羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

ミステリー

青空の卵

坂木司先生のデビュー作。 自分は今作を読んで、坂木司先生の作品の虜となりました。 改めて読み返しても、人の負の感情と向き合っていく強さを与えられる作品ですね。坂木と鳥井の2人が一緒にいることもそうだし、登場する人達にも抱えているものがある。 …

フォックス家の殺人〔新訳版〕

災厄の町が非常に良かったので期待値が上がってましたが、今作も見事なミステリでした。 最後の最後まで気が抜けない物語でした。 今作は過去の状況証拠が揃っていて、裁かれた事件を掘り起こしていき、真実へ辿っていくというもの。状況を追っていき、事件…

此の世の果ての殺人

凄く良かった。 終末、廃退した空気、淡々と進む展開。非常に好みのシチュエーションで、楽しんで読めました。滅びるのが決まった世界で、死を待つのみの状況で起きる殺人。興味が湧かないわけがない。 事件を追っていった末の結末は苦さがありつつも明るい…

東大に名探偵はいない

東大出身作家を集めたアンソロジーというのは珍しいですね。 個人的に市川先生、辻堂先生作品が好きなので、読みました。 2作家はもちろんですが、どの短編も粒揃いで面白かったです。 読んだ後スッキリする話やイヤミス的な締めをする話もあったりと、揺さ…

シャガクに訊け!

意外にもと言ったら失礼ですが、楽しく読めました。 社会学に興味があり、読んでみたが面白かったです。 大学生というのがまた良い。大人でも子供でもない年頃の揺れ動く心境と行動を学問と結びつけると納得がいきます。 主人公のえみるが弱さを持っていても…

ドールハウスの惨劇

素晴らしい! 高校生の男女の仲だったり、友情を描きながらもミステリとして強いフックを用意しているのは青春ミステリとして文句なし。 というか、最初から最後まで作品に浸れた感じがしました。 惨劇から程遠い日常から徐々に惨劇に近づいていく様子に胸が…

2022年下半期おすすめのミステリー作品

2022年下半期に読んだおすすめのミステリー作品を紹介します。 紹介作はどれも読み返したくなる作品です。 ・おすすめのミステリー作品 幻告 優等生は探偵に向かない 録音された誘拐 雪と心臓 エフィラは泳ぎ出せない 方舟 秘境駅のクローズド・サークル inv…

シャルロットの憂鬱

とても癒される小説でした。 動物の愛らしさはなぜ想像しやすいのか。 元警察犬で大型犬なのに、臆病でズルい一面を持っていながらも愛嬌溢れるシャルロットにメロメロです。犬にまつわる問題をミステリ風味に仕上げていて、読んでいて飽きずに最後まで読め…

犯罪

サクサク人の裏に触っていく短編集でした。 人の悪となる根幹に触れるようで、読み進めるのが止められない。犯人を切り捨てたり、拾ったり、読み味が独特で、短編集として旨みがあるなと。 話ごとにばらつきがあるのはデビュー作だから仕方ないのかなと。そ…

災厄の町〔新訳版〕

初エラリイ・クイーン作品でしたが、大満足のミステリでした。 エラリイ・クイーンというのは登場人物の探偵の名前からなのか。 クイーンは食えない奴で飄々と過ごしつつ、要所で頭脳を発揮していて、周りを動かせる能力がある。 会話や言葉のチョイスも良い…

後宮の毒華

最近後宮の物語に惹かれていたので、実績ある作家の作品ということで楽しみにしていました。 割とある設定だが、じわじわと伝わってくる主人公・玉蘭の焦燥感と成長に読んでいて、釘付けにされました。 後宮で起こる毒にまつわる事件と遭遇し、成長していく…

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 VII レッド・ヘリング

李奈の作家としての成長を期待していたが、あまりに過激な手段を取ったなと。作家としての生活にダメージを与えるやり方で、本探しに繋がるやり口は驚きました。 ここまで追い詰めるとは思わなくて、若干引きました。 ただ、マンネリを防ぐためには良かった…

名探偵外来 泌尿器科医の事件簿

似鳥鶏先生の発想と機転には驚かされるばかり。 ユーモアとシビアな面を使い分けて現実を突きつけてくるのは健在で、今作も見事に作者の術中にハマり、心地よいです。 泌尿器科に名探偵という組み合わせは想像外過ぎて読むのが楽しみでした。着眼点は珍しい…

神様の思惑

とても心ほぐれる短編集です。 家族と上手く向き合えない人を掘り下げていて、胸の奥に眠っていたしこりをほぐしていくような短編集でした。 家族それぞれ事情があり、割り切れない時もある。しかし、時間が経てば見方が変わり、分かり合える時が来るのだと…

11文字の檻: 青崎有吾短編集成

素晴らしい短編集でした。青崎有吾先生の作品が好きな人ならば読んで損はしない。各所に収録されていた短編を1冊にまとまっているなんて、贅沢過ぎた。 最後の作者解説も面白い。 表題作の過酷な環境においても思考を止めず、考え続けるのは良い。最後の最後…

密室狂乱時代の殺人 絶海の孤島と七つのトリック

大変レパートリーに富んだ密室トリックゲームでした。 密室殺人が盛んな時代という特殊設定だからこそ、起きる事件の数々が興味深い。 今回は密室トリックゲームなるものを孤島で行われて、次々と密室殺人が発生する。 前半は頭が切れる密村が制限がかかる展…

探偵と家族

面白かったです。 軽妙な語りと独特の雰囲気の比喩表現が冴えていて、言葉を頭で飲み込むのが楽しかったです。 癖あり、訳ありの探偵家族が様々な珍事件に首を突っ込み解決していく。その様子を追っているのが楽しくて仕方ない。 夫婦は推理や行動が手慣れて…

刑罰

タイトル、表紙に惹かれて読みましたが、中々パンチの効いた短編集でした。必要な部分のみ描いて、不要な部分は削いでいるような文章で、切れ味鋭い短編ばかりでした。 また、ふわっとしたまま、そのまま終わる話もあったりと作者の発想の良さが伝わってくる…

そして、よみがえる世界。

あらすじから好きそうだったが、やはり読んで良かったです。 序盤から中盤にかけて物足りない感じがありました。説明が多くて、見えない部分があるのが理由かな。 しかし、中盤以降の謎の種明かしと緊迫した展開にはのめり込めました。 前半の謎だった部分が…

七日の夜を抜け出して

青春、オカルト、ミステリ、バトル、様々な要素が詰まっていました。盛りだくさんのようですが、青春が濃かったのは嬉しかったです。 それぞれ事情を持った4人が学校に閉じ込められて、学校から脱出するために怪談を解いていくことに。 次第に仲が深まり、背…

嘘つきなふたり

表紙、タイトル、あらすじ、帯から、ひしひしと感じるものがあり楽しみにしてましたが、その通り、いや想像以上に良かった。 雰囲気的に武田綾乃先生の黒小説!と思いきや、最後まで白い部分もあり、新境地を迎えた作品だったのかなと。 ミステリ要素があり…

ノッキンオン・ロックドドア2

素晴らしいシリーズですね! 1巻を読み返して、今巻を読んだら、1作目よりもグッとキャラクターに魅力が増して、過去も明かされて、より今作品の虜になりました。 前巻で明かされなかった探偵2人と刑事と容疑者の大学時代のエピソードが描かれていて、そん…

ノッキンオン・ロックドドア

続巻が文庫化するので再読しました。 初めて読んだときよりもミステリ作品として、より深く読み込めました。 バディモノで、動機、シチュエーション、得意推理が違う探偵2人が様々な事件を解いていく。互いに分かりあって、信頼している関係性が良い。軽口や…

栞と嘘の季節

待ってました!続編が出てくれて嬉しいです。 また、堀川と松倉に出会えて嬉しい限りです。前作の本と鍵の季節が絶妙にまとまっていたし、2人の関係もひと段落していたので、シリーズ化は難しいのかなと思っていたので、シリーズ化していきそうで良かった 前…

定価のない本

タイトルから気になって読みましたが、ミステリとしても、戦後の日本が見えたり、本に関わる人達の苦境があったりと様々な要素が詰まっているので、最初から最後まで気が抜けない。しかし、読み終わった後は非常に胸が熱くなりました。 タイトルの定価がない…

金環日蝕

傑作でした。 犯罪は様々起きているが、犯罪と犯罪者にどう向き合っていけば良いのか悩む2組のペアを描いている。調査する正義の方と落ちていきながらも犯罪に染まっていきそうな方、どちらの視点があるからこそ、至る結論に説得力が生まれていました。 人の…

六畳間ミステリーアパート

癖のある管理人と真面目に悩む田中さんがアパートに住む人、それぞれの悩みに向き合っていく。悩みが切実なものばかりで、読んでいて感情移入してしまう場面が多々ありました。 どの話も変化していく住民の様子が晴れやかで、読んでいて胸に訴えてくるものが…

君といた日の続き

辻堂先生の最新作。 心が洗われて、下を向いたままではいられなくなります。最愛の娘が亡くなり、妻とは離婚。絶望していた主人公がある日、過去から飛んできた小さな少女・ちぃ子と出会う。 過去から未来へきたちぃ子の秘密、目的はミステリで隠されていま…

Jミステリー2022 FALL

好きな作家ばかりが参加したアンソロジーなので、楽しみにしてました。個人的に好きだったのは、東野先生、新川先生、似鳥先生、太田先生の作品で。読み終えた後の満足度が高かったです。 東野先生の作品は、トリックはもちろんだが、なぜそれを行なったのか…

沈黙のパレード

映画観てから読んだので、結末を知っていたが、悪質な犯罪者に苦しめられた人達の必死な願いは簡単には切り捨てられるものではないなと。 映画と比べると場面転換が急でまとまりが悪いかなと思いましたが、様々な登場人物の掘り下げがされているので読めて良…