羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

キャラ・ライト文芸

魔女の原罪

やはり五十嵐律人先生の作品は素晴らしいなと。テーマがあり、それを生かす舞台を整えるのが非常に上手い。法律を遵守するあまり、法律でなければ何やっても良いという歪な街を舞台にしていて、惹き込まれる導入でした。 今回は犯罪加害者、被害者、そして傍…

機械仕掛けの選択 サクラダリセット3

ソウマがケイとハルキを導いたのが辛すぎる。未来が見えるからこそ、それをなぞるしかなかったのが耐えられなかったのかな。 ケイ、ハルキ、ソウマの3人の過去編。全てはここからといったところから、現在に繋げるのうますぎる。構成が素晴らしすぎる。 ケイ…

魔女と思い出と赤い目をした女の子 サクラダリセット2

ケイとハルキの関係について触れていたが、能力があるなしに関わらずに付き合っていけたら理想だよなと。どちらかといえばハルキが怯えているのをケイが拾っていくのが良い。ただ、ケイもハルキも本心でどう思っているのか話し合っていないのもあれだな。そ…

猫と幽霊と日曜日の革命 サクラダリセット1

好きなシリーズなので、1から読み返そうかなと。 前読んだのが約7年前という驚き。そんな前だったか… 物語の印象として優しい話ではあるんだが、ケイの自己犠牲が残酷。その決断をするのも悲しいし、春埼に見せるのもなぁと。ケイとハルキの関係の歪さはわり…

横浜ネイバーズ

岩井圭也先生の最新作。 横浜中華街を舞台にした地域に根ざした物語になっていました。だからこそ、横浜中華街で起こるそれぞれの問題に首を突っ込んでいく主人公・ロンが魅力的でした。 ふらふら生きているようで、他者の悩みに寄り添って、事件解決のため…

ゴリラ裁判の日

タイトルが衝撃的ですが、中身はゴリラが言語を理解しているから起きる悩みや辛さの数々のことを描いていて、本質的には人と同じということ。愛した夫が殺されたローラの苦しさは人に伝わらないのがもどかしい。人から見れば動物の命と子供の命は平等ではな…

勿忘草をさがして

鮎川哲也賞最優秀受賞作 去年は受賞作が無かったので、今年はあって良かったです。 花と人、おろそかになってしまいそうな事を見つめ直していき、人の関係を前に進めていく優しい物語でした。 人情味ある物語でありながらも、ミステリとして気になるようなシ…

我が家のヒミツ

穏やかな気持ちになれるシリーズ。秘密を持ちながら生きるのは普通に感じる。人には話せないような気持ちをユニークに描きながらも、しっかり落としどころがあるのは良いですね。迷ったり、悩んだり、後悔したり、そういう胸中を表すのが上手い。 人は人、様…

ロスト・ケア

映画観てから読んだので、違いがより感じられました。どちらも良かったです。 原作だと終始、淡々と進むのと情報量が多いので、より重みを感じられました。 家族介護の限界、福祉の穴、生き地獄ともとれる現実を見せつけられました。今作はだいぶ前の作品で…

嘘の世界で、忘れられない恋をした

青春作品は数多く出版されているが、一条先生の作品は設定の活かし方が巧みで最後の最後まで惹きつけられる。 難病設定を上手く扱っていて、非常に心に来ました。作者のスタンスなんですが、作品の味付けが上手い。バランス感覚が良くないと陳腐になりそうな…

高校事変 13

新章突入ということで結衣が大学生になってしまったため、結衣から凛香へ繋がれた高校事変。たしかにもう高校生でないなら主人公でいられない。 凛香から見た結衣がかなり大人に見えて、成長して卒業を感じました。 凛香は結衣と比べると危なっかしいしクー…

ダブル・ダブル〔新訳版〕

見たて殺人でも犯人を誘導していくエラリイの動きは見事でした。犯人に至るまでの思考や調査から、よく犯人を見つけられるなと。今回はなんだが、ふわっとした感じがありましたが、犯人の動機に関してはそう繋がるのかという驚きとそこまでするかという気持…

九尾の猫〔新訳版〕

落ち込むエラリイにダメ出しかけるような、そんな巻でありながらも再び前に向けるようになる重要なエピソードだった。 連続殺人犯と対する警察官達。そこに協力するエラリイ。探偵としてのあり方に迷いがあるエラリイにとってはまたしても…な展開でしたが、…

エール 夕暮れサウスポー

戦力外通告を受けたプロ野球選手が主人公が で妻子持ち。生活と現実に向き合っていく。社会人野球で働きながら、飯を食うのは並大抵ではなく、コロナも取り入れていて風刺的な作品になっていました。 経営難や野球部の存在意義、恩師との別れ、世間の荒波に…

掟上今日子の旅行記

ページ数は少ないが、シチュエーションに長けているので最後まで惹きつけられるエピソードだった。 掟上今日子のパリ旅行。ただではいかないのがわかっていたが、今日子さんが探偵ではなく、怪盗に!? 記憶を失うことや身体に書いた文字を信じることを利用…

鬼人幻燈抄 (五)-明治編 徒花

落ち着いた雰囲気になっていて、それだけ甚夜が年を重ねたということか。復讐の気持ちだけではなく、人としての営みを大切にしているのが分かる。娘との距離感には頬が緩みます。 激しい戦いは少なく、移ろう時代と取り残される武士の心情が切ない。今までは…

答えは市役所3階に 2020心の相談室

辻堂先生の持ち味である、人間の繋がりの良さがあり、かつミステリ要素が濃くて非常に満足度が高いです。 非常に読みやすくて、お悩み解決後の真相に驚かされました。区役所のカウンセラーに相談する人達の話さなかったことを推理して、組み立てるのが凄く良…

我が家の問題

家族小説として、読んでいて感情移入してしまうお話ばかりでした。 タイトルの通り、家庭に潜む問題をテーマにしていました。ユーモアのおかげで気楽に読めますが、考えてみるとピンチと隣り合わせなのに気づき、ヒヤリとなります。 夫婦の価値観の違い、両…

教室に雨は降らない

前から気になっていたが、ようやく読めました。 小学校を舞台にした日常の謎。制限がかかりそうな設定ですが、上手く謎を作っていて、真相が気になる短編集でした。 子供や親、教師、教室、学校というのは様々な悩みや問題が生まれる場所だなと。 悩む人に寄…

愛蔵版〈古典部〉シリーズI 氷菓・愚者のエンドロール

米澤穂信先生を知るきっかけとなった古典部シリーズ。それが単行本として、新規小説を加えて発売されるなんて嬉し過ぎます。 素晴らしい1冊になっていました。 氷菓、愚者のエンドロール、プールサイドにて、クリスマスは箱の中、受賞のことば、エッセイ、古…

書店ガール

以前から気になっていたシリーズ。 書店を舞台に、女性同士の戦いや男性からの偏見に抗っていく物語。序盤から中盤にかけては足の引っ張り合いには少しうんざりしたが、終盤のお店の危機で手を取り合って奮闘するのは読み応えがありました。 女性同士の嫉妬…

パラ・スター 〈Side 宝良〉

負けず嫌いの宝良の内面は意外にも脆さが見えて、今作を読むとより宝良を知れるので良かったです。障害が残り、車いすテニスしかない不安や母との距離感、上手くいかない歯痒さ、様々な困難がありましたが、ゆっくり乗り越えていく姿を追いかけていくと、力…

パラ・スター 〈Side 百花〉

めちゃくちゃ良かった… 真っ直ぐに夢に突き進む物語を読めと、幸せな気持ちになれます。 今作は障害を抱えながらパラ競技に挑む人とサポートする車いす作りに励む人、それぞれにスポットを当てていて、心にグッと来るものがありました。 身体が不自由になっ…

十日間の不思議〔新訳版〕

毎回のことだけど、ライツヴィルシリーズ作品、どれも読み終えてからの衝撃が重たい。 張り巡らされた伏線を回収して、犯人の真意まで追っていると、ドッと来ます。 馬鹿正直に読んでいたから、真相にたどり着いた時にもっと注意して、考えていればと思いま…

君と漕ぐ5

好きなシリーズだっただけに完結は寂しい。 刊行ペースがゆったりしていたので、記憶が曖昧だったのは残念。 まとまっていた感じはあるが、舞奈の成長がもう少し見たかったかな。様々な登場人物の進路や胸中を描いていて、青春小説としての区切りが見えたの…

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 VIII 太宰治にグッド・バイ

今回も事件に巻き込まれる李奈。もはやスムーズ過ぎて、驚かない。 太宰治がサブタイトルに入ってる段階で薄々感じていたが、暗い話に。偉大な作家の業を現実に落とし込んだら、こうなるかといった結末。様々な謎が繋がって、明かされる結末にやるせない気持…

完全なる白銀

最高の読後感でした。 かつて、夢を誓った女性・リタは山に夢を見て、山に消えた。消えたリタの真意を確かめるために山に登る緑里とリタの妹・シーラ。 消えたリタのことで、揉める2人。 今と過去が交差していき、葛藤や衝突をしながらも山に登っていきなが…

虚構推理短編集 岩永琴子の密室

短編集なので、サクサク読めました。 序盤は軽めの話で、中盤は考えてしまう話、終盤は心が重たくなるような話。 バリエーションの豊富が感じられる1冊。 琴子のあり方も自由で、だから様々な事件に対応出来るのだなと。 なんだかんだで話を聞く九郎。 しか…

家日和

どこかのアンソロジーで奥田先生を知り、気になって読んでみました。 軽い雰囲気で展開していくが、語り手となる人の気持ちがゆっくり変わっていく様子が描かれていて、安心して読めます。1話、怪しい話がありましたが。笑 肩の力が抜けて、心穏やかになれる…

容疑者Xの献身

映像版を観て、内容を知っていても衝撃を受ける最後。 気になっている人のために、徹底的に警察を欺いていく姿勢に胸が痛む。 自身を犠牲にしても貫き通す石神の姿を否定出来ない。 頭がズシンと重たくなる真相でした。読者と警察を欺いた石神の頭脳は見事で…