羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

君が電話をかけていた場所

君が電話をかけていた場所 (メディアワークス文庫)


夏の時期にぴったりの作品なので久しぶりに読み返しました。

やはり夏に読むと浸れる作品でした。


顔に痣があり、後ろ向きで自暴自棄的な生き方をしていた深町陽介だが、ある時謎の少女から電話がかかってきて、ある賭けに乗ることになる。

陽介の痣があって、異物のように取り扱われるような生活の中で、一筋の光のような存在だった初鹿野には簡単には言い表せない感情を寄せていたのは必然だったのかな。


謎の少女との賭けに乗り、自分の顔から痣が消えることで周囲からの扱いが変わり、厳しい世界から優しい世界に変わり、戸惑いながらも受け入れていく。

だが、忘れていた。

自分の顔の痣の行方のことを。


流石三秋先生、魅力的なシチュエーションとままならない現実の狭間の気持ちを描いていて、視野は一変する。


自分がよくなるよりも大切な人の不幸に苦しむのは良いなぁ。

千草も大事なポジションを担っている伏線があり、彼女の本心にも気になります。


クラスメイトや知り合いとの付き合いよりも初鹿野を大事に想う陽介はどうなるのか。

徐々に明かされていく真実と感情に痛みを感じながら、前に進む陽介の未来はどうなる。


下巻への期待が膨らむ引きでした。


(あらすじ)

「賭けをしませんか?」と受話器の向こうの女は言った。「十歳の夏、あなたは初鹿野さんに恋をしました。しかし、当時のあなたにとって、彼女はあまりに遠い存在でした。『自分には、彼女に恋をする資格はない』。そう考えることで、あなたは初鹿野さんへの想いを抑えつけていたのです。…ですが、同時にこうも考えていました。『この痣さえなければ、ひょっとしたら』と。では、実際に痣を消してみましょう。その結果、初鹿野さんの心を射止めることができれば、賭けはあなたの勝ちです」。



アンドロイドの恋なんて、おとぎ話みたいってあなたは笑う?

アンドロイドの恋なんて、おとぎ話みたいってあなたは笑う? (ポプラ文庫ピュアフル)


人間とアンドロイドの倫理観やら常識を無視した恋の物語でした。

設定が好きな人にはたまらなく刺さる仕掛けが随所になされていて、伏線が回収されて、認識していた現実と実際の世界がひっくり返るところなんて、たまらなく震えました。


最初は恐る恐る近づいていく真白と響の焦ったさが良い。

次第に気持ちを抑えきれなくなり、罰せられると分かっていながらアクセルを踏み続ける背徳感と、恋い焦がれている真白の胸中にもどかしさを感じたからこそ響と心から繋がったところは胸が暖かくなりました。


試練の連続でドキドキの日々でしたが、かけがえのない時間を過ごしていた真白と響の恋の行方は儚く、だけど希望を抱くもので良かったです。



(あらすじ)

佐藤真白は、義肢のリハビリ専門病院で事務スタッフとして働いている。外見が生身の女性と 
寸分違わぬ精巧さで作られているが、実はある研究機関から送り込まれたアンドロイドだ。ある日、院内の庭で散らばったカードを集めている青年・響に
声をかけられる。響は事故で左腕を失い、義肢のリハビリのため病院へやってきていた。屈託 
なく笑う快活な響とのふれあいの中で、真白の中で処理しきれない感覚が生まれて…。



流浪の月

流浪の月

 

久しぶりに息を殺して、ひたすら文章を必死に目で追う作品と出会いました。

本屋に行く人ならば、一度は目にしたことがあるはずの有名作。

どんなものかと読み始めましたが、あっという間に作品のもつ苦しさに呑まれて、最後まで惹きつけられる作品でした。

 

世間的には誘拐犯と被害者。

そう括られてしまい、苦しむ更紗と文の心理描写の圧迫感や揺らぎようが見事。

周囲の善意や悪意に生きづらさを感じながらも、生活を送る2人の日々は休まらない。

良いことがあればそれ以上の悪いことが起きる。なんてままならない世界なんだ。

もう放っておいてくれ、と余計な善意や心なき悪意に別れを告げる最後にはスカッと気が晴れました。

更紗と文が性や友情や世間体やなんやらとわづらわしい感情に振り回されずに、2人でいればいいと思えるようになったことに救いを感じました。

また、親の愛に悩んだ梨花や身体の欠損で苦しむ谷さんも幸せになってほしいです。

 

自分は自分。他人は他人。

当たり前なことなのに歳をとれば忘れて、無意識に人を傷つけている。そんな、無性に腹が立つことにたいしての抗議のように私は捉えました。

今時、ネット社会で相互監視社会になってきつつあることの問題が浮き彫りになっていました。

 

真実と事実、自分の目で確かめて、頭で考える必要がありますね。

 

 

(あらすじ)

あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい―。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。

灰と幻想のグリムガル level.10 ラブソングは届かない

灰と幻想のグリムガル level.10 ラブソングは届かない (オーバーラップ文庫)


ランタが抜けて、どこか寂しげなハルヒロ達。思えば、どんな時もランタが良くも悪くも口うるさかったから、皆士気を保てていたのかな。基本みんな大人しいから、余計に大事な存在だったんだなと。

そして、ハルヒロ達がピンチに。

今までとは違い、ハルヒロ頼みの状況でハルヒロが致命傷を負い、追い詰められてしまうところにパーティーの脆さを感じてしまう。

だからこそ、過信していた気持ちが呼び寄せた最後の衝撃には非常にショックを受けたました。またかと。

ただ、助かる方法はあるといいますが、正規な方法ではないんでしょうね。

とにかく続きが気になる引きです。

改めて読むと、伏線はあったんだと。


そして、今まで良い印象を受けなかったセトラが動揺したりしているところを見ると、ちょっとずつハルヒロ達と馴染んできてるのが窺えますね。


ハルヒロとメリィの間に流れていたどうしようもない空気や確かな壁があるなか、このような状況になるのはやるせない。

くぅ〜。




(あらすじ)

ある義勇兵が深い傷を負い、山中で一人その人生の終焉を迎えつつあった。死の間際、彼は思い出す。元いた世界の残滓を。そして、疑問を抱く。―この“グリムガル”という世界とはなんなのか?と。一方、千の峡谷を抜けオルタナを目指し東へ進んでいたハルヒロたちは、道中の森で、巨大な猿のようなモンスター・グォレラたちの襲撃を受けていた。レッドバックというリーダーに率いられたグォレラの群れに苦戦を強いられる。辛うじて追撃を振り払い、逃げ込んだのはオークの出来損ないが隠れ住む村だった…。―彼は知っている。この世界で“明日”は当たり前には訪れないということを。




2020年 上半期オススメのキャラ、ライト文芸新作9選

 

2020年の上半期に出たキャラ・ライト文芸のオススメの作品を紹介していきます。

気になった作品があれば、是非読んでほしいです。

 

 

午前3時33分、魔法道具店ポラリス営業中 (PHP文芸文庫)
 

 

死んだ者と生きている者の深い溝を埋める魔法道具が心を揺さぶる物語にしていました。

https://wing31.hatenadiary.jp/entry/2020/01/13/210000

 

 

 

 

記憶が残らない少女とのラブコメというありきたりなジャンルを巧みに利用して、見事に裏切って見せた最後には感動しました。

https://wing31.hatenadiary.jp/entry/2020/02/23/210000

 

 

さよならが言えるその日まで

さよならが言えるその日まで

  • 作者:高木 敦史
  • 発売日: 2020/02/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

幸せな家族と歪んだ家族。対比することでより、最後に余韻が残る作品でした。大人と子供は理解し合えたら良いと思いました。

https://wing31.hatenadiary.jp/entry/2020/03/05/221500

 

 

 

恋に至る病 (メディアワークス文庫)

恋に至る病 (メディアワークス文庫)

 

 最初は正義だった。だがいつしか道を外れていった2人の恋の末路には感情が揺さぶられます。

 https://wing31.hatenadiary.jp/entry/2020/03/26/210000

 

 

できない男 (集英社文芸単行本)

できない男 (集英社文芸単行本)

 

 社会人に染まって、行き詰まった男達が勇気やそこに至るまでの葛藤に何度も胸に詰まるものがありました。

https://wing31.hatenadiary.jp/entry/2020/03/28/210000

 

 キャラ、ストーリー、ミステリー、どれも良い感じに混じり合っていて、読み応えがある作品でした。

 https://wing31.hatenadiary.jp/entry/2020/03/29/220000

 

 

 

さよなら世界の終わり(新潮文庫)

さよなら世界の終わり(新潮文庫)

 

 

 

死にかけることで様々な能力が発動することで、生々しい描写の数々に胸が苦しくなる。ただ最後の輝きはには惹かれるものがありました。

 インパクトのあるタイトルだが、中身は詩的な表現や真っ直ぐな気持ちが伝わってくる良作でした。

 https://wing31.hatenadiary.jp/entry/2020/05/29/213000

 

水曜日が消えた (講談社タイガ)

水曜日が消えた (講談社タイガ)

  • 作者:本田 壱成
  • 発売日: 2020/04/22
  • メディア: 文庫
 

 

 映画のノベライズみたいな形だが、内容が良い。誰かに迷惑をかける、迷惑を引き受ける、生きていくうえで当たり前なことなんかないんだなと。

 https://wing31.hatenadiary.jp/entry/2020/06/23/220000

 

 

 

 

2020年 10本目 映画 ぐらんぶる

公開日にぐらんぶるの映画を観に行きました。

素晴らしい裸映画で、原作やアニメで作品を知っている人でも納得出来る内容だったと思います。
まったく知識がない人でも楽しめる、勢いや勢いや勢いがありました。むしろ勢いしかない…
 
最初の狂気のようなループや孤島などの映画ならではの要素は作品が持つ魅力をより引き出すような仕掛けになっていたので、監督や制作人の作品への理解が感じられました。
 
出演者の方々も振り切ってノリノリにやっていたように思いました。
sumikaの音楽も作品を盛り立てていて良かったです。
 
 
観たら、気持ちが吹っ切れる良い映画でした。

 

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映画で作品を知った人には原作をおすすめします。


魔女に育てられた少年、魔女殺しの英雄となる

魔女に育てられた少年、魔女殺しの英雄となる (角川スニーカー文庫)


ファルまろさんのイラストと魔女の家族モノということで気になって読みました。

出だしは非常にゆったりとしたのんびり過ごす微笑ましい家族の形でした。

主人公であるアルがある程度歳を重ねて、外の世界を見にいってからは様々な新しい知識が身についていく。

だが、アルは育ての親であるメーティーが魔女であり恐れられていることを知ってしまう。そこでアルが"魔女を殺す"と決意するのが優しくて堪らないです。


魔女・メーティー、狼・ヴェルフと過ごすだけでなく、守りたい。だから強くなる。

魅力的な主人公になっていきそうですし、無事に魔女を殺せるのか気になります。


兄貴分のアランやツンデレお嬢様のソフィアも良いキャラしていて、これからもアルといてほしいです。


メーティーがなぜ恐れているのか明かされるのを待ってます。


(あらすじ)

人里離れた森の奥。そこには魔女と狼、そして一人の少年が暮らしていた。両親に捨てられた少年アルを拾った後、不器用ながらも過剰な愛情を注ぎ育て、魔法や知識さらには世界の広さを教える為に旅に連れていってくれた魔女メーティー。二人の暮らしは、刺激的であると同時に幸せに満ち溢れていた。ある日、人々に恐れられる“禍事を歌う魔女”の存在を知ったアルはそれが―居場所のなかった自分に家族の温もりを教えてくれたメーティーであったことを知る。自身の知る彼女と世間の認識の違いに戸惑いつつ、アルはとある覚悟を決め―?数奇な運命の下に出会った二人が紡ぐ、“家族”の絆の物語。第4回カクヨムWeb小説コンテスト特別賞受賞作。