羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

珈琲店タレーランの事件簿 7 悲しみの底に角砂糖を沈めて

珈琲店タレーランの事件簿 7 悲しみの底に角砂糖を沈めて (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

久しぶりのタレーランの新刊。

今年で10週年というのは早いなぁと。

自分は1巻の時から追ってないですが、めでたいですね。

今回は短編集で美星さんが安楽椅子探偵の立ち位置なので今までと違った感覚がしました。

静観の立ち位置から、美星さんが謎を抱えているお客様に推理を話すという様美式は悪くないです。

謎に対する考え方で美星さんの感情的になっていたのは印象的でした。

 

1話1話の登場人物と抱えている問題と謎が結びついていて、各話夢中になって読み切ることが出来ました。

謎の背景にある事情は様々で、その人その人が持っている悩みが繊細に描かれているので、謎が解けた後も登場人物の先行きが気になる、良い余韻が残る短編集でした。

 

美星さんの過去話は意外でした。高校生の時の美星さんは今とは違うのは当たり前ですが、新鮮でした。

もっと読みたいとも思いました。

美星さんとアオヤマの絡みが少ないのは意見が分かれそうだなと。

美星さんだけでも物語が魅力的に感じましたが、寂しい気もしました。

 

次巻は長編になりそうなので期待が膨らみます。

 

1巻から読み返したくなりました。

 

全国高校ビブリオバトルの決勝大会にて、プレゼンの順番決めの抽選でトラブルが発生。くじに細工をしたのはいったい誰か。
話を聞いていたバリスタの口から、思わぬ真実が告げられる。(「ビブリオバトルの波乱」)。
ほか、ハワイ旅行をめぐるオカルト譚「ハネムーンの悲劇」、幼少期の何気ない思い出に隠された秘密が暴かれる「ママとかくれんぼ」など、ショート・ショートも含む全7話を収録。

《純喫茶タレーラン》に持ち込まれる7つの謎
ビブリオバトルの波乱」…………抽選箱に細工をしたのはいったい誰?
「歌声は響かない」…………………美星バリスタ、高校時代の推理
「ハネムーンの悲劇」………………行けなかった新婚旅行のお土産の謎
「フレンチプレスといくつかの噓」…別れ話をするカップルそれぞれの秘密
「ママとかくれんぼ」………………幼い頃の思い出に隠された真実
「拒絶しないで」……………………常連客が出した突然の指示の理由とは
「ブルボンポワントゥの奇跡」……あるトラウマを抱えた男性に不審な出来事が…

卒業

卒業 (講談社文庫)

 

初めて東野圭吾先生の作品を読みました。

青春、学生らしい物語に期待が膨らみましたが、ビターな読み応えでした。

明るい部分はあるが、それ以上に事件の起きたきっかけや理由、犯行動機に関して心が重たくなる背景がありました。

事件が起きた理由や動機に関しては読んでる途中でなんとなく見えましたが、全貌が明らかになると切ない哀愁漂う感覚が残りました。

 

青春、スポーツ、推理、人の抱えている感情。様々な要素が絡み合っていて、読み応えがありました。

それぞれの要素を上手く使っていて、読み終えて振り返るとよく練られていたなと。

 

主人公・加賀の推理するのは魅力でしたが、まだ存在感が薄いかなと。

これから、成長していくのを追いかけたくなりました。

 

 

7人の大学4年生が秋を迎え、就職、恋愛に忙しい季節。
ある日、祥子が自室で死んだ。
部屋は密室、自殺か、他殺か?
心やさしき大学生名探偵・加賀恭一郎は、祥子が残した日記を手掛りに死の謎を追求する。
しかし、第2の事件はさらに異常なものだった。
茶道の作法の中に秘められた殺人ゲームの真相は!?
加賀恭一郎シリーズ

三月は深き紅の淵を 文庫

三月は深き紅の淵を (講談社文庫)

独特の雰囲気を持った作品でした。

三月は深き紅の淵をという誰が書いたのか、なぜ回収したのか分からない小説を鍵にした特殊な物語でした。

各話統一されることなく、三月は深き紅の淵をが存在していて1.2話読んだ時は軽く驚きました。一体、どういうことだろうと考えながら読み進めました。

老人達が若者を試したり、編集者が作者を探したり、時には女子の複雑な胸中もあり、小説の中身もあったり、話を読み進めていくのが旅のように感じました。

読み進めていくのがあれよあれよという間に展開していくので、理解していくのに頭を使う場面もありました。

 

シリーズモノの前日譚みたいな立ち位置らしいのでシリーズも読もうかなと。

 

 

すべてが謎めいた1冊の本はどこに?

鮫島巧一は趣味が読書という理由で、会社の会長の別宅に2泊3日の招待を受けた。彼を待ち受けていた好事家たちから聞かされたのは、その屋敷内にあるはずだが、10年以上探しても見つからない稀覯本(きこうぼん)「三月は深き紅の淵を」の話。たった1人にたった1晩だけ貸すことが許された本をめぐる珠玉のミステリー。

放課後レシピで謎解きを うつむきがちな探偵と駆け抜ける少女の秘密

放課後レシピで謎解きを うつむきがちな探偵と駆け抜ける少女の秘密 (集英社文庫)

 

青春ミステリーというので読みましたが、面白かった。

まず、主人公・結と友人・夏希の関係性が堪らん。内気な結は推理力はあるが前に出たがらない。夏希は感情のままに直進する。2人が互いの苦手を補い合って、自分ではなく相手の為に動いていく様子に胸を打たれます。

 

結があがり症だが優しい子で、その優しさが伝染していくように関わっていく子達も変わっていく様子に優しさが詰まっていて好きでした。

1話ごとのスイーツ、食べ物に絡めた不思議な事件が起きて、事件の関係者が結、夏希と接することで事件後も関係を築いていくのは青春模様として良いなぁと。

事件の切り口がお菓子、食材の成分などを使ったもので、読んでいて考えたくなるものでした。また解決して振り返ってみてもミステリーとして読み応えがある謎と事件背景でした。

 

青春、ミステリー、だけでなく障害という現実を描いていて突きつけられる事もあり、普通という多数派の当たり前に適応するのが大変な人もいるのだと考えるきっかけになります。

障害を持っていても、生きていく希望を持たせてくれるメッセージは暖かかったです。

 

序盤から終盤にかけての結と夏希の変化が楽しめました。

 

 

凸凹女子高生コンビが事件を解決!
内気で人見知りの結×猪突猛進でトラブル多発の夏希
苦くて甘い、極上の料理×青春ミステリー いきなり文庫!

猪突猛進でトラブルを起こしがちな夏希は、高二になって調理部へ転部する。同じ時期に入部してきたのは、内気なクラスメイトの結。正反対の二人は部活で一緒にパンを焼くことに。でも、なぜか夏希たちの作ったパンだけが膨らまない! 原因を究明しようと奔走するうち、お互いのことを知っていく二人。やがて周囲との関係も変化して……。少女たちの友情がきらめく、極上の料理×青春ミステリー。

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 III クローズド・サークル

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 III クローズド・サークル (角川文庫)

 

今回も面白かった。

文豪要素は薄めでヒットを飛ばした作家とそうでない作家の扱いの違いや作家によって変わる担当編集者の態度だったりを描いていて、読んでいて胸が痛むがこれが現実なのかと。

そこで李奈は凹んだりしながらも小説を書けば良いという方向へシフト出来るのが強みだよな。

新刊で似たようなジャンルが多く出るのは利益を生むからかもしれないが、作家の個性を殺してしまわないように祈るばかりである。

 

ミステリーとして、クローズドサークルという副題通り、孤島に招待されて起こる事件は読者を誘導するような展開で、まんまと騙されました。

様々な推理はしたが、予想してなかった角度から攻められました。

櫻木沙友理という人気作家が鍵を握っているが、彼女の姿が見えた時はもう作者の狙い通り。現れない櫻木沙友理という存在が上手く機能していて、見事に作者の手のひらのうえで転がされました。

様々な試験を得て、李奈の逞しさを感じられたのは良かったです。

 

作家モノ、ミステリー、李奈の葛藤、存分に楽しめました。

次巻の刊行が既に決まっていたりと、刊行スケジュールが短いスパンでありながら面白さが落ちないのは見事としか。

 

無人島に9人の小説家――

彗星のごとく出現した作家、櫻木沙友理。刊行された小説2作は、いずれも100万部を突破、日本じゅうがブームに沸いた。彼女を発掘した出版社が新人作家の募集を始めることを知ったラノベ作家の杉浦李奈は、親しい同業者の那覇優佳とともに選考に参加。晴れて合格となった2人は、祝賀会を兼ねた説明会のために瀬戸内海にある離島に招かれるが……。そこはかの有名な海外推理小説の舞台のような、“絶海の孤島”だった。

夏のレプリカ

夏のレプリカ REPLACEABLE SUMMER S&Mシリーズ (講談社文庫)

 

前巻の裏側の物語。萌絵の友人、杜萌にスポットが当たっていて、彼女の悩みには揺さぶられるものがありました。

萌絵も犀川先生に見せる顔ではなく、友人に見せる顔があり、それは珍しく見えました。

 

読み終えて、タイトルの意味と表紙の意味に連動して気づけて、もう駄目だ。

精神がぼこぼこだよ…

辛いし、切ない。

よくも思いついたなと。

トリックというよりは萌絵と杜萌の心と心がぶつかり合うチェス対決の末にたどり着いた景色が美し過ぎた。

事件の真相に関しては明かされてから込み上げてくる感情に戸惑いながらも、これが真実かと受け入れていくのが大変でした。こうきたか。

 

嘘だと言いたくなるが、犀川先生の言葉が目を覚ましてくれる。

 

謎は少し残っているが、全てが明らかになる必要は無いのだなと。

 

 

封印された夏の日の記憶!
眩い夏、不可解な誘拐事件、蘇る過去
真実は、偶数章だけで明かされる。

T大学大学院生の簑沢杜萌(みのさわともえ)は、夏休みに帰省した実家で仮面の誘拐者に捕らえられた。杜萌も別の場所に拉致されていた家族も無事だったが、実家にいたはずの兄だけが、どこかへ消えてしまった。眩い光、朦朧(もうろう)とする意識、夏の日に起こった事件に隠された過去とは?『幻惑と死と使途』と同時期に起こった事件を描く。

幻惑の死と使途

幻惑の死と使途 ILLUSION ACTS LIKE MAGIC S&Mシリーズ (講談社文庫)

 

マジシャンのマジック中に起きた不可思議な死のトリックを暴くために動く萌絵と達観している犀川先生。

萌絵の現実の事件への食いつき方は危ういを通り越している感じ。何度も犀川先生に助けられていて、鈍ってきているのか。

警察に関しても、萌絵に振り回されて大分情けない。

誰か叱れる人がいないのかと思うが、犀川先生がなぁ…

 

事件の真相に関しては複雑な仕掛けを疑ってしまう心理を突いたもので、まさにしてやられました。

また、名前、名誉についての言及にはなるほどなと唸りました。

名前はあくまで、名前で価値を表す。

犯罪者や成功者のように価値が動くと名前の意味合いも変わってくるのだなと。

動機に関しては追求しないのが今シリーズの特徴だが、理解よりも納得を優先してしまうのを忌避する感じですね。

 

今回は不思議な仕掛けが施されていて、奇数章しか収録されていないので、ぶつ切り感がありした。

次巻の偶数章でどのような仕掛けがあったのか楽しみです。

 

天才マジシャン、死してなお奇跡を呼ぶ――
事件は、奇数章だけで描かれる。

「諸君が、一度でも私の名を呼べば、どんな密室からも抜け出してみせよう」いかなる状況からも奇跡の脱出を果たす天才奇術師・有里匠幻(ありさとしょうげん)が衆人環視のショーの最中に殺された。しかも遺体は、霊柩車から消失。これは匠幻最後の脱出か?幾重にも重なる謎に秘められた真実を犀川・西之園の理系師弟が解明する。