羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

高校事変 IX

高校事変 IX (角川文庫)

 

優莉結衣と田代ファミリーの戦いが終わる。

深い因縁が出来ていたからこそ、勇次の暴走具合にいよいよだなと思えました。

 

結衣は発熱に侵されながらも下劣な勇次と最後の戦いに挑む。結衣は自分のことを冷静に見れているが、勇次は冷静な判断も出来ずに罪を平気でこなしていく。最初は勇次に怒りが湧いたが、次第に哀れに思えてきました。

結衣と勇次は似てるようで、全然似ていない。

他人を思いやることが出来るか、出来ないか。

互いに世間から爪弾きものになりながらも、ぶつかり合うことで浮かび上がる爪弾きものの生き様というのか、生まれた時から毒親を持っていたら悪い道にいくのは仕方ないのだが、それでも心を持っていられるかが分かれ道になったのかなと。

結衣は悪いことをするが、それは人の為。

勇次は悪いことをするために、人を使うし切り捨てる。

同じではないな。

 

田代ファミリーとの戦いが終わり、これからは結衣の家族の問題かな。

 

優莉結衣と田代勇次――血で血を洗う抗争の果て、二人は壮絶な一騎討ちに!

フェリーでの激闘から数日。公安の監視を受けながら学校生活を送る優莉結衣は、船上で果たせなかった田代勇次との決着の日が近く訪れることを予感していた。多くを失い、手負いの獣と化した勇次は民家に潜伏し、復讐の機会を虎視眈々と狙う。威嚇、攪乱、陽動――ついに最終決戦の火蓋が切られた。血で血を洗う抗争の果て、宿命の2人は壮絶な一騎討ちに。果たして勝負の結末は? JK青春ハードボイルド文学の最高到達点!

流浪の月

流浪の月 (創元文芸文庫)

 

映画化を機に読み返しましたが、再び物語に呑まれました。

世間では誘拐とされている事件も蓋を開けてみれば、救いの時間だった。

更紗と文の同居は世間から許されないものだったかもしれないが、許される必要があるだろうか。

世間は事実を拡大解釈して決めつける。余計な善意ほどタチが悪いものはない。

それを振り切るのは力がいるが、更紗と文ならば大丈夫だと思わされました。

更紗と文が苦しみながらも、自分達の歩く道を決められて良かったです。繊細な心理描写に長けていて、惹きこまれました。

 

更紗は文への罪悪感、文は性や自分の至らなさ、その他にも様々な感情や事情が絡みあっていて、2人の繋がりは大切なものだったんだと感じました。

 

世間と付き合っていけなくても、自分が良いと思う方へ進めば良い。世間は勝手なんだから。

 

あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい―。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。

2022年 4本目映画 流浪の月

先日から公開が始まった流浪の月を観に行きました。

原作が大好きだったので楽しみでしたが、概ね満足でした。

更紗と文の同居生活が短すぎるのと、更紗の家庭事情の掘り下げがあっさり過ぎてしまうのは勿体ない。

物語で重要なところだと思ったので残念。

そして、全体的に説明不足感は否めないかな。

 

役者さんの演技は素晴らしいものでした。

松坂桃李さん、広瀬すずさん、横浜流星さんの役への没入感が感じられました。

 

世間との認識のズレに苦しむ、更紗と文の姿には考えさせられました。

原作を読み返していこうと思います。

高校事変 VIII

高校事変 VIII (角川文庫)

 

後がない田代ファミリーの悪あがきが凄い。遂に核爆弾まで出してきたか。

そして、様々な半グレ達を使って、優莉結衣を殺そうとする。

それでも結衣を仕留めきれずに田代ファミリーは結衣の反撃に遭うのだから、敵対するだけアホ。

変に欲張るから結衣を仕留めきれない。

今回は流石に結衣でもピンチだなと思ったが、上手く切り抜けてホッとした。

 

結衣の家族との想いが溢れるところは結衣の本音が漏れていて良かったなと。

 

残りは息子のみ。

 

結衣はどんな裁きを下すのか。

そして、どんな裁きを受けるのか。

 

結衣の黒い行為は露見せずにいられるのかな。

 

始業式の日にはじまったのは、生きるか死ぬかのサバイバルゲームだった…。

生徒や教職員が気持ちを新たにする始業式の日、犯罪史上最凶のテロリストを父に持つ優莉結衣が迎えたのは、心躍る新学期ではなかった。田代ファミリーが総力を結集し、酸鼻極まるサバイバルゲームを挑んでくる。突如行方をくらました男子生徒の謎、担任教師となった伊賀原の暗躍……。午前零時、“結衣狩り”が始まるかに思えたが、事態は思わぬ方向に転がりだす。武蔵小杉高校事変以来、最大規模の頂上決戦。その結末は?

BEASTARS 16

BEASTARS 16 (少年チャンピオン・コミックス)

 

レゴシと母の会話は優しさと思いやりに満ちていて、心に沁みる。

子と母が互いに相手の気持ちを尊重しているのはなんて良い関係なんだ。

 

ルイとジェノスの関係が恋に発展するのか先行きが怪しいが、互いに足りないものを補える感じがあるからくっついて欲しいものだが、政略結婚と異種族というのが立ち塞がるのが痛い。

どうなるのか気になる。

 

ハーフの犯罪者メロンが切れ者で、レゴシでは届かないのかなと思ってしまうが、どう対処するのかな。

1人では難しいから、共闘か。

 

レゴシが窮地に陥るが、思わぬところで得た知識が身を救ったのは良い展開ですね。

繋がっておくものだなと。

 

 

「メロン捕獲に協力したら食肉の前科を消してやる」。ヤフヤの正義に疑問を持っていたレゴシだが、その報酬のために、ヤフヤとともにメロンが主催する「仮面夜行会」に潜入することになったが…!?

慟哭は聴こえない: デフ・ヴォイス

慟哭は聴こえない: デフ・ヴォイス (創元推理文庫 M ま 3-2)

 

もう、このシリーズ大好き。

障害を抱えている人達の叫びや苦しみには心が苦しくなるが、その状況は現実でもあるのだと思うと勉強しないといけないなと思う。

 

今回は短編構成だがどの話も粒揃い。各話、テーマに沿った展開で、最後まで読むとひしひしと切なる願いが伝わってくる。

表題作なんて、聴こえないが故に起きた悲劇で幕引きが心に残るものでした。

全話良かったです。

 

各エピソード間に荒井家の家族の悩みも挟まっていて、どうなるのか心配したが杞憂でした。良い家族だ。

障害を抱えて、成長していく困難さが見えますが希望となる出来事も起きていて、救われる思いです。

 

あと、何森刑事が好きなので、出てきてくれて嬉しかったです。

 

まだまだ、このシリーズを読みたいと思いました。

 

 

ろう者の妊婦から医療通訳の依頼を、埼玉県の派遣センター経由で受けた手話通訳士・荒井尚人。専門知識の必要な医療通訳、しかも産婦人科であることに苦戦しつつも丁寧に応対していたのだが、ある日彼女からSOSの連絡が届く……。ろう者の緊急通報の問題を活写した表題作ほか、行き倒れたろう者の素性を探る旅路を描く「静かな男」など、荒井が関わる四つの事件。『デフ・ヴォイス』『龍の耳を君に』に続くシリーズ第三弾、待望の文庫化。

ルームメイトと謎解きを

ルームメイトと謎解きを

 

素晴らしい謎解きと先が気になって仕方がないように巻かれた伏線でした。

読み終えるまで、没頭して読めました。

探偵と助手のデコボココンビに青春を感じつつ、本格ミステリらしく容疑者を絞っていく推理過程が丁寧で良かった。読んでいる読者も2人と同じように犯人を考えていられました。作品に寄り添いやすかったです。

 

様々な伏線を辿って、たどり着いた真実には胸が痛みました。被害者には同情しないが、犯人には同情してしまう。

なんとも言えない感じがするが、探偵と助手の明るさに中和させられました。

 

シリーズ化して欲しいです。

 

全寮制男子高で起こった、不可解な殺人事件。
同室の迷コンビが挑む、青春ミステリー!

全寮制男子校である霧森学院の旧寮「あすなろ館」。
昨年起きた“ある事件”のせいでほとんどの生徒が新寮に移ってしまい、今はたった6人の生徒しか入居していない。
あすなろ館の住人の一人・兎川雛太(とがわ・ひなた)が2年に進級した始業式前日、新たな入居者がやってきた。今年度から学院に編入してきた鷹宮絵愛(たかみや・エチカ)。彼は動物にしか心を開いていない変人だが、優れた頭脳の持ち主だった。奇しくも同室になった二人は、最初は反発するも次第にお互いを知っていく――。
しかし、ある日、あすなろ館に向かう遊歩道の途中にある東屋で、学内で絶対的な権力を持つ生徒会長の湖城龍一郎が何者かに殺害された。現場の状況から、犯行が可能なのはあすなろ館の住人だけである。
転入生のエチカは湖城から目を付けられていたため、犯人の最有力とされてしまう。雛太はエチカの嫌疑を晴らすため、捜査を始めるが――!?


予想外の結末に驚愕する!
注目の若手作家がおくる、学園ミステリ。