羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

チームⅢ 堂場瞬一スポーツ小説コレクション

チームⅢ 堂場瞬一スポーツ小説コレクション (実業之日本社文庫)

スポーツ小説でエリートランナーの引退後を描くのは珍しいかな。

山城が現役引退して、実家で働いているところにコーチの依頼が来るという流れ。燻っているランナーの尻叩きとして期待されるわけだが、まぁ初めから引き受けないよな笑 

浦達が色々画策していても上手くいかないのは仕方ない。どうなるか気になりましたが、決め手となったことは笑ってしまいましたがこれしかないかな。重たいメッセージでもあったし納得。

 

山城がコーチとして悩むのは新鮮でしたが、彼の中で大きな変化が生まれていて良かった。山城のコーチを受けた日向がいかにも現代ランナーみたいな気質で、山城とは違うタイプのランナーだからこそ指導が上手く噛み合ったのかな。

 

殻を破るきっかけは人それぞれか。

 

男子マラソンの若きエース日向誠がスランプに陥った。オリンピックで彼にメダルを獲らせたい陸連は、日本最高記録を持つ山城悟を専属コーチにと目論む。引退して関係者と交わりを絶つ山城の説得は難航するが、箱根駅伝“学連選抜”で共に走った浦大地らの画策が奏功し、就任を受諾。孤高の天才による規格外の特訓が始まった……大人気シリーズ待望の第三弾!

チームⅡ

チーム2 (実業之日本社文庫)

ヒートの続き。甲本とのデッドヒートを制した山城に待っていたのは故障だった。天才、才能溢れる彼だからこそ無縁だったリハビリや調整に苦労するのは無理ない。走れて当たり前だった生活から一変して、故障に苛まれ苦悩する様子は歯痒い。そんな時に所属チームも解散、走れない。引退が頭をチラついてくるのが辛い。そこに、チームIで登場していた浦や周りの人達が山城を支えていくのが描かれている。

なんだかんだで山城を支えたくなる気持ちは正直無理矢理なところはありますが、これ読んだら山城を嫌いになれそうにない。

意外と指導者に向いてるのは驚きました。

 

 

箱根を共に走った男たちが集結!
疾走感満点の傑作駅伝小説

ベルリンマラソン優勝、マラソン日本記録を持ち「陸上界の至宝」といわれる山城悟は、
怪我と所属チームの解散危機で、引退の瀬戸際にいた。
傲慢な性格の山城に、かつて箱根駅伝を学連選抜チームとして共に走った仲間たちが
サポートを申し出るが、果たして彼は再起できるのか?
熱き男たちの友情、葛藤、そして手に汗握る駅伝レースの行方は?
スポーツ小説の金字塔『チーム』7年後の物語。

「『キング』『チーム』『ヒート』と連なる、
私のマラソン・駅伝小説の現時点での到達点です」――著者

解説/麻木久仁子

ヒート

ヒート (実業之日本社文庫)

厚い一冊だが、マラソンが好きな人は是非読んで欲しいと思う作品でした。

世界最高記録を作るためのマラソン大会を開く。そのためには手段を選ばないのはいっそ清々しさがある。まさか、記録を出してもらうために走りやすい道や風除け、タイム表示など過保護とも言える準備をしていて、政治的背景や事情がプンプンです。

だからこそ、アスリート目線だと傲慢キャラだけど記録に向き合う山城の嫌がる気持ちや苛立ちも少し分かる。これは賛否分かれるなぁ。

山城の引き立て役として利用される、燻っている現役ランナーの甲本の不憫さよ。

記録が伸びない葛藤や苦しみ、恩師への引け目、辛過ぎる。しかし、そこから自分のペースメーカーの役割を必死なこなして自分のために走る様子に惹きつけられました。努力家は応援したくなるんだよ。泣

そして、エピローグが気になり過ぎる!

 

最後に勝つのは誰なのか――!?
公務員の苦闘と、白熱の42.195km

日本男子マラソンの長期低迷傾向に歯止めをかけるため新設された「東海道ラソン」。
神奈川県知事の号令のもと、県庁職員の音無太志は、日本陸上界の至宝・山城悟の
ペースメーカーとして、孤独なランナー・甲本剛に白羽の矢を立てる。
甲本はかつてハーフマラソン日本記録を持っていた「30キロまでの男」。
所属していた実業団が解散し、母校のグラウンドを借りて練習する身だ。
ペースメーカーになることを渋る甲本に、音無は破格の条件を提示するが――。

果たして世界最高記録達成はなるのか。数多の人間の欲望と情熱を乗せたレースは、まさかの展開に――。
箱根駅伝を走る学連選抜チームの激走を描いたベストセラー・『チーム』の“その先"の物語。
疾走感あふれるレース描写と、男たちの人間ドラマに一気読み必至。[解説/ 池上冬樹]

同じ星の下に

同じ星の下に (幻冬舎単行本)

誘拐作は様々あるが、今作は優しさと厳しさの塩梅が上手かったです。だから最後まで真相を知りたくて仕方なかった。

優しい誘拐を描いていて、ある程度先が読めてしまうのが難点だが誘拐犯と虐待されていた人質の関係は安らぎの時間だったのは良かったです。ぎこちない関係から少しずつ発展していく過程が尊かった。

だからこそ、家にいるよりも、誘拐されていた方がマシというのは悲しい。

その子を救う為の物語で、誘拐犯の為でもあった。

 

誘拐犯の思惑が明かされてからはしんみりした気持ちになったが、救いのある終わりでホッとしました。

 

同級生はみな幸せそうだ。なのになぜ、わたしだけが、これほど不幸な目に遭い続けるのだろう。

12月の北海道。中学2年の少女・沙耶(さや)は、自分を日常的に虐待をしてきた両親が、今夜、海で自分の殺害を計画していることを知っていた。ところが下校途中「児童相談所の職員」を名乗る男の車に乗せられ、そのまま誘拐・監禁される。監禁下の交流から、ふと彼女は、男が、じつは「本当の父親」ではないかと疑い始める。一方、男は身代金2000万円が目的の営利誘拐であると犯行声明を北海道警察に送りつけ、粛々と計画を進める。男は一体、誰で、目的は何なのか?

ミナヅキトウカの思考実験

ミナヅキトウカの思考実験

気になる作品だったので、献本で読ませて頂き助かりました。

題材が思考実験、ミステリ、オカルトとあって、各話の謎の始まりから解決まで興味が尽きることがなかった。

マクスウェルの悪魔シュレディンガーの猫中国語の部屋、スワンプマン、などなど小説を読んでいたら知ってる単語が出てきて、ワクワクしました。

オカルトっぽい事件を追っていくうちに現実的な解決に落とし込む理屈、推理が魅力的でした。

 

登場人物、特に主要人物の造形や主義がありがちかなと思ったが、そこは若さゆえと捉えられたら楽しめるかと。裕人の善性、透華のオカルト好きは噛み合わないかもしれないが、関係が続いていくうちに変化が起きていくのか気になります。

シリーズ化したら良いですね。

 

第1回黒猫ミステリー賞受賞作!

水崎大学数学科に通う神前裕人は、ひょんなことから殺人事件の現場に遭遇。被疑者として警察署に連行されてしまう。嫌疑をかけられたままの状態に不安を感じた裕人は、刑事の促しに応じる形で、自身が通う大学の怪異研究会に足を運ぶことに。そこでオカルトマニアの水無月透華との出会いを果たした裕人の日常は、その日を境に一変。透華に振り回されながら、さまざまな事件の現場に足を踏み入れていくことに…。

街中で突如燃える女、棺の内側から響く物音、目だけくり抜かれた死体…
怪異の仕業とも取れる事件の真相を、「思考実験」をもとに導き出す超常×解決ミステリー!

可哀想な蠅

可哀想な蠅

あらすじから覚悟していたが、容赦無く人の悪性を暴いていました。

読む前はちょっと薄いなと思っていたが、とんでもない。これ以上暴かれたら身が保たないですよ…

 

読んでいて言葉に斬りつけられているみたいだった。

表題作から始まる短編集。その表題作からして重たい現実を突きつけてくる。関わる価値がない者に関心を払わないことへの問いかけとして発見になりました。蝿は無視してもいけないとか厄介だから排除か無関心か支えるか。難しいけど、答えを見つけないとね。

 

他の話も呑気に生きてるだけでは見逃してしまう気持ちを大事にしていて、読み終えた後の余韻が苦くても心に残りました。

子供から大人になるにつれて、変わっていく心の在り方に考えさせられました。

見方や捉え方が変わるのは成長するというか何というか。

1話だけ、ホッコリする姉妹の話がなかったら、窒息するところでした。危ない危ない。

 

これは覚悟して読むべし。

 

SNSで、会社で、家の中で、今日も煩わしい音がする。
どこからか湧いてくる目障りな存在、蓋をしたい感情。
――それらを消していけば、世界は今より美しくなるのだろうか。

グロテスクで一筋縄ではいかない生の一時を鮮烈に切り取った、傑作短編集。

近所で目撃した光景をツイートしたのをきっかけに絡んでくるようになった、粘着質なアカウント。芽衣子は、誰からも相手にされない可哀想な彼を、スマホの中で「飼う」ことに決めるが……。
日常の裏で誰もが「見て見ぬふり」をしているものを突き付ける、破壊力抜群のブラック・エンターテインメント。

盤上に君はもういない

盤上に君はもういない【電子特典付き】 (角川文庫)

読み終えて、タイトルの意味に胸打たれる。最後に気付かされるのがまた良い。

女性であること、病気であること、様々な困難にあっても棋士として諦めない不屈な女性の愛の物語でした。壁に当たっても目標に向かって足を止めない者達の生き様が見事でした。

 

終盤まで見えない謎に引っ張るなと思いましたが、真相が明かされてみると、これは仕方なかったのだと納得するしかない。関係者が事実を漏らさないのも無理ない。

 

様々な棋士、記者の在り方に刺激を貰えました。

自分にとって大事なものを諦めない意思が必要だ。

 

あなたがいたから、強くなれた。ほとばしる情熱に一気読み!

史上初となる女性棋士の座を賭けた対局が決定した。運命の一戦に臨むのは、将棋の名門一家で育った天才高校生・諏訪飛鳥と、体が弱くプロになるための年齢制限が迫る千桜夕妃。激闘の末に決まった勝者はしかし、デビュー戦を前に姿を消した。観戦記者の佐竹亜弓は彼女の行方を追うが……。

「もう一度、あなたと指したい」。互いに切磋琢磨する若き棋士たちの熱い戦いと、将棋で結ばれる絆に胸を打たれる、愛と情熱の物語。