羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

育休刑事

育休刑事 (角川文庫)

 

似鳥先生はミステリーの作りが上手いなと改めて思いました。しかも、社会問題を含みつつユーモア溢れる会話や作風に仕上げるのは流石です。

 

今作は男性の育児休業、しかも警察官で取れるのが奇跡のように描かれているが、当たり前になって欲しいという作者のメッセージを感じました。

しかし、現実にはあまり浸透していないが、徐々に広まっていっている感じか。

育休から育業に変わったのは日本らしいなぁ苦笑

 

話を戻して、今作は育児を主題にあるが、ミステリーとしても楽しめるようになっている。

不思議な状況からどう真実を導くのか先が気になる展開でした。

まさか、調査で赤ちゃんを利用する刑事なんて聞いたことない笑 赤ちゃんの無垢な笑顔の前では警戒が緩むのは仕方ないか。

赤ちゃんが事件解決のヒントを作るというのは上手い。

 

主人公夫婦のちょっとした秘密にはまんまと引っかかりました。終盤の騒ぎで明かされるが、そう来るかと。確かに不明と言えば不明だったな…

 

育児の難しさ、育休を取る難しさ、育児を野次馬する外野の厄介さ、様々な困難が描かれていたが、赤ちゃんの成長や笑顔の前では全て吹っ飛ぶのだと感じました。締めくくりも素晴らしかったです。

 

 

 

 

事件現場に赤ちゃん出動!? 育児も謎解きも全力の新感覚本格ミステリ

事件現場に赤ちゃん出動!? 育児も謎解きも全力の新感覚本格ミステリ!

捜査一課の巡査部長、事件に遭遇しましたが育休中であります! 男性刑事として初めての1年間の育児休暇中、生後3ヶ月の息子を連れているのに、トラブル体質の姉のせいで今日も事件に巻き込まれ―!?

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 VI 見立て殺人は芥川

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 VI 見立て殺人は芥川 (角川文庫)

 

刊行ペースが凄い今作。

李奈の成長とミステリーが魅力だが、今回はここ数巻ずっと気にしていた李奈の作家としての成長が見れて嬉しいです。警察から頼りにされているが、本業は探偵ではなく、作家だからな。

事件に巻き込まれてばかりで、作家としての姿の方が少なかったので、今回作家としての李奈が成長していく様子が見れて良かった。

作者の手のひらで転がされているが、それでも良い。

 

李奈の作家人生として重要なエピソードで家族が絡んできて、また事件の方でも家族が絡んでいるのはピッタリな落としどころに繋がっていました。

確かに李奈が作家として成功しているとは言いがたいから、親が口出してくるのは仕方ないかな。ただ、それを上手く利用した展開になっていて、着地の方法としてはありがちだけど、過程がある分、響いてくる。

 

李奈が作家として、どうなっていくのか。

今後の展開も楽しみです。

 

都内で改造ガスガンを使った殺人事件が発生。被害者2人のうち1人の胸の上に芥川龍之介の「桃太郎」が小冊子に綴じられて置かれていた。これまで文学に関わる難事件を解決してきた李奈は、刑事の要請で今回も捜査に協力することに。一方で本業の小説執筆ははかばかしくなかった。加えて母の愛美が三重から上京。気持ちが落ち着かずにいた。謎めいた事件と停滞気味の自分。李奈はこの2つの問題を乗り越えられるのか!?

録音された誘拐

録音された誘拐

阿津川先生ならば読みたいと思うくらい、今勢いのあるミステリ作家の阿津川先生の新作。

 

短編集の透明人間は密室に潜むに収録されていた、盗聴された殺人に登場した探偵と助手を主人公にした作品。

印象的だった短編が、こうして厚い長編に膨らむなんて幸せでした。

 

キャラクターが立っていて、かつミステリーとして多重構造で伏線回収も抜群となれば盛り上がるのは間違いない。

阿津川先生の作品は様々読んでいるが、今作はかなりお気に入りの1冊になりました。

 

名探偵対頭の切れる犯人では欠かせないメタなやりとりや、腹の探り合いは好きでした。

最初から最後までドキドキハラハラしつつ、そんなところに伏線がという驚きがあり、最後の最後まで気が抜けない展開でした。

二転三転ところではなく、数え切れないくらい読者が驚く反転をしていて、サービス精神が凄いなと唸ります。

 

そして、作中で最後まで隠されていた耳が良い美々香の秘密には圧倒されました。気持ちいいくらい騙されました。ええ。

そんなことある!?と。

作品で売りにしている部分にそんなことがあるなんて、想像出来るわけがない。唖然としました。

 

これは、是非ともシリーズ化して欲しいと思う作品でした。

 

驚きたいならば、今作を是非!

 

大野探偵事務所の所長・大野糺が誘拐された⁉ 耳が良いのがとりえの助手・山口美々香は様々な手掛かりから、微妙な違和感を聞き逃さず真実に迫るが、その裏には15年前のある事件の影があった。誘拐犯VS.探偵たちの息詰まる攻防、二転三転する真相の行方は……。新世代本格ミステリーの旗手が描く今年最大の逆転ミステリー開幕。 本当に騙されていたのは誰だ?

山口つばさ短編集 ヌードモデル

山口つばさ短編集 ヌードモデル (アフタヌーンコミックス)

 

ブルーピリオドみたいな真っ直ぐな青春ではなく、人の弱さと脆さ、性や生きづらい境遇、感情がドロドロしている短編集でした。

表題作のヌードモデルが中でも、明るいものでした。

罰ゲームから始まる関係はやはり良いな。

 

性に悩まされる少年を描いた"おんなのこ"は、振り返れば細かなところに伏線を張っていて、上手い。また、女を軽く見ていた男がしっかり現実に直面するのは良い落としどころ。

 

最後の"神屋"は正直、一回読むだけでは足りない。情報を噛み砕かないと飲み込めない結末。怪しげなホストに狂わされたり、救われる、かと思いきや…な結末にままならないなと。

 

素晴らしい短編集でした。

 

アートに打ち込む若者の熱さを描き、話題を呼んだ超人気作『ブルーピリオド』山口つばさの原点にして新境地!
ひとり美術に打ち込むクラスの変わり者・夏目と罰ゲームで彼女を落とすためヌードモデルに手を挙げた男子高校生・百瀬の交流を描いた表題作のほか、女性のふりをするいたずらで承認欲求を満たす矢田が事件に巻き込まれる「おんなのこ」、吸血症のホストに出会った自己評価の低い女医の物語「神屋」の3編を収録。性と生きづらさなど、山口つばさの『ブルーピリオド』に通じるところと、まったく別の表現を堪能できる初めての短編集です。

その着せ替え人形は恋をする(8)

その着せ替え人形は恋をする 8巻通常版 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)

 

遂に始まる文化祭。

海夢の衣装作りはいつも通りだが、今回はクラス全体に応援されての形だから五条くんにプレッシャーがかかる。

それでも、自分のやりたいこと。

海夢を輝かせる決意を固めるところはめちゃくちゃカッコ良かったです。

普段、謙虚で弱気な五条くんの漢らしい顔にはドキッとしました。

人間関係など、複雑に考えていた考えを吹っ切ることが出来たのが海夢というのが大きいですね。

五条くんの中でも、海夢の存在が大きくなっているのかな。

 

五条くんの学園生活は変わっていくのだろうか。

 

青春は”恋”するみんなの味方…!
文化祭で、初めての”男装”に挑む事になった海夢。男性らしさを表現する事に苦戦しつつも、クラスのみんなと力を合わせて準備は進んでいく。新菜にとってはクラスメート達との初めての本格的な共同作業…。不安の先にあるものは…?

雪と心臓

雪と心臓 (集英社文庫)

 

凄い小説と出会った。表紙とタイトルに惹かれて読んだが、最初から最後まで読むのが止められない。

先が読めない構成、展開、仕掛けが組まれていて、読み終えると込み上げてくるものが…

今作は自由奔放な姉と平凡な弟、双子の関係がキモになっていて、双子の関係は特別で、格別でした。

 

最初は謎の誘拐が描かれて、なぜ誘拐したのか気になる掴みがあり。

だが、とりあえずそれは置いといて、双子の関係性を小学生から高校卒業までの人生を描かれる。

一体、どう繋がってくるのかと構えていましたが、あまりにも双子の人生を追いかけるのに夢中になり過ぎて、最初の誘拐を忘れていました笑

だからこそ、最後の最後に明かされた秘密には驚かされたし、胸がギュッと締め付けられました。

 

平凡な弟は自分では気づかないうちに、姉と過ごす波瀾万丈な日々を大切にしていたのだと思うと、もうね。良い双子だよ、本当に。

 

作者の他作品も読んでいこうと思うくらい、ハマりました。

是非気になった人に読んで欲しい作品です。

 

クリスマスの夜。
燃え盛る民家。
取り残された少女。
灼熱の地獄に飛び込んだ、一人の男。
炎の中から助け出された少女は、そのまま男に連れ去られた――。

新潮ミステリー大賞作家が描く、ある双子の男女にまつわる二十余年の物語。
さみしさが、ぬくもりが、心に触れる傑作青春ミステリ。

クリスマスの夜。百キロ以上のスピードで暴走する車を、二台のパトカーが猛追していた。
時は二時間ほど前に遡る。その男は、偶然、火事の現場に遭遇する。家の外で助けを求める母親。二階の窓からは、泣き叫ぶ娘の姿が見える。男はこの状況に運命を感じていた。男が取った行動は、誰も予想しないものだった。燃え盛る家の中へと飛び込んでいったのだ。それから五分足らずで、男は家から出てきた。胸には十歳の少女をしっかりと抱きかかえている。周囲から、歓喜の声がこぼれる。しかし、男が次にとった行動に周囲は唖然とした。
男は少女を母親に手渡さず、車に乗せてそのまま逃走したのだ。

今だけのあの子

今だけのあの子 (創元推理文庫)

 

イヤミスの印象が強い作者だが、前向きに終わる作品もあるのかと、新しい発見でした。多少イヤミス要素はありましたが、全体的に見れば希望がある感じでした。

 

女性同士の関係を描く短編集。

どれも粒揃いで惹き込まれます。短編でありながら、物語としての強い引きとミステリーとしての反転がギュッと詰まっていました。伏線も確かにあるのが素晴らしい。

サクサク読めるし、登場人物が抱えている悩みがどうなっていくのか気になるので、どの短編も最後まで気になるものでした。

最後まで読むと、見えるものが変わるようで、晴れやかに。

また、短編の中で仄かな繋がりもあったのは良いなと。

 

嫉妬や思い込み、様々な人の感情を撫でていくような描写が巧みでした。

 

 

その友情、いつまで?
物語は予想を裏切り、鮮やかに反転する!
「女の友情」に隠された5つの秘密

新婦とは一番の親友だと思っていたのに。大学の同じグループの女子で、
どうして私だけ結婚式に招かれないの……(「届かない招待状」)。
環境が変わると友人関係も変化する。「あの子は私の友達?」
心の裡にふと芽生えた嫉妬や違和感が積み重なり、友情は不信感へと変わった。
「女の友情」に潜む秘密が明かされたとき、驚くべき真相と人間の素顔が浮かぶ、
傑作ミステリ短篇集全五篇。