羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

15歳のテロリスト

15歳のテロリスト (メディアワークス文庫)

 

松村涼哉先生の新作はメディアワークスから。デビュー作からこちらの文庫に移っても違和感ない作風でしたが、今作はより、色濃く感じました。

テーマは少年法ということで、現実でも問題になっていることで、小説ならではの仕掛けを整えていた。読んでいて、やるせなさや、悔しいと気持ちがナイフのようで、作者の伝えたいメッセージというのが痛いほど伝わってきました。

主人公の渡辺篤人と記者の安藤が各立場から少年法でこんな酷い目に遭ったことが細かく現実的で、加害者への憎悪が酷く伝わってきた。そして、だからといって、加害者も苦痛を味わっているわけで。ネットやニュースに踊らされてクルクル回るように世間の人は加害者を叩いて傷つけて、そこまで言うのかという線を平気で超えてしまう。現代の問題点を問いかける、作品になっています。

 

読み終えた後に訪れるのは幸福感か絶望感か

。読者それぞれだと思いますが、渡辺篤人の叫びをただの小説の主人公の声だと思わず、しっかりと受け止めてもらえたら良いなと思います。

 

 

 

考えて考えて、意見を言う前に、全てを知ろうとすることから始めるべきなんだ。

つれづれ、北の坂探偵舎 シリーズ

 

つれづれ、北野坂探偵舎 物語に祝福された怪物 (角川文庫)

つれづれ、北野坂探偵舎 物語に祝福された怪物 (角川文庫)

 

 

 

河野裕先生の送る、作家と編集者たちか一つの作品のために動く物語。

 

シリーズ全6冊で、作家・雨坂続と編集者・佐々波蓮司が作品の打ち合わせをするように謎を解いていくという形式は最初は慣れず、違和感を感じたが、読み進めていくうちに自然となっていて物語に引き込まれます。

 

作家、小説、編集、読者、読書に関して深く追い求めていく終盤の展開はあまりに残酷で、どこか優しく感じました。

 

河野裕先生の作品で特殊だと思う作品でした。

麦本三歩の好きなもの

麦本三歩の好きなもの


住野よる先生の新境地。


今までは日常の中の非日常を書いてきた作者が、麦本三歩という女性の日常をただ書いているというのに興味を惹かれました。


生きていくうちに感じる些細な悩みや嬉しいことばかりなので、ひたすら力を抜いて読めるのが今作の強みです。休日に部屋でダラダラ読むのに最適な作品かと。生きていて、悩んだらこの作品を読めばいい。


文章を読んでいくうちに、自分の頭の中で麦本三歩が出来上がっていったせいか、最後の締めの三歩の難は読んでて心に響きました。辛いことや良いことが交互にやってくるのが人生なんだと思いました。


住野よる先生の作品としては初めての続巻を待ち望んでいます。

教室が、ひとりになるまで

教室が、ひとりになるまで


初作家さん。

表紙やあらすじに惹かれて読みました。

スクールカーストとミステリーが良く組み合わさっていて、読み応えのある作品でした。


クラスで高い立場の人が三人続けて、自殺するという非日常が生み出す不穏な空気が良く作用していて、バラバラドキドキしながら読み進めて、たどり着いた最後は叫び出したくなるぐらい現実で、胸が割かれそうでした。


自分が割と主人公の垣内や檀の考えに共感してしまいましたが、スクールカースト上位者にはそれなりの悩みもあるのを知っておかないと。人と人は完全には分かり合えないが、歩み寄る意思は大事だ。


伏線回収の鬼みたいな作品でよくもまぁここまで書いたなという力作でした。

作者の他作品にも興味が湧きました。

さとり世代の魔法使い

さとり世代の魔法使い (双葉文庫)


藤まる先生の新作。


今作は魔法使いモノ。現代の若者の象徴みたいな主人公の雫がハッチャケていて、相棒の爽太も良い感じに賑やかしてくれて、楽しく読める。ただ、それだけではなく、雫、爽太は悩みを抱えながらも誰かの助けになろうとする優しさを持っていて、物語にメリハリがついていて、巧みな構成でした。


そして、魔法使いの道具を全て物語に組み込み、最後まで繋げていて、不満なところは一切ありませんでした。


雫が様々な試練を得て、素晴らしい魔女になっていくのを見ると、人は独りでは生きていけないんだと感じました。人の温度は必要だよね。


読み終わった後は爽快感やじんわり心に染み込んでくる良い作品でした。



それにしても、藤まる先生はこの先もこの路線で行くのか気になります。

ラノベは書かないのかなぁ。

汚れた赤を恋と呼ぶんだ

汚れた赤を恋と呼ぶんだ (新潮文庫nex)


階段島シリーズ第3巻。


今回の舞台は階段島ではなく、捨てた現実側。捨てて成長したのかと思いきや、七草と真辺は魅力が薄れていた。自分のいらない部分を捨てて成長出来たら世話ないよな。捨てて空いた空洞を埋めることが出来ないと、バランスが悪いよ。

七草と真辺は捨てたものは捨てる必要がなかったかもしれないが、捨てて、すれ違わないと互いに気づけなかったかもね。

やはり、階段島にいる方を応援してしまうが、どっちも七草と真辺なんだよな。


そして、安達に関しては胡散臭いというのと語りが苦手で不穏分子過ぎる。

アンデットガール・マーダーファルス1

アンデッドガール・マーダーファルス 1 (講談社タイガ)


すっかり、青崎有吾先生の作品の虜になっていると感じます。

裏染シリーズ、そして殺風景を読んで、今作にたどり着きました。

最初は日常系ではなく、怪奇現象を扱ったミステリーということで探り探り読み進めましたが、これがまぁ、面白い!

状況は重いのに語りや主人公側のノリが軽いおかげで読める、読める。

相変わらずの本格ミステリーで作者のファンならば心配無しです!


謎解きだけでなく、アクションも交えられていて、こういうのもいけるのかと新たな発見でした。