羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

むしめづる姫宮さん3

むしめづる姫宮さん (3) (ガガガ文庫 て 2-13)

 

青春の光を見せてくれたこのシリーズも最終巻か。

虫という題材は地味だったのかなぁ。

思春期の子供達の悩みや気持ちの揺らぎを虫の特性と重ねていき、最後に自分の本性と向き合っていくのが好きだったので、もっと読みたかったです。

また、羽汰が様々な問題を抱えている人と関わっていくことで、自分の小ささを自覚して縮こまっていく気持ちはその人にしか分からないものだ。周りが普通に出来ることが出来ないことが続くと踏み出しづらくなるよね。

だが、1人ではない。

焦らず待ってくれる先生や凪や瀬川がいる。また、関わってきた人もいる。

上手く生きられなくても上手く生きようともがくと決意した羽汰の決断は見事でした。

 

羽汰と凪は互いに似たもの同士だから一緒にいるのではなく、必要だと思っているからそばにいる。ときにはすれ違うが良い関係だと思いました。

 

変わっていくこと、変わらないこと、自分が後悔しない生き方が大事なんだな。

迷いも受け止めて進んでいく羽汰と凪のこれからが幸せでありますように。

 

(あらすじ)

醜い自分、気高き自分。その狭間で。 

天文部という居場所を見つけ、変わっていく凪。 
それを見てもどかしい思いを抱える羽汰は美術部の門を叩く。 



だが、自分にとって美術が本当にやりたいことなのか。 
自分にできることなんて、この世に一つでもあるのだろうか。 
羽汰にはそれが分からない。 



かつてなりたかった自分。いつしか失われてしまった自信。今の自分。 
もうその距離は、どうしようもなく離れてしまって。 



体の色が変わってしまう美術部部長。 
とある劇に固執する二人の演劇部員。 
そして、どこかへ消えゆく姫宮凪――。 



羽汰に憑いたメガネウラは、羽汰の何の想いに引き寄せられたのか。 
逃げて、逃げて、逃げたその先に答えなんてものがあるのだろうか。 



理想と現実の狭間に揺れる、ヒトと虫の魂がおりなす、とある青春の物語。 

 

沖晴くんの涙を殺して

沖晴くんの涙を殺して

表紙やタイトル、帯の推薦文などを見るだけで読みたくなる吸引力がありました。

売り出し方としては最高でした。

もちろん中身も素晴らしいです。

震災の影響で家族を失って、そのときに死神と取引をして喜び以外の感情を失ってしまった主人公の沖晴。

傷が治る、記憶力、抜群の運動神経、など感情を失って代わりに力を得て、喜びという感情しか見せないで生活をしていたが、余命1年を宣告されている音楽教師京香と出会っていくことで、喜び以外の感情をゆっくり取り戻していく。

確かな現実と不思議な能力が噛み合っていていました。

常に笑っているだけでなく、泣いたり怒ったり怖かったり、人として持っているものを改めて取り戻していく沖晴を見ていると、人はコントロールのいかない感情というのを持っているのがどれだけありがたいことなのかが分かりました。

沖晴が京香と過ごしいき、様々な体験を通して大切なものを受け取っていけたのは京香が寄り添ってくれたからで、京香の生き方や考え方も素晴らしくて、2人が過ごした日々を読むだけで幸せになれそうでした。

京香の死は決して無駄ではなく、関わった人達の中に残っていくんだと思うと救われる気がします。

沖晴が京香の死をきちんと乗り越えていく最後は見事でした。

 

人は喜びだけでなく悲しみなどの負の感情も抱えてこそ幸せを掴めるんだと、思い知りました。

辛いことがあっても、それを受け止めて自分は足を止めてはならないんだと踏ん張らせてくれるようでした。

 

この作品の中には人生を生きていくうえで必要なものが詰まっていました。

また読み返したくなるくらい浸っていたいと感じるものがありました。

 

 

(あらすじ)

2020年、最高の感涙小説が登場! 北の大津波で家族を喪った沖晴は死神と取引をした。 悲しみ、怒り、嫌悪、恐怖を差し出して独り生還したという。残された感情は喜びだけ。 笑うだけの不思議な高校生は、余命わずかの音楽教師・京香と出会い、心を通わせていく――。 ありふれた日常と感情が愛おしくなる喪失と成長の物語。

 

経験済みなキミと、経験ゼロなオレが、お付き合いする話。

経験済みなキミと、 経験ゼロなオレが、 お付き合いする話。 (ファンタジア文庫)

 

タイトル通り非処女でビッチなギャルの月愛というヒロインはかなり攻めた設定。

ラノベでは徐々に増えていくとは思うが、扱いづらいのは確か。

しかし、月愛は男を頻繁に変わっていて周囲からビッチと揶揄されているが、根はピュアなのが分かるのが良いです。

主人公の龍斗はオタク気質のナヨナヨしているところがあるが、月愛の為に行動出来て、締めるところは締めるのでカッコいいですね。

身体目当ての彼氏しかいなくて、価値観がズレてしまっていた月愛と彼女がいたことがないからこそ奥手になる龍斗と付き合っていくことで起きていく価値観の変化が魅力です。

自分が知らなかった、考えてこなかった思考を知っていくことで好きが深まっていくのが良いです。

大切にされてこなかった月愛と過去に勘違いで思い上がったゆえに傷を負った龍斗がふとしたきっかけで恋人になって、互いに惹かれあっていくのはニヤニヤが止まらないです。

もっと2人の距離が縮まっていくのを見ていたいです。

また、海愛という月愛、龍斗と縁があるヒロインも中々ぶっとんでいて、彼女が波乱を起こしていきそうだが、どうなる。


このラブコメ良いぞ。

 

(あらすじ)

読むときっとステキな気分になれるラブストーリー 

「す、好きです!」「えっ? ススキです!?」。陰キャ気味な高校生・加島龍斗は、スクールカースト最上位&憧れの白河月愛に罰ゲームきっかけで告白することになった。予想外の「え、だって今わたしフリーだし」という理由で付き合うことになった二人だが、龍斗はイケメンサッカー部員に告白される月愛の後をつけて盗み聞きしてみたり、月愛は付き合ったばかりの龍斗を当たり前のように自室に連れ込んでみたり。付き合う友達も遊びも、何もかも違う2人だが、日々そのギャップに驚き、受け入れ合い、そして心を通わせ始める。読むときっとステキな気分になれるラブストーリー、始まります!

 

 

千歳くんはラムネ瓶のなか4

千歳くんはラムネ瓶のなか 4 (ガガガ文庫)

 

前巻とはがらりと変わり、スポ根巻。

バスケに一直線で元気溢れる陽が抱える劣等感のは意外でしたが、自身の熱意が周囲に伝わるのは確かな信頼関係がないと無理だ。

それでも諦めずにガムシャラに前に進む陽だが、壁にぶつかる。

その壁は一年前、朔もぶつかった問題と似ていて、朔も野球を辞めた理由が明らかになり、互いにケツを叩ける2人だからこそ、前に進めたんだなと。

朔は本気の姿勢を、陽は励みになる声を。

互いに共鳴していくようでした。

周囲とレベルが離れて、孤立してしまうときの高校生ならではの未熟さを上手く描いていたからこそ、そこから抜け出した際の爽快感がありました。

朔は夏を終わらせるために、陽は熱を伝えるために奔走する姿に読んでるこちらもその気になりました。

 

部活のすれ違いはあまり起きて欲しくなくて歯痒いけど、どこでも起こり得ること。

上にいるやつを落としても下にいるやつが上にいくわけではない。それを教えてあげないとね。

陽は朔から、朔は陽から力を貰って殻を破っていくのは泥臭いけど、胸に響きました。

 

周囲の太陽となっていく朔はまさに主人公です。こんなのヒロイン全員落ちるに決まってる。

朔が周囲に与える影響は大きいのは彼自身が頑張って生きてるのが伝わるからだろう。

 

陽も殻を破って、バスケにハマっていくだろうし、朔との距離感も変わって、乙女になった陽は無敵ですね。素晴らしい。

 

勢いにまかせたところと詩的に表現する感情が上手く絡み合っていて素晴らしいです。

 

部活に入っていた人ならば間違いなく刺さるし、それ以外の人にも届く熱量がありました。

 

 

(あらすじ)

あの夏の、忘れ物を拾いにいこう。 

インハイ予選を終えた7月。陽はチームの新キャプテンになった。 

仲間とぶつかり合いながら切磋琢磨し、ともに高みを目指す日々。その姿はやけに眩しく、俺の心を揺さぶった。 

そんなとき、野球部のエース、江崎が現れる。 

「朔……頼む、野球部に戻ってくれ。どうしても、お前の力が必要なんだ」 

――あの暑い夏の日。自分で止めた時計が、もう一度音を立てて動き出した。 

これは、挫折と葛藤、そしていまだ胸にうずく“熱”の物語。 

あの夏を終わらせて、もう一度、夏を始めるための物語。 

2020年 15本目 映画 ヴァイオレット・エヴァーガーデン

遂に公開。楽しみに待ってたヴァイオレットの晴れ舞台を観てきました。

感想のネタバレ注意

少し踏み込んでいるので観てない人は気をつけてください。

 

 

最初の10分でアニメで印象的だったアンの未来が見れて、かつ幸せだったんだと伝わってきてそれだけで泣きそうでした。

最初からやってくれました。

また、映画キャラのユリスが自分の死期を悟りながらも周りを想っているのは優しくて抱きしめたくなりました。

終盤の自分より他人を気にかける彼の優しさには涙なしには受け止められなかったです。

親友に想いを伝えるところは泣くしかない。

 

ギルベルトの兄・ディートフリートも考えが変わってきていて、ヴァイオレットとの接し方の変化には驚いたが、彼とギルベルトの背負っていた背景も明かされて、印象が変わりました。

アニメだと憎たらしいなと思っていたが、彼にも縛られていたものがあったんだと分かって良かったです。

終盤のギルベルトとの会話は印象的で、まさかここまで想っていたのかと。

ホッジンズもヴァイオレットとギルベルトの狭間に悩む立ち位置でヴァイオレットの保護者でもあったから、彼がいてくれなかったらヴァイオレットとギルベルトも再び巡り会えなかったのかと思うと、重たい大役を担っていたんだなと。そんなホッジンズが解放されて寂しがるのに人間味が感じられて好きです。

 

そして、ヴァイオレットとギルベルト。

2人は互いに大切にしているあまり距離を測れてなかった。だが、ホッジンズやディートフリート、その他の関わっている人達のおかげで向かい合えて良かったです。

あいしてるを探していたヴァイオレットが見つけだした愛は眩しくて美しかったです。

綺麗事だけではない現実で、純粋に好きあった2人が綺麗に気持ちをぶつけ合えたのは感動しました。

また、ヴァイオレットが仕事か愛か、選択を強いられるが迷わず仕事を選ぶのは素晴らしかった。成長してるんだ… 今までだったらどうかな。

時代の変わり目で、文明が発展していこうとヴァイオレット達のやったことは色褪せない。誇るべききとだったのが分かる。

 

みんな前に進んでいて、濃密な人生を物語を通して感じ取ることが出来て嬉しいです。

改めて素敵な作品だったと思います。

京アニが作ってくれたのも大きいですね。

余韻が簡単には引かないです。

あと何回か観に行きます。

BDも買います。

あぁ〜良かった。

 

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わたし以外とのラブコメなんて許さないんだからね

わたし以外とのラブコメは許さないんだからね (電撃文庫)

 

表紙をかざるヒロインの有坂さんがかわええ小説。

ひたすら主人公・瀬名とイチャイチャする様を見せられ、これは最近流行の両想い系のラブコメだ。

ただ、好きすぎるあまりすれ違ってしまいそうになるが、周りの人達に助けられながら進んでいくのは良い。

瀬名が目立たない位置にいようとするが、見ている人は見ていて、モテる。

そこが有坂さんとの関係に響いてくる。

タイトル通り、有坂さん以外とのラブコメは許されないんだが、瀬名を想う子が多いからな…

 

1巻はベタベタな甘さが強かったが、続いていくならどうなるのか気になりますね。

 

 

(あらすじ)

戦いは恋人になってからが本番。 告白で幕開けるラブコメ戦線! 

冷たい態度に負けずアプローチを続けて一年、晴れて想い人に振り向いてもらえた俺。クラスの誰をも寄せ付けようとしなかった孤高の美人、有坂ヨルカと彼氏彼女の関係になったのだ! しかもあれだけツンケンしていたくせに、本当は俺のことが大好きだったらしい! 
「わたしの方が好きに決まっているのに、それが伝わってない気がする」 
え、このカワイイ存在ヤバくない? 強気なくせに恋愛防御力0な彼女にイチャコラ欲求はもう限界! だけど人前でベタベタするのは禁止? さらに秘密の両想いなのに恋敵まで現れて……? 
恋人から始まるラブコメ爆誕

 

 

この気持ちもいつか忘れる

この気持ちもいつか忘れる CD付・先行限定版

 

住野よる先生の作品は今まで一通り読んでるが、恋愛は初めてだな。

ただ、素直に恋愛モノと括るには軽いし、そうではないとも思う。

言うなら恋愛感情そのものを描いていたような気がしました。

主人公・カヤが人生に退屈しているときに出会ったチカという謎の少女。

同じ時代を生きていない2人が徐々に近づいていき、距離を縮めていく。

しかし、紆余曲折あり少しのかけ違いで離れ離れになってしまう。

あまりにカヤは自分のことしか考えてないのかがはっきりする。

もう会えない状況でもチカとの日々は忘れずに大切な想い出として残っているが、人生には希望を見いだせないままふらふらしていく。

人生が退屈なときに不思議な出会いをした人を特別だと思いたがるのも無理はないが、極端な考えだなと思っていたら、学生時代の知り合い、斎藤と再会し事態は変わっていく。

 

まさかの叙述トリック

分からなかった。

どんだけカヤは屈折してるんだと思ったが、斎藤ではない女性が気持ちをぶつけて遂に目を背けていたものを思い知ることが出来て良かった。

大切な想い出はいつまでも頭に残ってないということを。

最後の最後にカヤは人生についての考えや想い出などを清算していくが、消えないものもあるというのも救いがありました。

純粋に人生を歩むには不器用だったカヤが改めて前に進んでいけそうで良かったです。

 

 

(あらすじ)

住野よるが学生時代から敬愛するTHE BACK HORNと、作品の構想段階から打ち合わせを重ね、創作の過程も共有し、 双方向に影響を与え合うことで生み出された新しい形のコラボレーション作品『この気持ちもいつか忘れる』。小説にTHE BACK HORNのCDがついた先行限定版。 

退屈な日常に飽き飽きしながら暮らす高校生のカヤ。平凡なクラスメイト達を内心で見下しながら、自分自身も同じくつまらない人間であることを自覚していた。そんなカヤが16歳の誕生日を迎えた直後、深夜のバス停で出会ったのは、爪と目だけしか見えない謎の少女だった。突然のあまりに思いがけない出会いに、動揺するカヤ。しかし、それは一度だけのことではなく、その後、カヤは少女・チカと交流を深めていく。どうやらチカはカヤとは異なる世界の住人らしい。二人の世界には不思議なシンクロがあり、チカとの出会いには何かしらの意味があるのではないかとカヤは思い始める。