き、読むと衝撃を受ける作品になっています。

人生に絶望して自殺しようとする主人公・立井は死ぬ寸前に高木という男に救われ、2人は秘密を共有し、生活する。

しかし、そんな日々は長くはなかった。

高木が殺人を犯した。

それがきっかけで物語は大きく動き出す。

警察に疑われる立井は高木と過ごした時間で残されたヒントを頼りに高木を辿るように動きだす。緊迫した状況の中で浮かび上がっていく悲しい事実。そして、高木に辿りつき、立井が高木に想いをぶつける。素晴らしい結末になっていました。



全体的に切れ味鋭い描写で作品にリアリティを加えていた。あとは堅実な物語の運びで、情報も十分与えられていて、読み進めていくうちに強引に作品の中に連れていかれる様でした。


まさに研ぎ澄まされた1冊でした。


少年が歪み、生きていくうちに殺人鬼になる。


あらすじで気になってる人や先生のファン、是非読んで確かめてほしいです。


恋を終わらせない旅 終わった恋を、はじめました

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主人公が、初恋相手を忘れずにいて人生に迷っているときに妹からかかってきた電話から物事は動く。

何やら事情を抱えている妹が初恋相手の少ないが情報を見つけたから、探しに行こうと発破をかける。

か細い情報を頼りに、様々な人に話を聞き、初恋相手を探す旅に出る。そして、辿り着いた結末にはそう来るかという驚きと胸が熱くなる光景があった。その中には序盤から散らばっていたピースが全て頭の中で繋がったような心地よい感じがありました。良い裏切り方をしてくれました。

また、旅の道中で出会った人達の様々な恋模様も魅力的で、作品をより上に昇華させていたと思います。素晴らしい。



読み終わってみたら、主人公だけでなく、妹視点でも作品に入り込めるなと思いました。主人公と妹の関係も良かったです。



今作を読んだら、きっと良い読書が出来たと思うでしょう!


コミュ症探偵誕生 目を見て話せない

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タイトルと表紙の主人公の通り、コミュ症の藤村が推理していく。

人とコミュニケーションがとれないため、自分で動くしかないから頭を使い、謎を解いていく主人公像が新鮮に思えて、藤村を応援したくなります。コミュ症あるあるが胸が痛くなりました笑 

作中でもあるけど、人と接するたびに友人の里中に間に入って話を聞いてもらうという徹底的な天皇っぷりが不思議と面白かったです。

話が進んでいくうちに、成長というか変化していく藤村と人間関係も注目ポイント。

物語の最後の会話に目頭が熱くなりました。こんなのずるい…


日常の軽い謎から、犯罪まで幅広く扱っていて、飽きることなく夢中になって一気読みできます!


謎解きだけでなく、藤村や周りの里中、加越、皆木の掘り下げもあり、是非シリーズ化してほしい!


是非読んでもらいたい作品です!

コーヒーカップに詰まった想い 珈琲店タレーランの事件簿6 コーヒーカップいっぱいの愛


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シリーズ最新刊。

既刊を読み終えてちょうどいいタイミングで発売してくれました。

もう珈琲に関係ないのに驚かなくなってきたけど、寂しい。

タレーランの事件だけど、解く場所が広がってきていて、そこは良い意味に捉えていけば良いかな。

今回の謎はよく練られていて、解かれた後の余韻がたまらなく良かった!巻数を重ねてきて、磨きがかかってきたかな。

小原ちゃんは違和感があったが、ヒントが散らばっていたので驚きはなかった。


そして、アオヤマが美星に勇気を出して踏みこんで、2人の関係において大きな変化を迎えていきそうで、続きが楽しみです!

時空旅行者の砂時計

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本格ミステリと妻を救うためにタイムリープするという題材に惹かれ読みましたが、多少ん?と疑問になるところはありましたが、満足出来る作品でした。

最初の物語の入りに躓きましたが、中盤から終盤にかけての畳み方が上手くて、物語に引き込まれました。

主人公の立ち回りや、腹芸が上手いなと。事件に対してのスタンスが見事だった。

事件はタイムリープということを組み込んでいて、複雑になっていた。

犯人はまぁ、こうなるよねと。


最後は救われた形になって良かった。

次巻に続くような伏線もあり、どう膨らますのか興味があります。


タイムリープという題材が物語に良くも悪くも効いていて、そこの判断は難しいですね。