羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

先生と僕 文庫

先生と僕 (双葉文庫)

 

大学生と中学生の微笑ましい交流の日々… だけではなく、何気ない出来事の裏に潜む悪意。

見逃していてもおかしくはない悪事を見つけることでもあって、何気ない光景から犯罪を見つけ出すという作風が気に入りました。

最初から最後まで、命の危機というのはないが、人の心の脆さや歪さを炙り出していて、ひりつく感覚が堪らないです。

 

想像力豊かゆえに怖がりの二葉とミステリー大好きで頭が切れる隼人、大学生と中学生という歳の差がありながらも共に過ごしていくというコンセプトが崩れることなく、最後まで一貫しているのが良いです。

 

物事の悪いことを重視する隼人と善を信じる二葉のデコボコ関係が意外としっくりくる空気感、関係性に惹かれました。

 

 

都会の猫は推理好き。田舎のネズミは…?―ひょんなことから大学の推理小説研究会に入ったこわがりな僕は、これまたひょんなことからミステリ大好きの先生と知り合う。そんな2人が、身のまわりにあるいろいろな「?」を解決すると同時に、古今東西のミステリ作品を紹介していく連作短編集。事件の真相に迫る名探偵は、あなたをミステリの世界に導く名案内人。巻末には仕掛けに満ちた素敵な「特別便」も収録。

幻竜苑事件 創元推理文庫

幻竜苑事件 (創元推理文庫)

 

小さな少女からの依頼から幕が上がる。

幻竜苑という旅館で起こる不可解な事件、昔起きた謎の失踪、今と過去が交差するミステリーでした。

 

犯人のトリックには驚いたし、動機に関してはゾッとするものがありました。

しかし、俊介の真っ直ぐな心が折れることなくいられるのは野上を始め、周りに頼りになる人がいるから。

俊介が犯人を突き止めるために、推理をしていく着眼点が素晴らしい。

野上や警察に負けてないのが凄い。

 

ミステリーとしてだけではなく、俊介と野上の関係も掘り下げられ、深まっていく2人の仲。これからどうなるのか楽しみです。

 

 

 

 

時は3月。探偵志願の少年・狩野俊介の再訪を待つ野上の事務所に、謎の少女が現われ、両親を殺した犯人を捕まえてくれと依頼した。不審な大金を携える少女の無礼な態度に腹を立て、冷たく追い返したものの、野上は少女のことが気にかかっていた。彼女の残した落書きを手がかりに俊介と調査を始めたところ、10年前に起きた焼死事件が浮上する。少年探偵・狩野俊介シリーズ第二弾。

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 (角川文庫)

 

発売当初から気になってはいたが、文豪が作品の要素に絡んでるということがちょっと躊躇いを生んでいたが、2巻が刊行されたので思い切って読んでみました。

たしかに文豪の書いた作品が参照されていましたが、物語を楽しむうえでは知らなくても問題ない範囲でした。

 

盗作疑惑が起こり、巻き込まれる形で主人公・作家の李奈は盗作疑惑の裏側を調査していくことに。

二転三転していく状況に頭を抱えたくなるが、地道な調査の末にたどり着いた終着点は悲しくも暖かさがあるものでした。

最後まで真実がどういうものか分からなかったので、撒かれていた伏線が繋がっていく終盤は圧巻でした。

盗作が行われた理由には納得がいき、裏側にあった思惑には呑まれるものがありました。

犯人のやったことは許されることではないが、そうしてしまった理由には納得しました。

 

読みながら想像していたが、かすりもしませんでした笑

 

李奈が調査をしていくうちに、作家や出版社の汚れている部分に触れていき、精神的に逞しくなっていくのが見どころでした。

事件を通して、作家として成長していて、今後どうなっていくのか楽しみです。

 

 

新進気鋭の作家に盗作疑惑!? 発覚後は失踪――

ラノベ作家の杉浦李奈は、新進気鋭の小説家・岩崎翔吾との雑誌対談に出席。テーマの「芥川龍之介太宰治」について互いに意見を交わした。この企画がきっかけとなり、次作の帯に岩崎からの推薦文をもらえることになった李奈だったが、新作発売直前、岩崎の小説に盗作疑惑が持ち上がり、この件は白紙に。そればかりか、盗作騒動に端を発した不可解な事件に巻き込まれていく……。真相は一体? 出版界を巡る文学ミステリ!

赤い博物館 文庫

赤い博物館 (文春文庫)

 

大山誠一郎先生の作品で暫定で1番好きかも知れない。

いわゆる外しコースとも言える赤い博物館の館長・緋色と左遷された聡が共に未解決事件に迫っていく短編集。

凄い!全話面白かった。

長編より短編の方がまとまりやミステリとしての切れ味が鋭い感じがする。

話の膨らませ方に驚くが、しっかり謎へ至る筋道まで描写されているので納得度が高いミステリー大集合でした。

 

最初はこっちかなと予想させて、真相は大きく外れたところにある。

気持ち良いくらいに騙されます。

また、犯人のトリック、動機も唸るものばかりで夢中にになって読めます。

最後に真相知った上で緋色の台詞、行動は犯人を突き止めるのにピッタリの手を打っているのが分かると、緋色の名探偵っぷりに慄きます。

聡は最初は嫌々だったが、緋色と事件を解決していくごとに信頼していき、変わっていく様子も追うのが楽しかったです。

 

探偵・緋色、助手・聡の組み合わせも大好きで、とても楽しめました。来月続巻があるそうで、楽しみで仕方がないです。

 

 

超ハイレベルで奇想天外、予測不能なトリック駆使の本格ミステリ!

警視庁付属犯罪資料館、通称「赤い博物館」の館長・緋色冴子はコミュニケーション能力は皆無だが、ずば抜けた推理力を持つ美女。そんな冴子の手足となって捜査を行うのは、部下の寺田聡。過去の事件の遺留品や資料を元に、難事件に挑む二人が立ち向かった先は――。
予測不能なトリック駆使、著者渾身の最高傑作! TVドラマ原作

「読者に対して手がかりを堂々と提示しながらも真相を当てさせない」という
難題を見事にクリアしている。 ――飯城勇三「解説」より

ボトルネック 文庫

ボトルネック(新潮文庫)

 

久しぶりに読み返しも、十分味わえる作品でした。

青春、ミステリー、SFを融合した作品。

パラレルワールドに行ったら大体ハッピーな終わりになるものだと思ってしまうが、今作は違う。嫌なまでに自分の至らなさを実感させられて、暗い方へ背中を押されていく。

 

主人公・リョウ自分が生まれなかった世界線に行き、自分の代わりに家族に入っている姉が自分より上手く生きて、周りを回しているのを見せられたら生きていく気力が失われていくよね…

読み終わったら胸が痛くなること間違いなし。

 

独特の雰囲気で不気味な空気感がよりリョウの悲しさを表していて、リョウにお前はこれが足りなかったのだと突きつけていました。

 

自分の存在価値をこれでもかと知らされる残酷な話。最後の解釈は色々あるけど、自分はバッドエンドに1票。

 

 

 

亡くなった恋人を追悼するため東尋坊を訪れていたぼくは、何かに誘われるように断崖から墜落した…はずだった。ところが気がつくと見慣れた金沢の街にいる。不可解な思いで自宅へ戻ったぼくを迎えたのは、見知らぬ「姉」。もしやここでは、ぼくは「生まれなかった」人間なのか。世界のすべてと折り合えず、自分に対して臆病。そんな「若さ」の影を描き切る、青春ミステリの金字塔。

コミュ障探偵の地味すぎる事件簿

コミュ障探偵の地味すぎる事件簿 (角川文庫)

 

目を見て話せないを改題して文庫化。似鳥鶏先生の作品の中で1.2を争う好きな作品なので、是非読んで欲しいコミュ障青春ミステリーです。

 

主人公・藤村京はコミュ障で人と目を見て話せない。だが推理に長けている。

彼の1人ぼっちだった経験から来る語りや考えに非常に共感出来るし、これこそぼっちだと彼を応援したくなります。

自己紹介、セレクトショップ、カラオケ、コミュ障なら避けたいところの描写が巧みで、痛いほど藤村の気持ちが伝わってきました。

コミュ障は苦手な事と接する場面では余計な事にまで頭が回ってしまうのに、分かる分かると頷くばかりでした。

人と話すのが苦手なゆえに、推理を伝えるのに工夫していくのは独特でした。

 

藤村送る大学生活は事件に巻き込まれることが多いが、大切な友達も出来る。

コミュ障にもそれぞれ種類があって、藤村の周りの友達も個性豊かでしっかりしてそうだが、それぞれ悩みを持っている。

藤村が友達達と関わっていくことで変化していく様子が凄い良かったです。

 

ミステリーとしてもさすがの切れ味です。

トリックや真相に至るまでの推理も練られていて、読み応えがあります。

 

登場人物の成長が楽しみなので、是非シリーズ化を熱望しています。

 

名探偵は、人見知りで口下手!? 大学生たちの愛すべき青春日常ミステリ!

藤村京はいわゆるコミュ障。大学入学早々、友達作りに出遅れ落ち込んでいると教室に傘の忘れ物を見つける。だが、人と話すのが苦手な藤村は忘れ物をした状況を独力で推理して持ち主を突き止めようするが!?

犯人は僕だけが知っている

犯人は僕だけが知っている (メディアワークス文庫)

 

また、松村涼哉先生が名作を出してきたか。

 

毎回、テーマを決めて書いている作家さんだが、今回は様々な社会問題を取り入れてミステリーも入り組んでいたので、読み応えが抜群でした。

田舎が舞台に起きる失踪事件。その背景には家庭、部活、仕事があり、救いの失踪だった。

失踪というのは悪い事が頭によぎるが、どうしても家から離れたくなる彼らの切実な願いに胸が痛みました。

 

仕組まれた失踪から、仕組まれていない殺人が起きることで事態は急変する。

 

一体、誰が?

失踪同居の中に事情を聞いていくうちに、浮かびあがってくる現実社会で起こっている問題は誰もが他人事ではいられなくなる。

実際に自分が直面しないと考えられないのは人間の悪いところ。

読んでいて、社会の問題にも目を向けていこうと思いました。

 

そして、最後に見せた主人公の采配には意を突かれました。

タイトルの通り、犯人を知ったうえで起こした問題解決方法には序盤からの伏線が実った形で最高に皮肉でした。

 

松村涼哉先生は作品を生み出すごとに、心揺さぶってくるのが素晴らしい。

今作もまた、社会問題に切り込んだメッセージ性とそれに対する対処法も示していて、非常に良い読後感です。

 

クラスメイトが消えた。壊れかけた世界でおきる、謎の連続失踪事件――

過疎化する町にある高校の教室で、一人の生徒が消えた。最初は家出と思われたが、失踪者は次々に増え、学校は騒然とする。だけど――僕だけは知っている。姿を消した三人が生きていることを。
それぞれの事情から逃げてきた三人は、僕の部屋でつかの間の休息を得て、日常に戻るはずだった。だが、「四人目」の失踪者が死体で発見されたことで、事態は急変する――僕らは誰かに狙われているのか?
壊れかけた世界で始まる犯人探し。大きなうねりが、後戻りできない僕らをのみこんでゆく。

発売直後から反響を呼び大重版が続き15万部を突破した『15歳のテロリスト』の松村涼哉がおくる、慟哭の衝撃ミステリー最新作!