羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 VII レッド・ヘリング

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 VII レッド・ヘリング (角川文庫)

 

李奈の作家としての成長を期待していたが、あまりに過激な手段を取ったなと。作家としての生活にダメージを与えるやり方で、本探しに繋がるやり口は驚きました。

ここまで追い詰めるとは思わなくて、若干引きました。

ただ、マンネリを防ぐためには良かったのかも。

終盤まで苦いものが多かったですが、李奈が明確に一皮向けた姿を見せていて、心強かったです。凄く逞しくなりました。

仲間に頼るのも強さですが、自分で自分を守るのも強さか。

優佳との友情もグッとくるものがありました。

 

大きな試練を乗り越えて、作家として成長した李奈がどうなっていくのか楽しみです。編集者とも強気でやり合えそうだが、優しいからどうなるか。

 

コミカライズも決まって、めでたいです。

 

人気のビブリオミステリシリーズ!!

24歳になった李奈は引っ越しを終えた新居で心機一転、小説家として新たな一歩を踏み出そうとしていた。新刊の評判は上々。しかしそんな状況に水を差すような事態が! アマゾンの評価は軒並み星一個となり、行った覚えのない店での痴態が撮影され、書きもしない官能小説が自分名義で編集者に送られていたのだ。一体何が起きているのか? 混迷を極める中、出版社にいる李奈を呼び出す内線電話がかかってきて……。

名探偵外来 泌尿器科医の事件簿

名探偵外来 泌尿器科医の事件簿

似鳥鶏先生の発想と機転には驚かされるばかり。

ユーモアとシビアな面を使い分けて現実を突きつけてくるのは健在で、今作も見事に作者の術中にハマり、心地よいです。

泌尿器科に名探偵という組み合わせは想像外過ぎて読むのが楽しみでした。着眼点は珍しいですが、事件の背景は現実味があって、ゾッとさせられます。話の膨らみから収束までの流れが丁寧で良かったです。

泌尿器科に訪れるというのはどうしても後ろめたいものがある。そこを掘り下げるだけでなく、医師として患者の抱えている嘘や病気の背景には考えさせられる社会問題も孕んでいて勉強になりました。

登場人物達のキャラ付けが濃いですが、薄い主人公も含めて医師としての矜持を感じられて素晴らしかったです。

 

医療現場としてのリアルを描きつつ、ミステリとしての読みごたえがある作品でした。

泌尿器科の勉強になり、物語としても魅力的でした。

是非ともシリーズ化してほしい作品でした。

 

「なんでこんなになるまで来なかったんですか…」泌尿器科医・鮎川のもとには今日も多くの患者が訪れる。中には、羞恥心から嘘をついたり、人に言えない秘密を抱えている人も多く……。泌尿器科ならでは多様な謎に真摯に向き合う鮎川。元ヤンキーの看護師長、忍者のようなソーシャルワーカーなど心強い仲間たちとともに病と事件の早期解決に挑む!

会社を綴る人

会社を綴る人 (双葉文庫)

 

読んだら愛おしくなる主人公でした。

ポンコツサラリーマンだが、文章を書くことが得意である主人公が老舗の会社にひょんなことに入社することに。

周りの社員からのダメ出しを受けながらも、自分の武器を活用していき、会社の風向きを変えていく。

ネガティブで、クヨクヨしながらも、めげずに自分の出来ることを考え続ける姿勢にはハッとさせられました。

 

地味な仕事でも誠実に行っていれば誰かに届くというのは胸がスッと軽くなります。

色々しがらみに縛られていた登場人物達が解放されたように、肩の力が抜けていく様子に暖かい気持ちになりました。

素敵な物語でした。

 

 

普通の人ができていることがうまくできない――アラサー男子・紙屋がなんとか就職できたのは老舗の製粉会社。
しかし配属された総務部では、仕事のできなさに何もしないでくれと言われる始末!
紙屋は唯一の特技、文章を書くことですこしずつ居場所を見つけるが、一方で、会社は転換期を迎え……。

ぼくもだよ。 神楽坂の奇跡の木曜日

ぼくもだよ。 神楽坂の奇跡の木曜日 (ハルキ文庫 ひ 8-3)

 

読んで良かった!そう思える小説と出会えました。

パッケージの良さとあらすじの、人は食べたものと読んだものでできているを読んだら読まずにはいられない。

読書好きには堪らない台詞回しに胸が躍りました。生きていて、本を読まずにはいられない人には響く物語でした。

 

目が不自由なよう子とバツイチで悩める本間のロマンチックだけど、どこかシビアな現実が心に刻まれる。

よう子は見えない苦しみと母との関係に悩み、本間は最愛の息子と離れ離れにならないといけない辛さを抱えている。

そんな2人が様々な人を介して、遠くから近づいていく様子はグッときました。

悩みながらも前に進んでいくことで素晴らしい読後感でした。

 

「人は食べたものと、読んだものでできている」──書評家のよう子は、神楽坂に盲導犬のアンと暮らしている。
出版社の担当の希子と隔週の木曜日に、打ち合わせを兼ねたランチをするのが楽しみだ。
一方、神楽坂で〈古書Slope〉を切り盛りするバツイチの本間は、五歳になる息子のふうちゃんと、週に一度会えるのが木曜日だ。
書物への深い愛と強い信頼、それを共有できる大切な人。本に込められた〝想い〟を伝えていく──。
(解説・新川帆立)

神様の思惑

神様の思惑 (講談社文庫)

 

とても心ほぐれる短編集です。

家族と上手く向き合えない人を掘り下げていて、胸の奥に眠っていたしこりをほぐしていくような短編集でした。

家族それぞれ事情があり、割り切れない時もある。しかし、時間が経てば見方が変わり、分かり合える時が来るのだと教えられる。

子供の頃と大人になってからは考え方や見る角度が変わっていくので、時間がどうにかしてくれるというのはあると思います。

 

家族との距離が取れなくて、誤解することもあるだろうけど、しっかり向き合っていけば良いこともあるのだと気付かされます。

 

各話読みやすくて、非常に満足する1冊でした。

 

読み終えるとほっこりする1冊でした。

 

技巧ミステリの名手による、深い家族愛をめぐる五つの物語。

遊園地で休憩中の若い父親は、清掃員の男性に頼まれ、迷子の親捜しをする。
そこで、清掃員がかつて近所の公園で寝泊まりしていた「カミさん」だったことに気づく。
彼は少年時代、「カミさん」に自分を『殺してくれ』と頼んだことを思い出す(表題作「神様の思惑」)。
隠された愛が涙を誘うミステリ短編集(『家族パズル』改題)。

また君と出会う未来のために

また君と出会う未来のために (集英社オレンジ文庫)

 

前作のどこよりも遠い場所にいる君への姉妹作で、前作を読んでなくとも楽しめるが、読んでいた方がより楽しめる構成だったかな。わりと主人公に絡むポジションにいたので。

前作では迷える少年だった和希がすっかり成長していて、頼もしくなっているのを見れて良かったです。七緒のことも忘れてはいない。和希の周りの人達も出番があって、感慨深いものがありました。

単巻完結モノの先を読んでるようで、幸せでした。

 

今作は人生のどん底にいた主人公・爽太が自身の心を救った女性と障害があっても会いたいと行動するのに胸を熱くさせられます。最後まで夢中になれました。

今回も時空の流れに翻弄されながらも、幸せを手繰り寄せていく展開に目が潤いました。

純粋な想いは良いですね。

 

 

仙台の大学に通う爽太には秘密があった。九歳のころに海で溺れ、遠い未来―2070年の世界へと時を超えて迷い込んだことがあるのだ。現代に戻ったあとも、未来で助けてくれた女性を忘れられずにいたが、アルバイトがきっかけで知り合った八宮和希という青年に「おれは過去から来た人に会ったことがある」と告げられて…?出会いと願いを描いた感動作!

後宮の烏 2

後宮の烏2 (集英社オレンジ文庫)

 

胸を圧倒させられる真実にやられました。

1巻で寿雪と高峻を知ったつもりだったのを痛感させられました。

寿雪、高峻、共に生きながらに業を背負わされる人生で、厳しい試練が続きそうです。

2人の出自の背景は根深く、重たい。だからこそ、そんな2人が徐々に歩み寄っていく様子が見たくなるのだなと。

互いに自分のことをないがしろにする癖があるので、関わり合うことで良い変化をしているのが伝わってくるのは安心材料です。

 

今巻は報われないエピソードが多めで、苦しくなる。しかし、読む手が止まらない魅力がありました。寿雪達の掘り下げがあるから、全体的に重めの物語だったのかな。

願えば報われるだけの一辺倒な物語運びをするのがよく分かりました。

 

次巻以降も楽しみです。

 

後宮で生きながら帝のお渡りがなく、また、けして帝にひざまずくことのない特別な妃・烏妃。当代の烏妃として生きる寿雪は、先代の言いつけに背き、侍女を傍に置いたことに深く戸惑っていた。ある夜、後宮で起きた凄惨な事件は、寿雪が知る由もなかった驚愕の真実をもたらす、が―。烏妃をしばる烏漣娘娘とは何か?烏漣娘娘がおそれる「梟」とは一体誰なのか?