羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

ウズタマ

ウズタマ (小学館文庫)

 

タイトルの意味が分からず、感動するという感想を知ってどういうことだと気になり、読みました。

家族の形はそれぞれで外からでは内面までは迫れないということですね。

自分の親のことを深く知ろうとしないものだと気付かされました。たしかに自分も親に聞いたりしないから知らないな。

 

家族を作るのに足踏みしてしまう主人公が自分の家族の過去を追っていき、家族とは何なのかを探し出した結末にはグッとくるものがありました。

最初は目先の結婚からの逃避から始まり、真実を知っていくにつれて喪失感を感じるようになる。それでも恩師を信じ、共に食卓を囲む様子は暖かい気持ちになりました。

 

今作を読んだら野菜ラーメンが食べたくなる。あとウズラの卵は美味いよね。

 

食品メーカーに勤める松宮周作(28歳)は、シングルマザーの紫織と結婚の約束をしていた。そんなある日、父、将彦から周作名義の預金通帳を手渡される。「誰が」振り込みを続けてくれたのか、その問いに答えぬまま、半月後、将彦は脳梗塞で倒れて昏睡状態に。
真相を探るにも、幼い頃に母親を亡くして親戚づきあいもない周作には、全く心当たりがない。果たして、自分のために、毎月少しずつ振り込み続けてくれたのは誰なのか……。
通帳の謎に向き合って初めて、父親のこと、自分自身の生い立ち、母親の顔さえ何も知らないことに気づき、周作は愕然とする。そして、父親と自分の過去を探り始めて辿り着いたのは、25年前に起こったとある傷害致死事件だった。
被害者は、病気で亡くなったと聞かされていた周作の母。加害者は、当時、松宮家で家事手伝いをしていた18歳の少年だと知る。加害者を捜し始めた周作は、25年前の事件に隠された真実に少しずつ近づいていくのだった。
家族を怖れる男と、家族を求め続ける男が織りなす切なすぎるストーリー。
巻末の人気マンガ家キリエさんによるマンガエッセイ風解説も必読です。

犯罪

犯罪 (創元推理文庫)

 

サクサク人の裏に触っていく短編集でした。

人の悪となる根幹に触れるようで、読み進めるのが止められない。犯人を切り捨てたり、拾ったり、読み味が独特で、短編集として旨みがあるなと。

話ごとにばらつきがあるのはデビュー作だから仕方ないのかなと。それか自分が飲み込めない部分があったのかなぁ。

先に刑罰を読んでるから、引っかかたのかもしれない。

とはいえ、あらすじに書かれていた老医師の短編は印象的でした。インパクトありました。

様々な犯罪者を描いていて、興味深く読めました。

 

一生愛しつづけると誓った妻を殺めた老医師。兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の末っ子。エチオピアの寒村を豊かにした、心やさしき銀行強盗。―魔に魅入られ、世界の不条理に翻弄される犯罪者たち。弁護士の著者が現実の事件に材を得て、異様な罪を犯した人間たちの真実を鮮やかに描き上げた珠玉の連作短篇集。2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位に輝いた傑作!

災厄の町〔新訳版〕

災厄の町〔新訳版〕

 

初エラリイ・クイーン作品でしたが、大満足のミステリでした。

エラリイ・クイーンというのは登場人物の探偵の名前からなのか。

クイーンは食えない奴で飄々と過ごしつつ、要所で頭脳を発揮していて、周りを動かせる能力がある。

会話や言葉のチョイスも良い具合に肩の力が抜けていて、気に入りました。

 

事件を通して、罪に問われた人、問われなかった人の隠された顔を覗かせていて、真実が明らかになった時はゾッとしました。そこまでするのかと。違和感ある流れですが真実を知った上だと見方が変わる。辛い、ビターな余韻がまた良い。

謎のヒントをしっかり拾い上げたうえで、衝撃を与えられて、読み終える頃にはふらふらです。

 

とても面白かったので、シリーズの続巻も読みます。

 

タイトルの災厄に関しては確かにそうかもと思ってしまいました。

 

結婚式直前に失踪したジムが、突如ライツヴィルの町に房ってきた。三年の間じっと彼の帰りを待っていた婚約者のノーラと無事に式を挙げ、ようやく幸福な日々が始まったかに見えた。ところがある日、ノーラは夫の持ち物から奇妙な手紙を見つける。そこには妻の死を知らせる文面が…旧家に起きた奇怪な毒殺事件の真相に、名探偵エラリイが見出した苦い結末とは?本格ミステリの巨匠が新境地に挑んだ代表作を最新訳で贈る。

後宮の烏 3

後宮の烏3 (集英社オレンジ文庫)

 

今回は親子、兄妹、家族のことが多かったな。

切っても切り離せない存在故に想いが暴走したり、すれ違ってしまう。

切ない。

 

寿雪の周りに人が増えていき、寿雪自身戸惑いながらも変化を受け入れているのは高峻の影響が大きい。そして側に置く人達が増えていき、後宮での立ち位置も変わっているようで、今後どうなるか不安だ。

ゆっくりだけど、寿雪が変化、成長していくのが分かります。

 

寿雪を狙う者も現れているが、守ろうとする者も集まっている。寿雪の人柄を知る人が増えていけば大丈夫かな。

悪意に負けないように祈るばかり。

 

「梟」が残した羽根に、自らの行く末を重ねる寿雪。先代の戒めに反し夜明宮は孤独から遠ざかるも、寿雪自身は虚しさから逃れることが出来ずにいた。烏妃の元には、今宵も訪問者が絶えない。泊鶴宮での怪異は、やがて烏漣娘娘への信仰を脅かす『八真教』へと通じて?他方、高峻は烏妃を「烏」から解放する一筋の光明を見出し、半信半疑ながらも寿雪と共にあることを決め!?

また、同じ夢を見ていた

また、同じ夢を見ていた (双葉文庫)

 

独特の雰囲気が魅力でした。

何度読んでも心に沁みる良さがありますね。

子供だが、大人びた主人公・奈ノ花がゆっくり成長していく様子を描いている。

確かに周囲より、精神の成長は早いが他の部分はまだ未熟。

奈ノ花が自分と周囲に距離を置いていたが、様々なコミュニケーション不足から自分が大切なものを見つけていないことに気づき、変わっていく様子は素直で眩しかった。

頭が良い子ほど苦しむのは確か。

しかし、決して自分には非がないのか考えなければならない。

 

奈ノ花が変わっていく過程に出会う人達の設定がまた効いてくる。

その人達も奈ノ花に助言をして、また奈ノ花も大切なものを伝えている。

タイトルの回収が素敵です。

 

読み終えると勇気と希望が湧いてきます。

 

「人生とは和風の朝ごはんみたいなものなのよ」小柳奈ノ花は「人生とは~」が口癖のちょっとおませな女の子。ある日、彼女は草むらで一匹の猫に出会う。そしてその出会いは、とても格好いい“アバズレさん”、手首に傷がある“南さん”といった、様々な過去を持つ女性たちとの不思議な出会いに繋がっていき―。大ベストセラー青春小説『君の膵臓をたべたい』の住野よるが贈る、幸せを探す物語。

暗闇の非行少年たち

暗闇の非行少年たち (メディアワークス文庫)

 

松村涼哉先生は社会から溢れてしまって行き場のない子供達に寄り添う作風で、今作もそうでした。

罪を犯して、更生するのは並大抵のことではなく。周囲からの目、自分で自分を許せなかったり、上手くいかない。

少年院に入った事実から目を背けたくなるが、今作ではティンカーベルという存在がいる。

迷い、苦しむ少年、少女にVRという現実と向き合うための居場所を用意される。

そこで悩みを抱える人達が互いを支え合う救いがあって、自分の枷にめげずに向き合っていく。

上手く生きれなくとも、人生をかけてやり直していく決意は胸に響きました。

 

ティンカーベルの正体にも触れていて、そこもグッときました。

 

少年院から退院した18歳の水井ハノは、更生を誓いながらも上手く現実に馴染めず、再び犯罪に手を染めようとしていた。そんな時、SNSで「ティンカーベル」と名乗る人物から、ある仮想共有空間(メタバース)への招待状が届き――。
空間に集う顔も本名も知らない子供たちとの交流を通し、暗闇にいたハノは居場所を見つけていく。だが、事情を抱える子供たちのある“共通点”に気づいた時――、謎の管理人ティンカーベルが姿を消した。予想もつかない事態へ、ハノたちも巻き込まれていく。

子供たちを集める謎の管理人ティンカーベルの目的とは。更生を願い、もがく少女が見つけた光は、希望かそれとも――?
鳴りやまない反響に20万部突破 『15歳のテロリスト』の著者が放つ、新たな衝撃ミステリー!!

後宮の毒華

後宮の毒華 (角川文庫)

 

最近後宮の物語に惹かれていたので、実績ある作家の作品ということで楽しみにしていました。

割とある設定だが、じわじわと伝わってくる主人公・玉蘭の焦燥感と成長に読んでいて、釘付けにされました。

後宮で起こる毒にまつわる事件と遭遇し、成長していく玉蘭。

美人で優秀だった姉が失踪したことにより、姉の代わりを務めることに。女装してしきたりなどを覚えたり、悪戦苦闘する日々は愉快でした。

しかし、毒にまつわる事件と遭遇し、姉の状況を理解していくうちに変化していく心境は見事でした。

自分ではなく姉を慕っている側近に罪悪感を感じたり、身内を疑ったり、信じられない状況に落ちいったが毒妃・ドゥドゥと出会うことで変わっていく。

根っから善を持つ玉蘭と毒にまつわることなら動くドゥドゥの組み合わせは上手くハマっていました。

 

玉蘭は未熟ですが、姉の代わりを務められている。

彼の優しさが周りを救っていくのは良いものでした。

 

続編に期待が持てる始まりでした。

 

あらゆる毒に通ずる妃と、身代わり妃として後宮に潜入した少年が謎を解く!

時は大唐。繁栄を極める玄宗皇帝の後宮は異常事態にあった。
皇帝が楊貴妃ひとりを愛し、他の妃を顧みない。
そんな後宮に入った姉を持つ少年・高玉蘭(こうぎょくらん)は、
ある日姉が失踪したと知らされる。
やむにやまれず、玉蘭は身代わりとして女装で後宮に入ることに。
妃修行に励む中、彼は古今東西の毒に通じるという「毒妃」ドゥドゥに出会う。
折しも側近の女官に毒が盛られ、彼女の力を借りることになり……。
華麗なる後宮毒ミステリ、開幕!