羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

エヴァーグリーン・ゲーム

エヴァーグリーン・ゲーム

楽しみにしていましたが、想像以上に登場人物達が人生を賭けていて夢中になりました。

病気、身体的ハンデ、家庭の事情、様々な困難に抗う人達がチェスを通して生き様を見せてくれて勇気が貰える1冊になってました。

それぞれの苦しみが描かれていて胸が痛むからこそ、逆境に負けずに歯を食いしばる根気強さが光っていました。

 

ただ、死んだように生きるのではなく、自分の意思で夢中になるものを掴んで離さない姿勢は素晴らしかったです。

 

登場人物の繋がりや関わり方もグッと胸が熱くなるものがありました。

 

自分らしく生きるっていうのは簡単ではないが、生きようともがくのは美しい。

 

世界有数の頭脳スポーツであるチェスと出会い、その面白さに魅入られた4人の若者たち。
64マスの盤上で、命を懸けた闘いが繰り広げられる――!

「勝つために治せよ、絶対に」
小学生の透は、難病で入院生活を送っており、行きたかった遠足はもちろん、学校にも行けず癇癪を起してしまう。そんなとき、小児病棟でチェスに没頭する輝と出会う――。
<年齢より才能より、大事なものがある。もうわかってるだろ?>
チェス部の実力者である高校生の晴紀だが、マイナー競技ゆえにプロを目指すかどうか悩んでいた。ある日、部長のルイに誘われた合コンで、昔好きだった女の子と再会し……?
「人生を賭けて、ママに復讐してやろう。」
全盲の少女・冴理は、母からピアノのレッスンを強要される日々。しかし盲学校の保健室の先生に偶然すすめられたチェスにハマってしまい――。
「俺はただ、チェスを指すこの一瞬のために、生きている。」
天涯孤独の釣崎は、少年院を出たのち単身アメリカへわたる。マフィアのドンとチェスの勝負することになり……!?

そして、彼らは己の全てをかけて、チェスプレイヤー日本一を決めるチェスワングランプリに挑むことに。
チェスと人生がドラマティックに交錯する、熱い感動のエンターテイメント作!

厳冬之棺

厳冬之棺 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

表紙、タイトルから面白そうな気配がぷんぷんで読みました。

非常に魅力的なミステリ作品で、今後の作品が楽しみな作家さんですね。密室の不可解さ、序盤から暗示される怪しげな風習、真相が気になる謎でした。

また、登場する探偵が漫画家、助手が声優、2人が魅力的な人物になっていて、より物語に入りやすくなってました。2人が組むきっかけがメディアミックスというのは斬新だなと笑

それぞれの背景が描かれていたのは良かった。

 

重たい事件背景でしたが、きちんと伏線が張られていて、結末に納得しかなかったです。

解決パートで明かされる事件の裏側に驚きがあり、最後まで惹かれました。ミステリ、密室好きにおすすめです。

 

シリーズ化しそうで、楽しみです。

 

上海郊外の湖畔に建つ陸家の館で殺人事件が起こる。現場は大雨で水没した地下室で完全な密室だった! 天才漫画家探偵・安縝(あんしん)登場

コーチ

コーチ (創元推理文庫)

人に仕事を教えることは難しい。様々な性格、向き不向きがあるから型通りの教えになってはならない。

今作は能力があるが、燻っている刑事の背中を押すコーチ的存在である向井が非常に魅力的。意味深で掴みどころがないが教えられた人からすると救いの声になっているのが非常に良い。

殻を破るきっかけを見つけられた時の安心感は素晴らしい。

 

だからこそ、背中を押され、花開いた刑事達が向井のために動く展開は人情味があって良かった。人を導くのは簡単ではない。

 

 

期待されつつ伸び悩む若手刑事たちの元に、コーチとして本部から派遣される謎の男・向井。捜査中の失態に悩む刑事、有名俳優の取り調べに苦戦する刑事、尾行が苦手な刑事。彼らに適切な助言を与える向井はなぜ刑事課ではなく人事課の所属なのか? 成長し所轄署から本部に戻った三人が直面した事件と向井の過去が交錯、三人は彼の過去を探り始める。傑作警察小説、待望の文庫化。解説=古山裕樹

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 X 怪談一夜草紙の謎

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 X 怪談一夜草紙の謎 (角川文庫)

李奈が売れっ子作家みたいな扱いを受けて戸惑っている様子は現実でもあるのかなと想像してしまう。だけど李奈が地に足つけた歩みをしているから揺らぐ心配がないのは非常に安心で、応援したくなります。地道にめげずに小説と向き合っていたから、簡単に天狗にならないのは読者には分かっている。

 

今回は親子関係を突いていて、胸糞悪い裏事情がありつつ、李奈の成長もあって読後感が素晴らしかった。話し合って、溝を埋めていくのは必要なことだなと。李奈は作家としてだけでなく人としても大人に近づいているのが分かる。

 

また、シリーズのメタ要素には驚いた。松岡圭祐ってそういうこと!?と衝撃でした。

笑ったのは結衣の名前が出るタイミング笑

 

ますます好きなシリーズになってきました。

 

早くも10巻! 人気沸騰の超シリーズ!

十六夜月』がヒットしたことで作家としてのステージが上がった李奈。三十階建て駅前マンションに引っ越し、気持ちを新たに次作に取り組む中、担当編集者から妙な頼み事をされる。ベテラン作家・丹賀源太郎が開いていた文学塾の閉塾に伴って催される宴に出席して欲しいというのだ。しかも依頼主は極端かつ急進的で差別主義的な思想を前面に出した長編小説がベストセラーになっている源太郎の息子だという。2人に面識もなく、塾にも関係のない李奈は戸惑うものの渋々参加を了承する。果たして開かれた宴席は、奇妙なものだった……。

手のひらの音符

手のひらの音符(新潮文庫)

あぁ、心に届く台詞が散りばめられていて、読み終わるのが非常に惜しい気持ちになりました。好きな仕事で誇りを持っていた会社の事業が撤退することになり、途方にくれる。

人は立ち止まる機会がないと、いつまでも日常は続くものだと思ってしまうものなのか。

そんな時に恩師が病気になったという連絡が届き、追想していくように昔を振り返る。恩師との関係、近所付き合い、親娘関係、色々ある。

 

自分の仕事だけでなく人生そのものを描いていて、山あり谷ありの人生、大切な人、感情は忘れないようにしようと思いました。

 

 

人はいつだって、知らない間に一生のさよならをしている。

45歳、独身、もうすぐ無職。人生の岐路に立ったとき、〈もう一度会いたい人〉を思い出した――。気づけば涙が止まらない長編小説。

デザイナーの水樹は、自社が服飾業から撤退することを知らされる。45歳独身、何より愛してきた仕事なのに……。途方に暮れる水樹のもとに中高の同級生・憲吾から、恩師の入院を知らせる電話が。お見舞いへと帰省する最中、懐かしい記憶が甦る。幼馴染の三兄弟、とりわけ、思い合っていた信也のこと。〈あの頃〉が、水樹に新たな力を与えてくれる――。人生に迷うすべての人に贈る物語!

法医昆虫学捜査官

法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)

虫の声なき声を拾うためならなんでもする法医昆虫学者の赤堀の無鉄砲さと思いやりが魅力的でした。

難事件を解く鍵は昆虫学にあり。警察の上層部の思いつきで捜査に法医昆虫学者加えることに。刑事・岩楯は最初は困惑するが、捜査が進むにつれて新たな視点からの発見があり、最初とは違った事件の見え方が出来るのが面白かったです。

死体に潜むうじ虫から犯人に辿り着く過程が非常に興味深かったです。

 

単純な殺人かと思ったら、入り組んだ事情が潜んでいて、徐々に真相に近づいていくスリルがありました。バディものとしても良いです。

 

赤堀、岩楯のバディ良いぞ。

シリーズものなので追いかけていきます。

 

コミカルさとシリアスな事実に振り回されて心地良い…

 

全焼したアパートから1体の焼死体が発見され、放火殺人事件として捜査が開始された。遺体は焼け焦げ炭化して、解剖に回されることに。その過程で、意外な事実が判明する。被害者の腹腔から大量の蠅の幼虫が発見されたのだ。しかも一部は生きた状態で。混乱する現場の署員たちの間に、さらに衝撃が走る。手がかりに「虫」が発見されたせいか、法医昆虫学が捜査に導入されることになる。法医昆虫学はアメリカでは導入済みだが、日本では始めての試み。赤堀涼子という学者が早速紹介され、一課の岩楯警部補と鰐川は昆虫学の力を存分に知らされるのだった。蠅の幼虫は赤堀に何を語ったのか!

ベイビー、グッドモーニング

ベイビー、グッドモーニング (角川文庫)

たまに読み返したくなる小説です。

読むのが3度目ですが、それでも作中の言葉や登場人物の揺らぎを噛み締めたくなります。

何度読んでも良いものは良い。

余命間近の人達とフランクな死神の問答や関わり方が魅力的です。ユニクロの服着たり、携帯料金払う死神なんて聞いたことないです笑

 

また、作品を通して死に際に諦めて死ぬのではなく、生を噛み締めて死ぬ美学を感じました。本心と向き合わずに死ぬのを止めて、しっかり自分の気持ちと向き合ってから逝くのは優しさなのかもしれない。

 

最後の落ちは上手くまとめていて、繋がりを感じるもので暖かい気持ちになりました。

 

死に際に後悔しない生き方をしたいなと。

 

河野裕が描く、すべてのこの世界に生まれてきた人々のためのファンタジー

アルバイトに励む死神が出会ったのは、綺麗に死にたいと言う嘘つきな少年、物語の中で自殺した小説家、世界を「良い人」で埋め尽くす計画を立てた青年、それから年老いた誇り高き道化師。四つの魂の物語。