羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

さよなら僕らのスツールハウス

さよなら僕らのスツールハウス (角川文庫)

 

思春期の一部である大学生の時にシェアハウスで男女が過ごしていったら、それは何かあるだろう。

シェアハウス内で起こる謎や、メンバー内の中で交わる思惑などがまさに青春という感じで、読んでいてこういう風に生活を共にしていけるならと羨ましくもなりました。

同じ場所に住んでいても、それぞれが違う想いで受け止めていて、その違いこそが今作の肝なんだなと思いました。

違う感情を各人物ごとの視点で見せていき、話が進んでいくうちに変わりゆく様々な人物の模様には儚いが暖かさがあり、たまらなく嬉しくなりました。

表題作は切なさがありますが、前向きな気持ちになっていく女性の余韻が良い読後感に繋がっていました。

短編で、様々な時代のスツールハウスで起きた出来事を読んでいくと色んな人達の想いが感じられて良かった。

読み終えたら、住んでみたいなと思いました。

 

(あらすじ)

「スツールハウス」。それは、崖の上に建つシェアハウスの名前。腰かけのように、若者たちが人生の一時期を共有する場所。そこには確かに、青春と謎があった。元カノの結婚式に送った写真に秘めたメッセージ。無人のシャワールームで起きた事件。ともに暮らした仲間からの相談…。一見バラバラの謎と、15年住み続け、「主」と呼ばれた女性、素子の謎。全てが解かれたとき明らかになる、切なく優しい真実とは。心の奥を刺激する青春ミステリ。

 

 

竜と祭礼3 ー神の諸形態ー

竜と祭礼3 ―神の諸形態― (GA文庫)

 

地道に様々な人と関わり、自分が知らない思考を知ることで研ぎ澄まされていくのが分かるし、毎巻のように読んでて予想つかない結末にたどり着くのが楽しい。

離れていたイクスとユーイが再会した最後のあたりは情報量が多くて頭が重くなるが、与えられた情報を噛み砕いていくのは面白いし、読み応えがある。

 

神様の宗教やら難しいことを言葉でここまでこねくり回せるのかと驚きと同時に言葉の可能性の広さが伝わってきました。

人間は理屈はともかく信じたいものを信じる。

当たり前だけど、多くの人はそうなんじゃないか。

 

感想を書くのが難しい作品。

それは作品の魅力が簡単には括れないものだからか明確な姿を見せないからか。

静かに紡がれていくあり様がとても好きです。

 

もっと増えてほしいなと思います。

 

 

(あらすじ)

“竜の杖"の依頼から季節はめぐり、冬。イクスは作杖のため、ある修道院へ向かっていた。亡霊哭く“神の街"エストーシャ。魔法杖の祖レドノフの伝説が残るその街で、イクスは職人仲間と出会い、自らの職人としての在り方を見つめ直しはじめる。 
その頃、故郷に戻るはずだったユーイはマレー教の勢力争いに巻き込まれ、ノバとともにエストーシャの神学会議に出席していた。異教徒ユーイを召喚した新派の狙いとは――。 
レドノフの“究極の杖"は実在するのか。マレー教の、そしてルクッタの神とは。謎の爆破予告で神学会議に動揺が走るなか、イクスとユーイの思惑が“星拝"の日に交差する。杖職人たちの物語、雪と星の第3巻。

 

きみのために青く光る

きみのために青く光る (角川文庫)

 

今となっては作者買いしているが、初めて似鳥鶏先生の作品に触れた作品なので、印象に残ってる作品です。

久しぶりに読み返しましたが、面白い。

不思議な能力を得て、日々の日常に変化が起きる。

能力を得た人達の短編で、どのキャラクターも戸惑い、悩んでいくが、能力を通して自身の弱さに向き合って成長していく構成は魅力的です。

登場人物がどの人物も好きになれて、ちょっとしたファンタジー要素がミステリーにもなっていて、巧みな手話でした。

どの話も好きですが、最初と最後の青春要素強めで引きが素晴らしいし、2、3話の考えがハッキリしていくのも良い。

1冊で様々な感情が起こされます。

能力も落差があり、そこが読後感に繋がっているのかなと。

 

読み終えた後、登場人物達の未来が楽しみになる短編集でした。

 

(あらすじ)

青藍病。それは心の不安に根ざして発症するとされる異能力だ。力が発動すると身体が青く光る共通点以外、能力はバラバラ。たとえば動物から攻撃される能力や、念じるだけで生き物を殺せる能力、はたまた人の死期を悟る能力など―。思わぬ力を手に入れた男女が選ぶ運命とは。もしも不思議な力を手に入れたなら、あなたは何のために使いますか?愛おしく切ない青春ファンタジック・ミステリ!

 

 

ワンダンス02

ワンダンス(2) (アフタヌーンコミックス)

 

小谷が徐々にダンスに慣れてきて、上手くなっているが、そこには湾田の影響力が大きいが、湾田はライバルというか同志みたいなところがあるから、どうなっていくのかと思ったが先輩で同性である厳島伊折というダンスを追求する存在と出会っていくことで、互いに触発されていくのが熱い。

また、伊折もミステリアスだけど隠れた情熱があり中々魅力的な人物で惹かれます。

 

仁上のストイックだけど他の人に認められなくて悔しく思うのは誰よりも上にいきたいから。弱点を素直に受け入れられる仁上の成長が楽しみです。

 

小谷と湾田の距離も近づいていく甘々なシーンがあり小谷この野郎と思うが、ダンサーとしては遠くにいってしまいそうな湾田に小谷はどう接していくのか見ものですね。

 

ダンスの奥深さも伝わってきて、良いなぁと思います。

行きづらさを抱えていた小谷がダンスに夢中になって迷いながら前に進んでいく姿から目を離せない。

 

(あらすじ)

ダンスに夢中な湾田光莉に惹かれた小谷花木は、未経験のダンス部に入部する。2人で特訓を重ねて、新入生ながらコンテストの選抜メンバーに選ばれた小谷と湾田。本番に向けてさあ練習! というところで、落選した新入生・仁上ゆらの複雑な胸中を知る。上手いダンスって、なんだ? 皆で踊るって、どういうこと? 自由に踊って想いを伝える、ダンスと恋の高校青春劇!

 

 

僕の目に映るきみと謎は

僕の目に映るきみと謎は (角川文庫)

 

「誰も死なないミステリーを君に」でぐんっと知名度を上げた井上悠宇先生の新作。

怪異の正体をミステリーの定石である5W1Wの法則を持って暴いていき、怪異の呪いを潰していく。

主人公・真守と幼馴染で霊能探偵・恋子が互いに協力していくが、2人の関係やかけ合い、空気間が心地よく、それだけでも楽しめるがそれだけではない。

今作は怪異というホラー、真守と恋子や登場人物達の青春の陽と陰、怪異を生んだわけや正体突き詰めていくミステリー、全ての要素が絡み合っていながら、どの要素の魅力を潰し合うことなく、活かしあっていて素晴らしい構成でした。

全てが繋がっていき、謎が解けていく様には唸ること間違いなしです。

怪異の裏に潜んでいた悪意や憎悪には肝が冷えましたが、読み終えた後には様々な感情が混ざり合っているが爽快さもあるし品もある、上質な作品でした。

登場人物の中で悪意を隠し持っていた人物が因果応報という形で終幕になっていて良かったです。真守が人の身でありながら人を裁くということを行い、苦しむが側に恋子がいるなら大丈夫だ。真守と恋子が互いに守り合っているので心配はいらないか。

シリーズ化して欲しいですね。

 

ホラーが苦手な人でも楽しめるようになっていますので今作を気になる人、気になっている人はぜひ読んでみてほしいです。

 

(あらすじ)

彼女の視界は謎に溢れている。彼女を救えるのは、謎が見えない僕だけ。 

あなたは呪いの人形を受け取りました。 
この人形を親友に渡さなければ、あなたは、次の友引の日に死んでしまいます。 
あなたは、親友に、渡しますか? 


僕の幼馴染、祀奇恋子(まつりぎ・こうこ)の視る世界は異常である。 
彼女は謎(オカルト)を視て、怪異(ミステリ)を解き明かす霊能探偵だ。 
ある時、僕たちの通う高校で生徒の連続自殺が起きた。そこには受け取った相手を呪い殺す「トモビキ人形」がかかわっているらしい。 
親友から人形を渡された女子生徒の相談を受け、恋子は5W1Hを駆使して怪異を暴く、「除霊推理(オカルトトラッキング)」に挑むことを決める。 
怖がりのくせに逃げない幼馴染を守るため、僕も助手として調査を始めるが――。

 

姉ぶる初恋相手に絶対敗けない!

姉ぶる初恋相手に絶対敗けない! (ファンタジア文庫)

 

両片想いで義理の姉弟、最近の流行りを入れつつ、ラブコメを追求していく作者のらしさも含んでる面白いラブコメです。

互いに好きで付き合う前に両親の再婚により、姉弟になって家族になるという縛りをどう乗り越えていくのか。

主人公(弟)・修一郎とヒロイン(姉)・真綾の互いに責めようと心理戦を働かせるあまり遠下がってしまう2人の焦ったさは未熟な高校生の感情の表し方としては良いんじゃないかな。

家族になってしまった以上、結婚するしかないというか半端に付き合える状況でなくなったからすれ違ってしまうのも無理はない。

しかし、修一郎が真綾にぐいぐい自分の気持ちを話して真綾も応えるように気持ちを吐き出せたから、これからは安心だと思いました。

だがしかし、そこでは終わらずにクラスメイトの杏や修一郎の妹が修一郎と真綾の間に割って入っていきそうな展開で、続きが気になるラブコメ模様だ!

 

軸はぶれないだろうが、どうなる!?

 

 

 

(あらすじ)

勝つのは初恋か、姉ムーブか。一つ屋根の下の恋愛闘争劇! 

俺の告白計画は完璧の筈だった。筈だったんだ! 告白相手の真綾が義姉になるなんて衝撃の展開さえなければ。だが諦めてなるものか! 弟でなく今一度恋愛対象として見てもらうべく俺は姉ぶる初恋相手に立ち向かう!

 

 

死体埋め部の回想と再興

死体埋め部の回想と再興 (ポルタ文庫)

 

まさかの続巻。

1巻の最後で吉か凶かドキドキする余韻が素晴らしかったから続くことに驚いたが、最後まで読んだらこの展開もありだなと。

祝部が織賀を失くしてしまい現実から逃避行していく堕落具合が素晴らしいし、何より元凶の織賀がいなくなったのに地獄のような日々は続いていて、その中で織賀を想ってしまうのは中々狂ってるがその狂気さが溜まりませんね。

死体を埋めるという行動を、罰を、誰かと分け合いたかった織賀の気持ちを祝部は受け取っていて、互いに互いを承認しあって生きていく関係も悪くないのかなと。

口には出さないが2人とも同じ気持ちで過ごしていたと思うとこの背徳感にまみれた関係は大事なものだったんだな。

 

以前あった旅行や再会しなかった、再会したパターン両方を見せてくれるなんて贅沢な構成なんだ。

やっぱり祝部と織賀は2人揃っていた方が好きだな。

 

良いバディものだなと改めて思いました。

 

 

(あらすじ)

正当防衛で相手を殺してしまったところを同じ大学の先輩だという織賀に目撃された祝部。 
秘密裡に死体の処理を請け負う『死体埋め部』の部長(ただし部員は織賀のみ)を自称する織賀に窮地から救ってはもらったものの、祝部は強制的に二人目の部員として、織賀待望の後輩になる羽目に。 
織賀が運ぶ“奇妙な死体"がなぜそんな風に死んだのか、推理をさせられながら、祝部は織賀とともに死体を埋めるため、織賀の愛車のジャガーで山に向かう─。 
在りし日の織賀と祝部の物語のほか、“あのあと、もしも、そうなら"という、分岐した未来をそれぞれ描いた二編も含めた青春の補遺集。