羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

付き添うひと

付き添うひと

 

最高でした。

最近、岩井先生作品が好きなので新作を楽しみにしていましたが、非常に満足度が高いです。

岩井先生の作品でスポットが当たる職業がメジャーどころではないのが良いなと再確認出来る作品でした。弁護士は弁護士でも、少年犯罪を取り扱う付添人という職業を扱っていて、子供達とその友人、家族の距離感や問題を描いていて、各話に登場する悩める人達の心からの叫びを大切にしているのが印象的でした。

 

主人公・オボロが、子供やその子の周りにいる人にこれからの人生に希望を持てるように接しているのが非常に良い。

苦しみながら生きている人が助けを求めていて、どういうことに苦しんでいるのか、どうなりたいのか、内に秘めている気持ちを引き出していく。そうして、最後には現実と向き合って、気持ち晴れやかに歩いていく姿を見ると安心します。

話を超えて、問題を抱えていた人達がどうなったかという後日談も挟まれているので、良かったねと成長を感じられるのは素敵です。

 

作品全体的に救う側だったオボロが、助けを求める人を助けていくうちに、オボロ自身も救われるの良い締めくくりだったなと。

 

出版界で大注目の新鋭・岩井圭也が、子どもたちを取り巻く現状と未来を描き出す、感動のヒューマンドラマ。


僕は、あの頃の僕を救えているだろうか。


過去の経験を通して、付添人(少年犯罪において弁護人の役割を担う人)の仕事に就いたオボロ。彼に舞い込む依頼の先では、簡単には心を開かない、声を上げる方法すら分からない子どもたちが、心の叫びを胸に押し込め生き延びていた。オボロは、彼らの心に向き合い寄り添う中で、彼らとともに人生を模索していく――。

JK II

JK II (角川文庫)

 

まさかのシリーズ化!

衝撃的な作品だった前巻からどう続くのか気になっていました。

まとまっていたので、どう物語を展開するのかと思いましたが、流石はベテラン作家ですね。

上手い!

最後まで読めば分かるけど、JKという女子高生の意味だけでなはなく、ジョキアム・カランブーという人物の生き方も含んでいる。

あと、女子高生が性被害を受けることが多く、立場が弱い。そうした実情から彼女達を救うという面があるのが分かる。

前巻読んだ人は今巻も読んで確かめて欲しいです。

 

紗奈が戸籍もなく、身寄りもない、そんな状況でも身体を鍛えて策を巡らせて生き抜く姿は立派。表に出られないけど、警察が手を出せない悪者を処罰していく姿は爽快です。日本の犯罪者への甘さを突いていて、被害者に寄り添っているから、紗奈を応援したくなります。

とはいえ、1人で生き抜くのは厳しくなってくるだろうから、仲間を増やすのか気になります。

 

TBS「THE TIME,」で話題の、青春バイオレンス文学!

K-POPダンスが人気のユーチューバー「江崎瑛里華」。ある朝、投稿用動画の撮影中に川崎の暴力団、衡田組のチンピラが現れた。瑛里華の正体に気づいた男はナイフと銃で脅し、連れ去ろうとするが返り討ちに遭う。残されたバッグの中から犯罪計画と思われるメモを見つけた瑛里華は、自分を“幽霊”にしたヤクザたちの悪行を潰すため、記された日時に渋谷109に向かう。女子高生の聖地で、凄惨にして哀しい少女の復讐劇が始まる!

花は咲く、修羅の如く 3

花は咲く、修羅の如く 3 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

 

Nコンへ挑む花奈達。

朗読はただ読めば良いではなく、どの本を選んで、どこを読むかを決めなければならない。当たり前なんだろうが、大変だ。

制限時間もあるだろうし、意外と難しそう。

勉強になります。

 

放送部の部員同士が掘り下げられていくことで、些細なやりとりに味が出てきたなぁと。

今回は表紙にいる秋山が掘り下げられていて、意味深な台詞が多かった彼の家庭事情や足踏みしているのが分かった。悩める彼がドラマ制作を通して殻を破っていく様子は魅力的でした。

 

 

どんどん、関係図が広がっていて、これからどうなっていくのか楽しみです。

 

花奈の読み聞かせはシリーズの中で非常に大きいものがありますが、子供への読み聞かせで変化があったようで、この先どう変化していくのか注目です。

 

 

Nコンに向けて各自が出場部門を決めた花奈たち放送部メンバー。練習に励む花奈だが、アナウンス部門を選んだ松雪から自身を取材されたり、ビデオドラマ部門を選んだ萩大が撮るオリジナルドラマで演技デビューも!? 朗読だけでない放送部の作品作りを通して皆と少しずつ関係を深めていく中、憧れの修羅の舞台があると知り──。

探偵は友人ではない

探偵は友人ではない (創元推理文庫)

 

青春ミステリ作品でもかなり好きなシリーズの2作目。

表紙が単行本から変わっていたが、これはこれで良いですね。

内容としては、前作の探偵は教室にいないに比べて、よりなぜそんな不思議なことが起きるのか、起きた背景を掘り下げる解像度が増していたなと思います。

謎が解けた後にはちょっとモヤっとする感情がありつつも、晴れやかな気持ちになって歩き出せる開放感があって、素晴らしい読後感があります。

登場人物が謎を起こるための舞台装置みたいになっていないのは高感度が高いです。

ミステリとしても込み入った迷路みたいになっていて、どんな真相が待っているのか楽しみに読めました。

個人的に好きだったのは、ミステリ的には1話目のロールプレイ。登場人物の関係的には4話目のfor youです。

 

そして、1番は真史と歩の関係が少し変わっていく様子は魅力的でした。探偵と依頼者みたいな関係でしたが、幼馴染、友人としては寂しい関係だったので、互いに踏み込んでいく様子は青春の良さが詰まっていました。

 

 

学校や街で謎に遭遇するわたしを、
いつも幼馴染みの名探偵が助けてくれる
洋菓子店の暗号クイズや
美術室での奇妙な出来事を解く内に、
ふたりの関係に変化が。
札幌を舞台に贈る青春ミステリ第2弾!

わたし、海砂真史(うみすなまふみ)の幼馴染み・鳥飼歩(とりかいあゆむ)はなぜか中学校に通っておらず、頭は切れるが自由気儘な性格で、素直じゃない。でも、奇妙な謎に遭遇して困ったわたしがお菓子を持って訪ねていくと、話を聞くだけで解決してくれた。彼は変人だけど、頼りになる名探偵なのだ。歩の元に次々と新たな謎――洋菓子店の暗号クイズや美術室での奇妙な出来事――を持ち込む日々のなかで、ふと思う。依頼人と探偵として繋がっているわたしたちは、友人とは言えない。だけど、わたしは謎がなくても歩に会いたいし、友人以上に大切に思っているのに……。札幌を舞台に贈る、青春ミステリ第2弾!

ペンギンは空を見上げる

ペンギンは空を見上げる (創元推理文庫)

 

最高の読書体験でした。

ちょっとしたミステリがありつつも軸は少年、少女の成長物語。

思春期の葛藤と成長、そして希望が詰まっていて、心に響く成長物語になっていました。

心洗われるとはこのことか。

主人公・ハルがなぜ風船ロケットを飛ばし、宇宙を目指すのか。周囲に心開かずに、人に頼らないのか。疑問がありつつも進んでいく。

金髪の転校生である、イリスと接していく友情を築いていくことがあったり、幼なじみの三好との関係、学校内での陰湿なイジメ、親子の難しい関係、色々ありつつも全てが明らかになることで込み上げてくるハルの感情を大切にしたいと思いました。

ハル、イリス、三好、それぞれが背負っていたものを乗せて飛んだ風船ロケットに目頭が熱くなりました。

ハルとイリスは似たもの同士で、同じような悩みを抱えていたからこそ、分かり合えたのだと思うと尊い関係を見せて貰えたなと思いました。

また、周りの大人達がハル達に寄り添ってくれる人達で、暖かい雰囲気になっていたのは良かったです。

 

子供から大人まで、幅広い層に届いて欲しい物語でした。

 

タイトルも読み終えて見ると、胸にグッとくるものがあります。

 

小学六年生、風船で宇宙撮影に挑む。
奮闘するハルくんを、きっと応援したくなるはずです――
読み終えたあとは、もっと。
第34回坪田譲治文学賞受賞作

将来、NASAのエンジニアになりたい小学六年生の佐倉ハルくんは、風船による宇宙撮影を目指しています。できる限り大人の力を借りず、自分だけの力で。意地っ張りな性格もあってクラスでは孤立、家に帰っても両親とぎくしゃくし、それでもひたすらひとりで壮大な目標と向き合い続けるハルくんの前にある日、金髪の転校生が現れて……。第34回坪田譲治文学賞を受賞した、ひとりの少年の夢と努力の物語。奮闘するハルくんを、きっと応援したくなるはずです――読み終えたあとは、もっと。

夏は終わらない 雲は湧き、光あふれて

夏は終わらない 雲は湧き、光あふれて (集英社オレンジ文庫)

 

完結。様々な視点で描かれていたが、三ッ木高校に絞ったのは非常に良かったと思う。

球児の夏を凝縮しているようで、夏にピッタリの読み応え。

弱かった三ッ木高校が強くなっていることが既に感慨深いものがあります。しかし、弱かったチームから急に厳しく練習するようになったら反動が生まれるよね。それと月谷が成長しているからこそ捕手の鈴江も苦しむ。マネージャーの瀬川も心残りがあったりと色々悩ましい部分もあったが、最後の夏を戦い切った姿は天晴れでした。

特に印象的だったのは、笛吹が主将としてしっかりしていて、かつ成長していたことですね。

中村前主将も良い味出してました。

月谷と木暮の交流にはほっこりしつつ、2人の投げ合いは熱かったです。

 

試合は終わっても、夏は終わらない様子は野球の魔力だよなぁ。

 

弱小野球部の三ツ木高校は、エース月谷と主将笛吹のもとで確実に実力をつけていった。急成長を遂げるチームの中、捕手の鈴江は月谷の投球に追いつけず苦しむ。一方、ライバル東明学園の木暮も、思わぬ乱調でエースナンバーを剥奪される危機に。それぞれが悩みと熱い想いを胸に秘め、最後の甲子園へ向けて走り出す!! 感動の高校野球小説、クライマックス!

キュレーターの殺人

キュレーターの殺人 ワシントン・ポー (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

ワシントン・ポーシリーズの3作品目。

毎回のことだが、厚い。

しかし、それが気にならないくらい夢中になって読めました。

前1.2作品は面白いのだが、読むのに時間がかかっていました。

今巻は場面展開がスムーズだったり、ポーとティリーの関係が安定していて、役回りも決まっていて上司にも理解されているからか分からないが読みやすかった。

ポーの軽口は相変わらずだし、ティリーは成長してるし、シリーズとしての積み重ねが感じられます。

 

今回は猟奇的な犯罪で相当練った上で事件を起こす犯人を突き止めていく、ポーとティリーの調査が魅力的でした。ふとした見逃してしまいそうなヒントを逃さないポーと得意分野だけでなく苦手分野でも頑張ったティリーのバディとしての活躍が光りました。

中々尻尾を出さない犯人だが、2人の執念が犯人を追い詰めていました。

犯人への道が、そんなことから繋がるのという驚きがあり、小さな違和感から真相に向かっていくのが興味深かったです。

 

中々胸が痛むシーンがありましたが、それは今作では仕方ないのか。辛いけど幸い…なところに落ち着いて良かった。

しかし、犯人から真犯人へ向かっていき、たどり着いた結末にはゾッとしました。

たしかに伏線は巻かれていたな…

真犯人の動機に関してはそこが繋がるのかと崩れ落ちそうでした。

流石にショックを受けました。

 

素晴らしいミステリーでしたが、幕引きがビター。

 

シリーズの続刊が早く読みたいけど、また来年かな。楽しみにしてます。

 

ストーンサークルの殺人』『ブラックサマーの殺人』の刑事〈ワシントン・ポー〉シリーズ、驚愕必至の第三作登場。
人体連続切断事件の背後に潜む「キュレーター」とは?
「先が読めたと思うなら、あなたは注意が足りていない……」
著者M・W・クレイヴン自薦!

クリスマスの英国カンブリア州で、切断された人間の指が次々発見された。プレゼントのマグカップのなか、ミサが行われた教会、そして精肉店の店内で――。現場には「#BSC6」という謎めいた文字列が。三人の犠牲者の身元を明らかにしようと国家犯罪対策庁のワシントン・ポー刑事とステファニー・フリン警部、、ティリー・ブラッドショー分析官らが捜査に乗り出す。だが彼らはまだ知らない。この連続殺人の背後に想像を超える巨悪「キュレーター」が潜んでいることを……。ポーやティリー、フリンたちが相対する敵の正体とは!? 驚愕必至のシリーズ第三作。解説/若林踏