羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

ミステリー

サスペンス作家が人をうまく殺すには

あらすじから面白そうな気配がプンプンしてましたが、想像以上に楽しめました。 海外小説を読み慣れてなくとも、入りやすい作品かなと。 主人公・フィンレイが物騒な殺人事件に巻き込まれていくのが非常に軽快で、思わず笑ってしまいます。殺人なんてやるつ…

あなたへの挑戦状

競作とはどういう意味かも知らずに、阿津川先生と斜線堂先生が書いているというだけで条件反射で読みましたが、問題なかった。むしろ知らないからこそ、256Pまで読み、袋綴じの挑戦状を読むことで、見事に衝撃を喰らうことが出来ました。頬にビンタされた気…

秘境駅のクローズド・サークル

愉快、痛快、素晴らしいミステリの連続でした。 放課後探偵団1.ネクスト・ギグを読んでいるので、ミステリを描くのが上手いと知ってはいたが、全話面白い短編集で、恐れ要ります。各話趣味趣向を凝らして、読者を楽しませにくるのが伝わってくる1冊でした。 …

探偵は友人ではない

青春ミステリ作品でもかなり好きなシリーズの2作目。 表紙が単行本から変わっていたが、これはこれで良いですね。 内容としては、前作の探偵は教室にいないに比べて、よりなぜそんな不思議なことが起きるのか、起きた背景を掘り下げる解像度が増していたなと…

キュレーターの殺人

ワシントン・ポーシリーズの3作品目。 毎回のことだが、厚い。 しかし、それが気にならないくらい夢中になって読めました。 前1.2作品は面白いのだが、読むのに時間がかかっていました。 今巻は場面展開がスムーズだったり、ポーとティリーの関係が安定して…

invert II 覗き窓の死角

ドラマ化、コミカライズ化、おめでとう! 絶好調のシリーズなので早くも3冊目。 しばらくは相沢先生、このシリーズ中心かな。 さて、今回は短編1本と表題作の中編1本。前半の短編は紙魚の手帖で収録されていたので読んだことがありましたが、改めて読んでも…

方舟

帯のミステリ作家陣の書評を読んで期待値が上がってましたが、それを頷ける衝撃がありました。終盤まで、このまま推理するだけだと少し味気ないなと思っていたら、まさかの真相に度肝を抜かれました。 作中にトロッコ問題について語られていたのはそういうこ…

夏を取り戻す

1年振りに再読。 夏の季節にピッタリの作品だ。2度目なので俯瞰して読めました。伏線の貼り方が上手いなと改めて確認出来ました。 また、見逃していた部分を発見できて、何度読んでも考えさせられる小説だなと。 小学生達が失踪した理由、そして、調査する側…

エフィラは泳ぎ出せない

デフ・ヴォイスシリーズの丸山先生が推薦分を帯に書いてるとなれば読むしかないなと。 障害を抱えて生きている人にスポットを当てて小説にするのは難しいと思いますが、今作は障害を持って生きた青年・聡の人生で関わってきた周りの登場人物を掘っていくこと…

その意図は見えなくて

ビターな読後感が良い。1冊通して、作風がぶれないのは良いですね。 暗い雰囲気が漂う青春ミステリ。 どの短編も真実が明らかになった後に残る胸中の苦さが素晴らしい。謎そのものというより、なぜ起きたのかを問いかけてくるから、高校生のうちに秘めた気…

育休刑事

似鳥先生はミステリーの作りが上手いなと改めて思いました。しかも、社会問題を含みつつユーモア溢れる会話や作風に仕上げるのは流石です。 今作は男性の育児休業、しかも警察官で取れるのが奇跡のように描かれているが、当たり前になって欲しいという作者…

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 VI 見立て殺人は芥川

刊行ペースが凄い今作。 李奈の成長とミステリーが魅力だが、今回はここ数巻ずっと気にしていた李奈の作家としての成長が見れて嬉しいです。警察から頼りにされているが、本業は探偵ではなく、作家だからな。 事件に巻き込まれてばかりで、作家としての姿の…

録音された誘拐

阿津川先生ならば読みたいと思うくらい、今勢いのあるミステリ作家の阿津川先生の新作。 短編集の透明人間は密室に潜むに収録されていた、盗聴された殺人に登場した探偵と助手を主人公にした作品。 印象的だった短編が、こうして厚い長編に膨らむなんて幸せ…

雪と心臓

凄い小説と出会った。表紙とタイトルに惹かれて読んだが、最初から最後まで読むのが止められない。 先が読めない構成、展開、仕掛けが組まれていて、読み終えると込み上げてくるものが… 今作は自由奔放な姉と平凡な弟、双子の関係がキモになっていて、双子…

今だけのあの子

イヤミスの印象が強い作者だが、前向きに終わる作品もあるのかと、新しい発見でした。多少イヤミス要素はありましたが、全体的に見れば希望がある感じでした。 女性同士の関係を描く短編集。 どれも粒揃いで惹き込まれます。短編でありながら、物語としての…

最後の鑑定人

非常に魅力的な短編集でした。 科捜研という、事件を解くうえで必要な部門。 科捜研で優秀であった土門が様々な事件を科学の力を駆使して、真相にたどり着くのが魅力的でした。 科学の力は確かに犯人を追い詰めるには必要な力になるが、使い方を誤れば、後…

拝啓 交換殺人の候

タイトルに惹かれて読みました。 まさか、交換殺人を企てる2人の交流に心温まるという不思議な読後感を得られるとは。交換殺人を成長に使う方法があるなんて、思いもしませんでした。 追い詰められ青年と女性が手紙の交換から始まり、互いの殺して欲しい相…

珈琲店タレーランの事件簿 4 ブレイクは五種類のフレーバーで

今巻までのタレーランは人の負の感情を見る場面が多かったが今巻は謎が解けたら前に進めるような雰囲気の短編集で、好きな一冊です。 叙述トリックがあり、ミスリード要素はあるが、たどり着いてみたら、景色がガラッと変わる様子は見事でした。 読後感は爽…

ネクスト・ギグ

最高にロックでミステリー。 不可解な殺人がライブ中に起きることで、なぜ殺されたという謎とロックとは何か。という問いかけが繰り返される。 共に、興味を惹いて仕方なかった。 音楽に詳しくなくとも、作中の説明が優しくて、かつ頭に入りやすい精神的な…

臨床探偵と消えた脳病変

粒揃いの短編集でした。 各話の構成が素晴らしくて、物語に入って、出るときまで計算されているようでした。 表題作はミステリーズ新人賞で何度か読んでますが、それでも味わえる奥深さがありますね。 表題作以外も良かったです。 医療ミステリーですが、良…

幻告

五十嵐律人先生の勢いが止まらない。 デビューして以降コンスタントに作品を発表していくたびに作品を書く腕が上がっているのが分かる。 今作はお得意のリーガルドラマにタイムリープ要素を入れていて、今まで見たことないような作品に仕上がっていました。…

アンと青春

タイトルに青春とあるが、青春要素は少なめ。 むしろ、人の弱さや暗さが目立っていたかなと。 今回はアンが傷ついたり、悩むことが多かった。それでも前に進む姿に勇気が貰えます。仕事に慣れてきているからこそ、自分の仕事や立場を疑ってしまう。わりと社…

優等生は探偵に向かない

待望の続巻が来た。 前巻の自由研究には向かない殺人から続いているというのが、こう作用するのかと。 ピップが探偵として動くことについて悩み、苦しむ。それは前回犯人を見つけだしてやり遂げたから。良いことだけではないのを知っている。今巻も探偵とし…

珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を

久しぶりに新刊が出るということで1巻から読み返していこうかなと。 アオヤマと美星さんの出会いはこんな感じだったけと思い出しつつ、様々な謎解き、珈琲の描写を楽しめました。 アオヤマの最初の軽薄さには笑うしかない。 それから変わっていくんだが。 …

2022年上半期おすすめのミステリー作品8選

上半期の新作ミステリー作品ではダントツで"五つの季節に探偵は"を推したい。少女が探偵になり、成長していく様子と各話のミステリーとしての謎解きが抜群に良い。おすすめしないわけにはいかない。他にはシリーズモノだが、"名探偵に甘美なる死を"はVR技術…

和菓子のアン

であいもんという和菓子を題材にしている漫画にハマっていまして、ふと今作を読み返してみました。 そうしたら、面白いこと。 和菓子って、1作品に物語が詰まっているのが分かると探して食べたくなりますし、意味を知りたくなってきます。 高校卒業して、人…

揺籃の都: 平家物語推理抄

蝶として死す。から続巻が出るなんて嬉しいです。 やっぱり不憫な頼盛さん。清盛に振り回されている姿は歯痒い。それでも、自分のなすことをしていく姿は応援したくなります。 清盛の息子達にいびられながらも、数々の嘘を見抜くのは痛快でした。 ミステリ…

夏休みの空欄探し

似鳥鶏先生の最新作は青春モノ。 暗号を解くというミステリー要素があるが、それよりも男女4人が一夏の青春を謳歌している様子が印象的でした。 思春期特有の男のモヤモヤした感情を見事に掘り下げていて、クラスで目立つ清春と目立たない主人公・ライの友…

本格王2022

参加している作家陣に惹かれて読みました。 結果、素敵な短編の数々に出会えました。 個人的には、道尾先生、芦沢先生の短編が飛び抜けて好きでした。最初から最後まで気が抜けないうえに、結末までたどり着いたら頭から離れない余韻があったのが良かったで…

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 V 信頼できない語り手

今回は別シリーズの登場人物が参戦してくるが、知らなくても問題ないです。 推理小説としてかなりフェアな事件だったなと。ただ、真犯人に関してはたどり着ける余地があったかは分からない。李奈の行動には驚いた。 ある程度は予想出来るシチュエーションだ…