羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

法医昆虫学捜査官

法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)

虫の声なき声を拾うためならなんでもする法医昆虫学者の赤堀の無鉄砲さと思いやりが魅力的でした。

難事件を解く鍵は昆虫学にあり。警察の上層部の思いつきで捜査に法医昆虫学者加えることに。刑事・岩楯は最初は困惑するが、捜査が進むにつれて新たな視点からの発見があり、最初とは違った事件の見え方が出来るのが面白かったです。

死体に潜むうじ虫から犯人に辿り着く過程が非常に興味深かったです。

 

単純な殺人かと思ったら、入り組んだ事情が潜んでいて、徐々に真相に近づいていくスリルがありました。バディものとしても良いです。

 

赤堀、岩楯のバディ良いぞ。

シリーズものなので追いかけていきます。

 

コミカルさとシリアスな事実に振り回されて心地良い…

 

全焼したアパートから1体の焼死体が発見され、放火殺人事件として捜査が開始された。遺体は焼け焦げ炭化して、解剖に回されることに。その過程で、意外な事実が判明する。被害者の腹腔から大量の蠅の幼虫が発見されたのだ。しかも一部は生きた状態で。混乱する現場の署員たちの間に、さらに衝撃が走る。手がかりに「虫」が発見されたせいか、法医昆虫学が捜査に導入されることになる。法医昆虫学はアメリカでは導入済みだが、日本では始めての試み。赤堀涼子という学者が早速紹介され、一課の岩楯警部補と鰐川は昆虫学の力を存分に知らされるのだった。蠅の幼虫は赤堀に何を語ったのか!

同じ星の下に

同じ星の下に (幻冬舎単行本)

誘拐作は様々あるが、今作は優しさと厳しさの塩梅が上手かったです。だから最後まで真相を知りたくて仕方なかった。

優しい誘拐を描いていて、ある程度先が読めてしまうのが難点だが誘拐犯と虐待されていた人質の関係は安らぎの時間だったのは良かったです。ぎこちない関係から少しずつ発展していく過程が尊かった。

だからこそ、家にいるよりも、誘拐されていた方がマシというのは悲しい。

その子を救う為の物語で、誘拐犯の為でもあった。

 

誘拐犯の思惑が明かされてからはしんみりした気持ちになったが、救いのある終わりでホッとしました。

 

同級生はみな幸せそうだ。なのになぜ、わたしだけが、これほど不幸な目に遭い続けるのだろう。

12月の北海道。中学2年の少女・沙耶(さや)は、自分を日常的に虐待をしてきた両親が、今夜、海で自分の殺害を計画していることを知っていた。ところが下校途中「児童相談所の職員」を名乗る男の車に乗せられ、そのまま誘拐・監禁される。監禁下の交流から、ふと彼女は、男が、じつは「本当の父親」ではないかと疑い始める。一方、男は身代金2000万円が目的の営利誘拐であると犯行声明を北海道警察に送りつけ、粛々と計画を進める。男は一体、誰で、目的は何なのか?

ミナヅキトウカの思考実験

ミナヅキトウカの思考実験

気になる作品だったので、献本で読ませて頂き助かりました。

題材が思考実験、ミステリ、オカルトとあって、各話の謎の始まりから解決まで興味が尽きることがなかった。

マクスウェルの悪魔シュレディンガーの猫中国語の部屋、スワンプマン、などなど小説を読んでいたら知ってる単語が出てきて、ワクワクしました。

オカルトっぽい事件を追っていくうちに現実的な解決に落とし込む理屈、推理が魅力的でした。

 

登場人物、特に主要人物の造形や主義がありがちかなと思ったが、そこは若さゆえと捉えられたら楽しめるかと。裕人の善性、透華のオカルト好きは噛み合わないかもしれないが、関係が続いていくうちに変化が起きていくのか気になります。

シリーズ化したら良いですね。

 

第1回黒猫ミステリー賞受賞作!

水崎大学数学科に通う神前裕人は、ひょんなことから殺人事件の現場に遭遇。被疑者として警察署に連行されてしまう。嫌疑をかけられたままの状態に不安を感じた裕人は、刑事の促しに応じる形で、自身が通う大学の怪異研究会に足を運ぶことに。そこでオカルトマニアの水無月透華との出会いを果たした裕人の日常は、その日を境に一変。透華に振り回されながら、さまざまな事件の現場に足を踏み入れていくことに…。

街中で突如燃える女、棺の内側から響く物音、目だけくり抜かれた死体…
怪異の仕業とも取れる事件の真相を、「思考実験」をもとに導き出す超常×解決ミステリー!

グレイラットの殺人

グレイラットの殺人 ワシントン・ポー (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

ワシントン・ポーシリーズ最高。

毎回、最後まで読んで事件の真相に唸るばかり。

前巻の真相に痛めつけられたが、今回はわりとユーモア多めで楽しめました。ポーとティリーのわき道にそれる会話はずっと追っていたい気分になります。タッグ感に磨きがかかってきて、益々貫禄が増してきました。

 

今回不思議な事件現場から違和感を見つけ、小さな事から掘り下げていき、妨害にも屈せず犯人に突き進むポーとティリーのコンビが魅力的過ぎました。ブレーキがなくてアクセルしかない感じ好きです。

無鉄砲なポーだが、犯人や事件関係者には誠意を見せる場面があるのはずるいなぁと思います。犯人との対峙は読み応えあります。

 

事件の複雑さも良きです。戦争なども絡んできて、一概に犯人を責めきれない感じが良い。

 

フリンさんの職場復帰やポーの家族の事など、まだまだ目が離せないシリーズです。

売春宿で殺されたサミット関係者の男。テロを警戒する政府はポーに捜査を命じる。ポーは3年前の強盗殺人事件との関連を疑い……

ミステリ作家 拝島礼一に捧げる模倣殺人

ミステリ作家 拝島礼一に捧げる模倣殺人 (メディアワークス文庫)

題材、テーマが興味深くて、物語にうまく溶け込んでいたので説教臭くなっていないのが素晴らしい。

人を傷つけない表現はない。それが現実。それでも創作者として矜持を持って、表現をしていく拝島先生の決意は希望があって良かったです。

現実でも起こり得るラインを攻めていて、小説から受ける影響、SNSで吐き出す人を傷つける言葉、全て自覚しなければならないなと思います。作家だけでなく、誹謗中傷を行う人への戒めとしても良いかな。読者も想像力や物語の捉え方を養わないといけない。

何かを発信する側、受け取る側、双方が意識していかないといけないですね。

 

また、犯人との探り合いはスリルがあり、良かったです。出し抜きあいの緊迫感がありました。

 

天才ミステリ作家と週刊誌記者が立ち向かう、おぞましき猟奇事件。

謎に包まれた天才ミステリ作家・拝島礼一の代表作「絵札の騎士」を模倣した連続猟奇殺人事件が発生。
新米週刊誌記者の織乃未希は、唯我独尊な拝島に半ば強引に協力を求められ、秘密裏に事件を調査することになる。
"原作者"としての強みと推理力で事件を紐解いていく二人だったが、模倣犯が仕掛けた狡猾な罠や、世間に渦巻く"正義"という呪いが容赦なく襲い掛かってくる――。
壮絶な頭脳戦の果てに、二人が辿り着く驚愕の真相とは?

午後のチャイムが鳴るまでは

午後のチャイムが鳴るまでは

阿津川先生の新作はユーモア溢れる青春ミステリ。

読み終えたら、あぁ!と繋がりに気づき、満足して読み終えられる短編集でした。馬鹿なことに夢中になれる高校生の時間は貴重なものです。各話の謎に至るまでの伏線がしっかり張られていて、読者としても考えながら読めるラインだったかな。自分はあまり当たらなかったが笑 突飛な謎でない分、高校生が軸という意味があった。

タイトルの意味が分かる、名探偵の暗躍っぷりが1番の謎だったかな笑 彼の頭の良さは最早ファンタジーでそこはどうかなと思いました。

 

バカやる高校生の物語を締めるのが大人っていうのが良いなと。

過ぎてしまった時間を感じさせられました。

こいつら、最高すぎる……! 昼休みの“完全犯罪”にご用心!?
本格ミステリ大賞受賞作家の最高到達点!

九十九ヶ丘高校のある日の昼休み、2年の男子ふたりが体育館裏のフェンスに空いた穴から密かに学校を脱け出した。タイムリミットは65分、奴らのミッションは達成なるか(第1話「RUN! ラーメン RUN!」)。文化祭で販売する部誌の校了に追いつめられた文芸部員たち。肝心の表紙イラストレーターが行方不明になり、昼休みの校内を大捜索するが――(第2話「いつになったら入稿完了?」)。

他人から見れば馬鹿らしいことに青春を捧げる高校生たちの群像劇と、超絶技巧のトリックが見事に融合。稀代の若き俊英が“学校の昼休み”という小宇宙を圧倒的な熱量で描いた、愛すべき傑作学園ミステリ!

ぎんなみ商店街の事件簿 Brother編

ぎんなみ商店街の事件簿 Brother編: Brother編

brother編ということで、男兄弟の絆を描いていた。親がいない環境だからこその話だったかな。良い。

うお、凄い。sister編からのbrother編になって、違和感やしこりが吹き飛んだ。見方が変わると出来事の違う方面を炙り出せるのか。登場人物が入り乱れて少し把握に戸惑う面も感じたが、カチッと繋がる瞬間に訪れる快感はこの作品だけのもの。

これは片方ではなく、両方読まないともったいない。続いて欲しいな。
 

読みやすい上に満足度が高いのでおすすめです。

史上初! ひとつの事件にふたつの真実

古き良き商店街で起きた不穏な事件。探偵役は四兄弟と三姉妹、事件と手がかりは同じなのに展開する推理は全く違う!? 〈Sister編〉との「両面読み」がおすすめです!
ぎんなみ商店街近くに住む元太・福太・学太・良太の兄弟。母は早くに亡くなり父は海外赴任中だ。ある日、馴染みの商店に車が突っ込む事故が起きる。運転手は衝撃で焼き鳥の串が喉に刺さり即死した。事故の目撃者は末っ子で小学生の良太。だが福太と学太は良太の証言に違和感を覚えた。弟は何かを隠している? 二人は調査に乗り出すことに(第一話「桜幽霊とシェパーズ・パイ」)。
中学校で手作りの楽器が壊される事件が発生。現場には墨汁がぶちまけられ焼き鳥の串が「井」の字に置かれていた。学太の所属する書道部に犯人がいるのではと疑われ、兄弟は真実を探るべく聞き込みに回る(第二話「宝石泥棒と幸福の王子」)。
商店街主催の「ミステリーグルメツアー」に随行し、長男で料理人の元太は家を空けている。学太が偶然脅迫状らしきものの断片を見つけたことから、元太が誘拐事件にかかわっている可能性が浮上。台風のなか兄の足跡を追う福太たちに、ある人物が迫る!(第三話「親子喧嘩と注文の多い料理店」)