羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

キャラ・ライト文芸

蝉かえる

全話シリアスで、ユーモアが少なめだったのは残念ですが、その分重みのある物語になっていました。謎の背景にある、人の願いには切なさが多分に含まれていました。 残酷な現実と向き合っていく、人の姿勢が窺える。 魞沢も控えめな態度でしたが、彼の優しさ…

サーチライトと誘蛾灯

蝉かえるが文庫化されたので、読み返しましたが、何度読んでも面白い。 主人公・魞沢のユーモア溢れる語り口から、切ない事件の真相に向かう流れがスムーズ。 だから、感情の流れをよく追いかけられる。事件関係者の内なる想いまで拾っているからこそ、読後…

動物園の鳥

素晴らしい最終巻。 坂木と鳥井の関係の不安定さ、危うさについて考える。 読み終えて、タイトルと表紙を見ると、繋がっているんだなと感じました。 人間だって、動物。動物だって、自然に生きている。悩み、苦しみながらも生き方を見つけていく。 坂木と鳥…

仔羊の巣

シリーズ2巻目。 1巻に出てきた人達も出てきつつ、坂木の同僚や様々な人が新しく登場してくる。 何度も出てきて、坂木と鳥井に絡んでくる人達の優しさは良い。生活に根付いているところにシリーズモノの良さが感じられます。 今回も未来に、現状に迷える人達…

青空の卵

坂木司先生のデビュー作。 自分は今作を読んで、坂木司先生の作品の虜となりました。 改めて読み返しても、人の負の感情と向き合っていく強さを与えられる作品ですね。坂木と鳥井の2人が一緒にいることもそうだし、登場する人達にも抱えているものがある。 …

令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法

架空の法律を作ることで、珍発想を生み出されていました。 創造の自由さを感じられる1冊になっているので、それだけでも読んで良かったなと思いました。 法律は人の生活の為にあると思うが、今作は風刺を逆手に取った、ユーモアある短編の数々でした。 各話…

後宮の烏 7

こう落とすのかという最終巻。上手く丸まって良かったです。 正直、細かな部分はもう頭に入らないから気にしないことにしました。 とにかく、寿雪が呪いから解放されたのが嬉しかった。 今までのしがらみに囚われた後宮生活とは違い、周りに仲間がいて、自分…

後宮の烏 6

寿雪の正体が周囲に広がっていき、精神を身体から切り離されてしまう。 何か策はないかと焦る、仲間達。 寿雪が窮地に陥っている中、焦る高峻。そして葛藤する衛青 助けるべく、衛青が信念よりも自分の気持ちを優先するようになった経緯は胸を揺さぶられるも…

後宮の烏 5

いやー、辛い。最初の数巻の希望が恋しくなってくる。ここ数巻、寿雪が苦しんでると思ったが、ここまで来るか。高峻が手を尽くそうとも寿雪は受難から避けられないということか。いくら、寿雪が隠れて生きようとしても、周りが逃そうとしないのは辛すぎる。 …

大人は泣かないと思っていた

以前からタイトルに惹かれていて、我慢出来ずに読みました。 大人、二十歳以上の人に響く言葉が多々ありました。悩みや苦しみは絶えないが、それでも折り合いをつけて、前を向かせてくれる作品でした。 男性、女性、時代の転換点にいる中で苦労は生まれるが…

風が強く吹いている

箱根駅伝でマラソン熱が高まって、さらに今作を読んだら走る意味を考えることになりさらに熱量が高まりました。速くではなく、強く。 走る辛さ、苦しみ、喜びを描いていて、ランナーに敬意が増しました。また、箱根駅伝を走る学生達、実業団、プロランナー、…

女子的生活

坂木司先生の作品は読むと元気が湧いてきて、良いです。 性の悩みをテーマにしていて、女性の処世術を描きつつも男の生きづらさも見ているので、終始フェアな物語だなと。ミキが男で女の社会を生き抜いていく力強い姿勢には勇気が貰えました。 ミキが生きづ…

此の世の果ての殺人

凄く良かった。 終末、廃退した空気、淡々と進む展開。非常に好みのシチュエーションで、楽しんで読めました。滅びるのが決まった世界で、死を待つのみの状況で起きる殺人。興味が湧かないわけがない。 事件を追っていった末の結末は苦さがありつつも明るい…

東大に名探偵はいない

東大出身作家を集めたアンソロジーというのは珍しいですね。 個人的に市川先生、辻堂先生作品が好きなので、読みました。 2作家はもちろんですが、どの短編も粒揃いで面白かったです。 読んだ後スッキリする話やイヤミス的な締めをする話もあったりと、揺さ…

後宮の烏 4

寿雪の優しさが仇になるのは嫌だな。徐々に寿雪の良さが広まっていくことで反乱分子だとみなされてしまうのは切ない。生まれのしがらみがより深くなってきた。 後宮では影が薄い存在だったが、徐々に存在感が増えてきて、扱いに困るように。 読者からすると…

ツルネ ―風舞高校弓道部― 3

湊達が2年生になり、新体制に。様々な学校に新入部員が入り、変化が起きている描写があり、また今時の学校も登場してきて、バラエティに富んでいました。 心機一転して、再スタートを切る風舞高校。 愁の後輩に厄介者が現れたり、七緒がスタメンが落ちたりと…

シャガクに訊け!

意外にもと言ったら失礼ですが、楽しく読めました。 社会学に興味があり、読んでみたが面白かったです。 大学生というのがまた良い。大人でも子供でもない年頃の揺れ動く心境と行動を学問と結びつけると納得がいきます。 主人公のえみるが弱さを持っていても…

ツルネ2 風舞高校弓道部

全国大会に挑む風舞高校。 しかし、気の緩みから自分の射を出来ずに地方大会で敗退してしまう。 流石にトントン拍子にはいかないか。 気を引き締めるためには良かったのではないか。 湊とマサさんの関係が揺らいだのは互いに未熟さがあって、行き違いが起き…

ツルネ 風舞高校弓道部

アニメ2期が始まったので復習のため読み返しました。 1度読んで、アニメを見ていても、最初の湊の早気の苦しみは辛い。 その分、マサさんや弓道部の仲間との交流が湊を癒していくのが心に沁みる。 ただ、初めから上手くいかない。 弓を引く仲間同士、仲良く……

ドールハウスの惨劇

素晴らしい! 高校生の男女の仲だったり、友情を描きながらもミステリとして強いフックを用意しているのは青春ミステリとして文句なし。 というか、最初から最後まで作品に浸れた感じがしました。 惨劇から程遠い日常から徐々に惨劇に近づいていく様子に胸が…

麦本三歩の好きなもの 第二集

住野よる先生の引き出しの多さが分かるシリーズ。 三歩の日常は読者にとって非日常的に感じるから良い。三歩の生き方はとても良いなと思うが、中々出来ない。だから、読むのが楽しい。 ふわふわした生活から、心抉られる箇所もあり、緩急が上手くついている…

#塚森裕太がログアウトしたら

読んでいて、胸が詰まる思いでした。 タイトルと作品のテーマに惹かれて読みましたが、性にまつわることから始まり、個人の問題に踏み込むのが魅力的でした。 主人公・塚森裕太が同姓愛者だと周囲にカミングアウトし、様々な人に影響を与えていく。 苦しむ人…

プロトコル・オブ・ヒューマニティ

壮絶な物語を浴びたようでした。 SF要素がありつつも本筋は息子と父の関係、ダンサーとしてのあり方が問われていたのかな。 主人公がダンサーとして致命的な怪我をして、AIに頼ることに。その過程で、人間の動きをAIに学ばせるために必要な人間性と再現性が…

2022年下半期おすすめの文芸作品

2022年下半期に読んだ文芸作品のおすすめを紹介していきます。 全体的に重めですが、読み終えた後は新たな気持ちと出会う感覚がある作品ばかりです。 ・おすすめ作品 汝、星のごとく 付き添うひと 傲慢と善良 ペンギンは空を見上げる 君といた日の続き 死に…

処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな

久しぶりに読み返しましたが、良かった。 喪失を抱えた少年が思春期の悩みを抱えた友人達とバンドを組み、生きるための活路を見出していく。それぞれ事情があって、でも味気ない学校生活を変えたい意思を持つことで、周りから何言われようとぶれない強さ、団…

よるのばけもの

再読したら、1度目とは違った感覚になって読み終えられました。 インパクトは薄いかもしれないが、周囲を気にして生きていた主人公にとっては革命を起こしたんだなと。 学生の頃の夜は大人とは違う悩みや迷いを呼ぶ。 主人公・あっちーが想像が膨らみすぎて…

15歳のテロリスト

胸に突き刺さる物語。 少年犯罪を取り上げた名作。なぜ15歳の少年・篤人がテロリストになったのか。そこに至るまでのプロセスが切なくて辛い。 未成年が加害者なら罪を犯しても守られる。 では、被害者の気持ちは誰が守るのか。 心揺さぶられる題材を上手く…

シャルロットの憂鬱

とても癒される小説でした。 動物の愛らしさはなぜ想像しやすいのか。 元警察犬で大型犬なのに、臆病でズルい一面を持っていながらも愛嬌溢れるシャルロットにメロメロです。犬にまつわる問題をミステリ風味に仕上げていて、読んでいて飽きずに最後まで読め…

ウズタマ

タイトルの意味が分からず、感動するという感想を知ってどういうことだと気になり、読みました。 家族の形はそれぞれで外からでは内面までは迫れないということですね。 自分の親のことを深く知ろうとしないものだと気付かされました。たしかに自分も親に聞…

犯罪

サクサク人の裏に触っていく短編集でした。 人の悪となる根幹に触れるようで、読み進めるのが止められない。犯人を切り捨てたり、拾ったり、読み味が独特で、短編集として旨みがあるなと。 話ごとにばらつきがあるのはデビュー作だから仕方ないのかなと。そ…